ファンタジーキターーー!!

 押忍!!男の中の漢。名は学。三十六歳だ。異世界に来て四日目に熱を出しダウン中。お前らも異世界に行ったら気をつけろよ。


 少し息苦しい。何かが体の上に乗ってる。……なんだろうか。


「……!!」


 首に駆けたペンダントをスマホにする。なるべく小声で。ここ重要。


 カシャ。カシャ。カシャ。


 カシャ。カシャ。


 おっと録画、録画。


「……」

「スースー」

「……」

「スースー。スミスしゃん。スースー。おしゃけの飲みしゅぎスースーです~~~スースー」


 よし。保存!保存!


 ん?何やってんのか?だって?今それどこじゃないんだ。後しろ。今、俺のお腹を枕にして寝ているサラをスマホの容量がなくなるまで撮らねばならない!!


「ガク……しゃん」

「グフ!!」


 ヤベ!鼻血が!!


「ごめん……な……しゃい」

「ん?」


 何を誤ってるんだ?十分に可愛いぞ?可愛すぎてごめんなさいだったら分かるが、慰謝料としてこの服を着て写真を撮らせてくれ!!


「私を……」


 サラの瞑ってる瞼から涙がこぼれ落ちて来た。撮影は終了か。


「私を……」

「サラ。サラ……起きて」


 サラの頭を撫で優しく起こす。サラサラだな。サラだけに?……すいません。ごめんなさい。反省してます。


「ううぅ~~ん。もう少しだけ~~」


 あ、録画し忘れた!!ここを逃すなんて!!


「サラ。もう一回言って?」

「ふにゅ~~。もう少し~~~」


 よし!!


「サラ。ニャーンって言ってみて?」

「……ニャ、ニャ~~~ン」


 ん?……ん?…………。


「サラ。ガクさんカッコイイって言ってみて?」

「が、ガクさんカッコイイです」


 おっと。意識が飛びそうだ。ヤバイ、ヤバイ。


「サラ。ガクさんの裸見て興奮しましたって言ってみて?」

「ガ、ガクさんのは、裸を……」

「ごめん。冗談!!」

「ハゥ~~」

「起きてたんだ?」

「……はい」


 俺のお腹の上で目を開けるサラ。かなり可愛い。お目覚めにサラの寝顔が見れるとは、異世界最高!!


 そして、やっぱりサラは起きてたか。ニャーンの時、ちょっとおかしかったからもしかしたらと思ったが、いい物が撮れた。宝がザクザクだ!!


「イヤ~気が付かなかったな~~」

「絶対に嘘です! 私に恥ずかしい事を言わせるために黙ってたんです!」

「イヤ~寝たフリをしたサラがどこまで言ってくれるか試したくて、思った以上に可愛くて意識が飛びそうだったよ~」

「ガクさんイジワルです!」

「ごめん!ごめん!」


 ポカポカ叩いて来たサラ。顔が真っ赤になっている。実にかっわいい。この祝福が永遠に続けばいいのにな~~。


 今の時間は、午後の二時。今ぐらいならお店に向かう時間だ。


「サラ。お店の方は大丈夫なの?」

「もう!!ガクさんイジワル!!エイ!、エイ!」

「サラ~~。戻ってきて~~」

「ハッ!私ったら!」

「戻ったか……。サラはお店に向かうのかな?じゃぁ、俺も向かうか」

「大丈夫ですよ!ゆっくり休んでください!」

「え?でも、働かないと」


 ヤベ~。二十年以上働かなかった者が言う言葉じゃないな。


「大丈夫です。今日はお休みですから。スミスさんが、ガクさんが目覚めて体調が良かったら少し息抜きに遊んで来いと言ってました。体調はどうですか?まだ優れませんか?」

「今、全快しました!!行きましょう!!」

「あ!!ガクさん!靴を履き忘れてますよ!」

「おっと。忘れてた」

「忘れる物ですかね?」


 スマホをサラに見えないようにペンダントに変えて装備。靴を履き下に降りたが誰もいない。いざ、息抜きに!!


 サラが先頭にいろいろ見て回る。職人の作る小物やアクセサリーなども売っている所や屋台などがあった。


 サラにプレゼントしたかったが値段がヤバイ。今の俺には屋台の食べ物ぐらいしか買えない。


 お金のはほぼ日本と同じような仕組みだった。覚えやすい。一円の下の単位や一万円の上の単位があった。円ではなくGだが。


「サラ。次はどこに行くの?」

「そうですね~。森林などはどうでしょうか。涼しくてリラックスできますよ」


 森林か、なかなかなチョイスだな。


 サラと二人でブラブラしながらお店を見て、屋台の食べ物を食べてた。イヤ~楽しいな~。日本では出来なかった事だな。なんかデートっぽいな~~~ハハ。


 …………デートじゃね?これってデートだよな?。デートで良いよね!!


 やったー!!デートだ!!初デートだ!サラとデート!!何だ。この甘い言葉は!!


「ガクさん?どうかしましたか?」

「ん?い、イヤ、何でもないよ!!」

「そうですか?」

「うん!それより森林ってどこのあるんだ?外にでるのか?」

「クスクス、何を言ってるんですかこの町の外に森林は無いですよ。あるのは町の中心です」

「中心?」

「そうですよ。行けば分かりますよ!行きましょう!!」

「あぁ!」


 サラが俺の手を取り歩く。デートだね。手が柔らかい。俺の手、汗とか大丈夫かな?心配になって来た。


 しばらくして、サラの手が離れた。手汗酷かったのかな?そうなのかな?


