家族……か。

 押忍!!男の中の漢。名は学。年は三十六。俺はモースの街にいる。身分証の再発行に三週間の労働。てか監視中。てかサラ可愛い。そんなこんなで異世界四日目。


「オエェェェェェェ」


 開口一番に汚い物を見せてしまい申し訳ない。なぜ吐いていのかは只今絶賛蔵に挑み中。逃げたい。


「全く。朝飯前で正解だったな」

「ボス。なんで俺まで来なきゃいけないんですか」

「こいつが気絶したら誰が運ぶ」

「そんな事だと思いましたよ。ハァ~~」

「……オロロロロロロ~~~」

「あいつは何を吐いてるんだ?」

「分かりませんが何か赤くないですか?」

「フム。あいつは目から血の涙を流せるほど器用な男だからな」

「血のゲボとか器用の一括りにしちゃっていいんですかい?死にますよ?。あの量は」

「……グハ!!」

「こっち向いたな」

「手を伸ばしてますね」

「何か必死に訴えてるな」

「吐きながら顔を左右に振ってますね」

「……バタ」

「死んだか」

「サラクに殺されそうだ」

「………いい……がげ……ん……に…………だ…………ずげ……で」

「遊び過ぎたか。マス」

「汚いガキだな。風呂にぶち込めばいいんですよね?」

「あぁ、サラクが入ってたら俺を呼べ」

「ボス……」

「前回は中々楽しかった。あんなに笑ったのは、久しぶりだ」

「ガキ!!ちょっと話がある。後でツラ貸せ」


 今の俺に肯定も否定できない。二人とも何でこんなに何ともないの?体の構造が違うのかな?なら仕方ないな。


 俺は風呂場に放りこまれた。服は脱ぎ脱衣所へ。俺は風呂場で頭や体を洗って湯につかる。今日はサラはいないのか。ちょっと期待したが。ちょっとだよ?ほんのちょっと。ミクロンと言っていいほどの薄さだよ?


「邪魔するぞ」

「へ?マス?」

「俺も入りたくてな。臭いが取れねーんだ」

「あぁ」


 お湯を頭に豪快被る。沈黙が流れる。


 体を洗ったマスは湯船に。この風呂がデカくてよかった。


「お前、サラの裸見たのか?」

「ブッ!!」

「見たんだな!!テメー!!沈め!!」

「ち、違う!!ブクブクブク」

「あぁ!!」

「ブヘ~~。ハァーハァー誤解だ!!」

「何が誤解なんだ?」

「俺はサラの裸を見れなかった!!」

「堂々と言うな!!」

「サラには俺の裸を見てもらえた!!」

「この変態が!!もうイッペン沈め!!」

「ガボボボボボ~~~~」


 正直に言ったのに何で沈まされなきゃならないんだ。正直は良い事なのに。クソ~~何が悪いんだ。……俺と言う存在?何をバカな事を。……冗談だよな?



「ガハ!!ゲホッゲホッ鼻にお湯が入った。ゲホッゲホ」

「オイ。ガキィ「ゲホッゲホ」お前に言って「ゴホッゴホ」おきたいこ「ガハッガハ」とが「ブエクション!!」うっせーぞ!!テメーさっきから俺の話に割り込み入れやがって!!」

「ご、ごめん。むせた。……もう大丈夫」

「そぅ「ブエクション!!」…………沈められたいのか?テメ~」

「……ブクブクブク」

「おい!!ガキィ!!おい!!」


 水面が見える。マスが俺を呼んでいる。気が遠くなる……


 ……知ってる天井だ。


 いつの間に寝たんだ?俺は。ここは俺の部屋だな。……下しか履いてない。ん?


「お目覚めですか?キャ!!」

「ん?サラ?」

「何で服を着てないんですか!」

「……俺が知りたい。それに下は履いてるぞ」

「上も何か着てください!」

「服がな……あった」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ」

「そうで……何でまだ服を着てないんですか!!」

「今、着ようと思ってたんだ」

「大丈夫って言ったじゃないですか!!」

「ゴ、ゴメン。体調だと思った」

「私の反応を見て楽しんでませんか?」

「あ、忘れてた。サラもう一回こっち見てもらって良い?」

「……服、着てませんよね?」

「大丈夫だ!!見てくれ!!」

「何も大丈夫じゃないです!!」

「残念だ!!」


 くそ!!俺としたことが、サラの恥ずかしがる顔を見逃した。クソ。頭がボーっとする。なんだこれ?


 俺は服を着ずにまた横になった。布団をかけよう。少し寒い。おかしいな。ここら辺は寒くないはずなんだが。


「ガクさん?」

「……体が怠い」

「大丈夫ですか?」


 俺の顔にサラの手が触れる。冷たい。心地が良い。


「やはり熱いですね」

「興奮してないよ?」

「そう言う意味じゃありません!!」

「ごめん。ありがとうサラ。……なんか、ちょっと心細いんだ」

「ガクさん」

「サラ」

「……バカ押すな!!」


 ドアから人が飛び出してきた。マスとマーナが飛び出し、その後ろでスミスさんが悔しそうな顔をしている。もう一人は知らない女性。スミスさんより年上な感じだな。会ってなかったもう一人の人か。


