笑顔が重要!!

 押忍!!名は学。年齢三十六。彼女はいた事もない。そして今の心境を言葉にするなら働きたくないでござる!!


「まず、お昼の準備をしましょう。皆さん、たくさん食べますから大変です!!」

「皆さん?って誰?」

「そういえば、ガクさんはまだ皆さんに会ってないですよね?」

「あ、あぁ」


 仮面を取った顔をかしげるサラク……マジ天使!!おっと。涎が……


「皆さんの事はお昼に紹介しますね。スミスさんの元で働く従業員です」

「……奴隷商の?」

「裏の人もいますが私を含む数人は表の従業員ですよ?」


 サラク。何もしなくてもマジ女神。え?親愛の女神?……ぁ。


 忘れてないよ?うん!!残念ロリ神が本当の神様とか親愛の女神だったとか忘れてないから。時間停止と巻き戻しをしてくれなかったのも全然、コレッぽっちも根に持ってないし。むしろそっちを忘れてたくらいだし。うん!!


「裏は奴隷商。表の仕事?」

「はい」

「って?」

「クスクス。何だと思いますか?」

「ん?ん~~~」

「簡単だと思いますよ?スミスさんの仕事を当てるよりも」

「アレは完全に外す気で言ったからな。完全にシスターと思ってたし。まさか当たるとは全く思っていなかったよアレは」

「そうなんですか?ですが当てるのはすごいです」

「イヤイヤ、完全な偶然だから」

「そ、そうですか」


 な、なんか落ち込んだぞ!俺なにかしたのか?何した?胸を見たのがいけなかったのか?そうなのか?


「あ!!わかった。こんなおいしい料理を作れるってことは飲食店かな?こんなおいしい料理が食べられるなら俺は毎日でも通うな!!」

「本当ですか?!」


 パァーと花が咲いたような笑顔をするサラク。ヤバイ。興奮で心臓の音がスゴイ。


 これはちょっとヤバイ。心臓がギリギリ耐えてるようだ。地球で死んだ時より心臓が痛い。コレこの身体じゃなかったら多分サラクの満面の笑みに耐えられない。良かった。体を若くして。サラクの笑顔に死ぬ所だった。……本望だ。


「それにガクさんさすがです!!当たりですよ!」

「ハァーハァー。心臓が……痛い。が、目を離せない」

「大丈夫ですか?ガクさん。すごい汗ですよ?」

「ちょっと心臓が耐えられなくてね」

「少し、横になりますか?」


 あぁ。心配するサラクの顔がマジで俺に追い打ちをかけてくる。心臓ってここまでドキドキしても耐えられるんだね。脂汗酷いけど。めっちゃ危険信号が頭の中でうるさいけど。サラクの前ではそんなことはどうでもいいや~。


 あ。マジヤバイ。意識が。


「……少し、横になろうかな?」

「こちらです」


 以前、スミスさんに毒を盛られた部屋の隣に移動。サラクに手を引いてもらった。意識を失わないように心を保つのに一生懸命でサラクの手の感触に全く意識が行かなかった。


「ここで横になって下さい」

「あぁ。……ありがとう」


 ハァ~~。俺にもう少し女性耐性があれば耐えられたのに。あったとしても俺はこうなってたな。遅いか早いかの違いしかないだろうな。


 サラク。マジ可愛い。どうしよう。かなり年下だよな?16歳。


 日本では結婚出来る年齢。


 ここは異世界で成人は15歳のはず。


「……問題あるか?」

「ガクさん!! 起きてらして!!」


 目を開けると目の前にサラク顔があった。


 近い!!近い!!近い!!近い!!近いがゲシュタルト崩壊をするほど近い!!


 彼女の口が、鼻が、そして赤い目が至近距離にある。俺は彼女の目から視線を外すことが出来ず硬直。


「……ガクさん」


 そう言い彼女の顔はどんどん俺の顔に近づく。


 彼女の息が俺の顔に薄くかかる。いい匂いがする。これがサラクの香りか。甘い匂いがするな。


「ここにいたのか。サラク」


 ガチャっと扉が開きスミスさんが登場。


「ん?あぁ。サラクがガクを襲うところだったか。すまない。続けてくれ」

「……ウヮ~~~ン」


 サラクが手で顔を覆い猛ダッシュで部屋から出て行った。


「……スミスさん」

「そんな目で見るなガク。後処理はこっちでやっておく」

「後、1秒あれば……」

「初めて見るな赤い涙を流すとは。それは血か?」

「血の涙です。俺も出るとは思いませんでした」

「器用なもんだ。……まぁ、まさかサラクがここまで積極的に行動するとは、この俺でも思いもよらんかった」

「どういう??」

「ん?出かける前、サラクに俺が戻る間は家には誰もいない。襲うならチャンスだ。キスして胸でも押し付ければ男は獣になる。っと言ったがまさか本当に行動に移すとは。入る前に覗くべきだった」