「ガクさん。ここです!!」

「ここ?どこ?」

「この目の前の建物です」

「これって?」


 石で出来た建物。大きいが、三階建ての建物よりは低いかな?横幅は普通の家二件分ぐらいあるな。ファンタジー世界の中世時代の建物よりランクが下がった感じだ。ちょっと古い。


「そうです。タワーですよ?」

「……タワーって何?」

「他の国では塔と呼ぶそうですが、聞いた事ありませんか?」

「聞いた事は……あるが」


 タワー。塔。ついに来たか。異世界新要素が!!ファンタジー、キターーー!!って気がしてきた。


「詳しく知らないのですか?」

「そ、そうなんだ!!教えてくれ、サラ」

「分かりました。タワーはその中にそれぞれ別々の環境があります」

「環境?」

「はい。熱い気候や寒い気候があり、その中でいろいろな動物や自然が存在します」

「このタワーは森林なの?」

「そうです。気候は穏やかで森林の環境が構成されています」

「他の環境ってどんなの?」

「え~と。山の環境ですと鉱石などが豊富に採れ、海は塩や海産物。池や湖は水や魚ですかね」

「魔物は出てくるの?」

「出てきません」

「え?マジで!」

「魔物は外にいるモンスターを指します。ダンジョンにいる魔物はモンスターと言います。これは常識だと思ったのですが?」

「ごめん。いろいろ知らなくて」

「そんな事はないですよ!」

「ありがとう。ついでにダンジョンとタワーって違うの?」

「全然違いますね」

「ダンジョンとタワーの他に何かある?」

「そうですね。他には迷宮がありますが」

「そんなにあるのか」

「中でお話ししますね」

「よろしくお願いします」

「クスクス。分かりました」


 俺はタワーに足を踏みいてた。


 タワーに入るにはこれと言った手続きはなかった。少しのお金と注意を聞かされた。


 余り奥に行くと戻れなくなるとか森林に危害を加えない。火気厳禁などなど。


「スゲーーーー」

「ガクさん。口が開いていますよ。クスクス」


 山の中だ。うん。山の中だ。大事だから2回言ったぞ?


 建物の中に入って鉄製のドアをくぐったらそこは山の中。マイナスイオンたっぷりな感じだ。よく分からんがな。


 入った建物と同じ建物から出て来たらしい。下には土の地面。上には太陽。建物の中に太陽、これいかに。


「どうですか?」

「すごい。建物の中に森がある」

「クスクス。面白い表現をしますね。実際にはここにある建物と外の建物は別物ですよ。」

「どいうこと?」

「ここは中ではなく間違いなく外ですよ」

「え?」

「ここは外とは違う別の空間だそうです。建物がその出入りを可能にしているとか」

「建物が扉、トンネルと言った感じか」

「そうです。私も詳しくは知りませんが」

「十分だよ。ここの入口は一か所?」

「そうです」

「広さは?」

「詳しくは分からないそうです」

「なんと……」


 広さが分からない。だから遠くに行きすぎるなってことか。迷子になるし戻れない。何気に怖い。


 それにしても、これがタワー。さすがファンタジー。何でもありだ。


 ここは資源の宝庫。この街には無くてはならない物らしい。だろうな。広さが分からないくらいの森林だ。無くなったら死活問題だろう。


 ここの街が出来たのはこのタワーがあったから。タワーから木を切り持ち帰り加工。生産し売る。そしてこの街は発展してきた。


 木が豊富なため木を扱う技術に長ける。だろうな。こんなに沢山あるんだ。練習もしやすいだろう。


 サラから他にダンジョンと迷宮の話を聞いた。


 ダンジョンは俺が想像してた通りの感じだな。魔物・・・じゃないな。モンスターが出てそれを倒し素材を売る。


 このダンジョンは深さの上限はあるらしい。そこに到達したらダンジョン覇者となり国から富と名声が約束されている。ダンジョンに潜る人の大半は目指しているらしいがある段階から諦める者が多いのも現実。厳しい世界だな。


 次に迷宮。迷路かな?と思ったがちょっと違うらしい。迷宮は知恵を駆使したダンジョンだそうだ。トラップに迷路。謎解き知恵や閃きと言った物を駆使しゴールを目指す。


 迷宮にはモンスターは基本出ないらしい。ただ迷宮の生き物が生息しているそうだ。迷宮生物と言われているらしい。


 迷宮は宝が眠っているとされ、それは一国を一瞬で消し飛ばす武器だったり、水を出すジョウロだったりと様々。


 ゴールには門番が待機し、門番を見事打ち破ることが出来たら迷宮の宝が全てもらえる。大盤振る舞いだな。


 うーむ。財宝が欲しけりゃ迷宮。強さを求めるならダンジョン。生産職のタワーか。三者三様で面白いな。


 やっとファンタジーな感じがしてきたな。


 異世界に来て最初の町で下手したら奴隷ルートだからな。それも中々、ファンタジー?


「ごめんね。サラ、ずっと話させちゃって」

「大丈夫です!お気になさらずに」

「サラは俺に聞きたい事とかある?」

「そうですね~」

「答えられる物があったら答えるよ?」

「お年を聞いてもよろしいですか?」

「年?」

「はい!!」


 なぜに年なんだ?言ってなかったっけ?言ってないか。三六歳です。って言ってみたいな。


「俺は十五歳だよ」


 これは体の年齢だけどね。


「十五歳!!」

「そんなに驚くことかな?」

「もっと年上かと思ってました」

「サラより年は下だね」


 精神は俺が上だ。……多分な。


 その後、サラと話し家に戻った。スミスさんが「なんだ帰ったのか。朝に帰るんだと思ったぞ?」って言ってサラが赤面。俺は落ち込んだ。


 くそ!!俺の根性無しが!!


 それにしてもダンジョンと迷宮か。そのうち行ってみるか。

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