 また、覗いてたのか。


「どっから覗いてたんですか?」

「ん?最初からに決まっているだろ。サラクをお前の部屋に送ったのも、お前に下しか履かせんかったのも俺がやった。脱ぎやすいだろう?」

「やっぱり!!あなたの悪戯か!!」

「何だ。バレてたのか」

「目的は分からなかったですが、誰の仕業くらいは分かりますよ!!」

「フム。もっとうまくやるか」

「……フフフフフ」

「サ、サラ?」

「マスさん?」

「ハ、ハイ!!」

「マーナ姉さん?」

「はい!!」

「スナーチャさん?」

「ん?」

「お食事のグレードを一週間の間二段階下げます」

「「「な!!」」」

「ドンマイだ。お前ら」

「スミスさんもですよ?」

「何!!そんなバカな!!」

「スミスさんはお酒のグレードを一週間の間二段階下げます」

「バ、バカな……。すまない!!それだけは勘弁してくれ!!」

「しません!!」


 なにが起こった!!あのスミスさんが声を上げてサラに懇願している。一体これは……サラは真に怒るとこんなにも恐ろしいとは。


 皆が、床を見て落ち込んでいる。あ、見ている方の俺としては少しオモシロかったりしている。なんか家族って感じがして温かみがあるな。


「アハハハハハ」

「ガクさん?どうかしましたか?」

「フフ。皆、仲良しだな~と思っただけだよ」

「??どうしたんですか?急に」

「うらやましいと思ったんだ。俺にはこういった事が出来なかったから」

「オシ。じゃーガキ。お前も道連れな」

「なじぇに!!」

「なじぇ、じゃねーよ。出来なかったんだろう?うらやましいんだろ?だったら道ズレだ!バカやろが!!」

「ウム。そうしよう」

「スミスさんまで!?」

「ガクさんがそこまでおっしゃるのなら」

「サラ!!君はこの会話を聞いてどうしてそう思ったんだい?聞かせてくれないかな?一緒のベットに入って聞かせてくれ!!」

「ガキィ!!テメー今度は井戸に沈めんぞ!!」

「マスさん?」

「お、おぅ?サ、サラク落ち着け、冗談だ。冗談。本当に沈めやしない。……少ししか」

「おい!!俺には最後に小さく言った事はちゃんと聞こえたぞ!!」

「……マーナ。お茶入れて?」

「分かった。行こうスナーチャさん」

「俺も行こう。次はどういった事をしよか」

「ボス!!チィ。ガキィ、サラクに手を出したらお前を埋めるからな」

「もうマスさん!!早く部屋から出て行って下さい!!ガクさんが疲れてしまいます」

「分かったな。イヤならちゃんと寝てろバカ!!」


 この男はまっすぐに言葉を伝えられないのか。マスがどんな奴か分かったような気がする。そしてトバッチリと言うか道連れで俺のご飯のランクが下がる。フザケンナ。


 なんだかんだで皆優しい人たちだな。


「やっと行きました」

「賑やかだったね」

「少しうるさい気がしますが」

「あれぐらいがちょうどいいんだよ」

「そうでしょうか?」

「多分そうだよ」


 あごに人差し指を付け右上を見上げなら考え事をするサラ。マジ癒される。マイエンジェル。


 ん?お前には親愛の女神がいるだろう。だって?あの残念なロリな神な子供は今頃お昼寝でもしているだろう。そんなのがマイエンジェルな訳けないだろう。少なくとも自分のエンジェルは自分で指名したい。すいませ~~ん!!サラさん延長でお願いします!!


「あれ?ガクさんってペンダントなんてしてましたっけ?」

「ん?あぁこれ?」


 サラが言ったペンダントとは俺が昨日?今日?かな。三時頃にいろいろ試した結果、やっとペンダントにすることが出来た。


 うん。嘘です。一発で成功しました。朝起きて他の言葉で出来るか試した。起動で出来たから、ONやOFF。変換やチェンジと言った言葉を使ったがどれもできた。


 いろいろ確認したが、変えるとか変わる意味合いが若干でも含まれていればスマホの形は変わるってのが分かった。


 あんな訳の分からない文章を解読して自分なりの答えに行きついたが、余りにもお粗末と言うか適当と言うか、なんか納得いかなくて昨日は寝たんだった。


「これは、大切な物かな?」

「誰かからもらったんですか?」

「え?違うよ」

「そうなんですか!?」

「うん。どちらかと言うと無くしたら困る物かな?」

「よかった」

「よかった?」

「あ!!いえ。その……女性の方にもらった物かと思いまして。」

「俺に物をくれる人なんていなかったよ」

「そうなんですか?」

「あぁ。モテなかったし。社交性も皆無。それに俺は自分で人を拒絶していたし」

「とても、そうは見えませんが……」

「確かに今の俺と前の俺は別人かもね」

「よくわかりません」

「俺に前を向けって言ってくれた人が居るんだよ。その人はなんか残念な感じだった」

「残念?」

「なんて言ったらいいのかな?真面目に頑張るんだけどそれを絶対に見せない。つもりでいるらしい。全然バレバレなのに器用な振りして、バカな振りもしてそれがバレてないと思ってる。本当に残念な奴」

「その人がガクさんを変えたんですか?」

「どうなんだろうな実際。だけど重荷は取れたと思う。もう会うことは出来ないが、家族が望んだように生きようと思ってる」

「ガクさんはその方が好きなんですか?」

「全く」

「そ、そうですか」

「だけど」

「?」

「悔しいが、恩人だとは思ってるのは確かだな。実に不本意だ」

「クスクス。ガクさんらしいですね」


 俺らしいとは何なんだろうか。なんか喋ったら眠くなってしまった。


「……眠くなって来た」

「ゆっくり休んでください。おやすみなさい」

「……おやす……み。…………サラ」


 俺はサラが見ててくれる安心感に心地よさを感じ意識を手放した。

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