「薄々気が付いてましたけど、スミスさんって俺とかで遊んで楽しんでないですか?」

「ん?からかってるだけだが?」

「余計にたちが悪い!!」

「で?お前はなんで横になってる?」

「……言いたくありません。」

「断る。言え。じゃなきゃ奴隷にするぞ」

「職権乱用って知ってます?」

「知ってるか?バレなきゃ罪ってのは無いに等しい」


 ヤベ~よ!!この人。目が完全にイってんぞ。怖い。マジで怖い。殺気って本当にあるんだな。


「……サラクの……」

「もう呼び捨てか」

「サラクさんの笑顔に興奮して心臓が異常な動きをして汗は止まらなく、息が乱れ、ついには意識が朦朧としてきて、サラクさんがここを使えと手を引いて連れて来てもらいました!!」

「クックックック。……それで?サラクを押し倒すために嘘まで付いてここに来たのか?」

「冗談のように思うかもしれませんが本当の事です。もし、あのままサラクさんを襲っていたら本気で、途中に死んでいました」

「クックック…………」

「スミスさん?」

「アッハッハッハッハ!! サラクの笑顔で意識まで飛ばすくらい興奮するとは、アッハッハッハッハ聞いた事無いよ! プックックそれに途中で死ぬとかどんだけ器用な真似すんだいこの小僧は!! アッハッハッハッハ。腹が痛いよ。ハァーハァーここまで笑うとか何時ぶりだろうね」

「笑い過ぎですよ。ハァー絶対に笑われると思ったから言いたくなかったのに」


 楽になった体を起こし、座りなおす。落ち込むぜ。だが、後悔はない!!


「そう、落ち込むな。サラクはお前に気がある。お前もサラクに気があるんだろう?」

「当り前じゃないですか! あんなかわいい子を好きにならない男がいるならそれは病気だ!!」

「実際にいないんだよ。あの子を好きになる男なんて」

「……は?」

「お前はあの瞳の事を知っているかい?」

「なにかあるんですか?」

「あの瞳は醜い目の意味を込めて醜眼と呼ばれている」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ。あいつは基本仮面でそれを隠している」

「そんな……」

「醜眼を持って生まれる子はたまにいる。生まれる場所も環境も両親の血筋も関係なくバラバラ。一昔前は気味が悪い程度だったが、どっかのお国がアレは呪われた目だと大々的に声を上げた事で一気に悪者扱いになった。そして捨てられたり奴隷になる醜眼の子供が増加した。あれもその一人だ」

「え?サラクは奴隷?」

「違う。なりそうだったとこを私が雇った」

「なんで?」

「興味があったんだ。醜眼に。ただそれだけだ。別にあの子がかわいそうだったかとか思っちゃいない。たまたま醜眼の少女が奴隷になりそうってのを聞いてな」

「興味って?」

「ん?醜眼の目に見られると呪われるってのがあってな。本当かどうか試した」

「そんなのがあるんですか?」

「全くないな。今のところこれと言った事が全くない」

「……そうですか」

「お前はあの目を綺麗と言ったな?」

「はい。食事の時ですよね?」

「それもある」

「それも?」


 俺、あんな醜態をまたやってたのか。いつだ?目を見る度に綺麗だと思っているがどっかで口に出してしまったか。


「お前が一日寝続けた時だ」

「……まったく覚えていない」

「寝ぼけてたんだろうな。様子を見に行ったサラクがお前の顔を覗き込んだ時、ちょうど目を開けたそうだ。お前はサラクの目を見て『綺麗な色だ』って言ってまた寝たらしい」

「俺、そんな事言ってたのか。寝ぼけても俺は俺だな。サラクさんはどんな顔をしてたんですか?」

「ん?興奮してお前の事を聞きに来てな。自分の顔に何か付いてないかとか名前は?、好きな食べ物は?とかいろいろ聞いてきてな。どうしたのか聞いたら目を褒められたと言って女の顔をしたんだよ。あんな顔初めて見た」

「目を褒められたから?それだけ?」

「あの子は目が原因で両親に捨てられ、目が原因で奴隷になる寸前までいった。今も目が原因で外に出るのには仮面が必要。あの子は自分の目が嫌いなんだろう。朱色の目が。だがどうにもならない。無害だと分かっているのは、ごく一部の者たち、よく知らん奴らはあの子を醜眼と蔑む。だが、分かってくれる人が居ればそれで十分だと言っていた。最近はあの子の笑顔も作った笑みだった。あんなコロコロと表情を変えるサラクは久しぶりに、イヤ、初めて見た。あの子も自分の感情に頭が追い付いていないんだろう」

「マジか………………」

「もし、あの子の目が本当に呪いで見た者も呪われる物だったらお前はどうしただろうな」


 バカなの? 異世界の人って皆、バカなの? あんな綺麗な目が呪われている? 確かに俺はサラクの笑顔で死にかけたが、あの目で人を不幸にすることが出来るのだろうか。無理だな。あの目は幸福を運んでも不幸を運ぶものじゃない。


 そもそもが勘違いなのだろう?呪いも無ければ見られても不幸になるハズもない。勘違いでサラクが苦しむだと?あの目が原因で?違う。ある国が余計な事を口走ったせいだ。サラクの目の所為じゃない。


「そもそも目に呪いがあったとしてもその程度、重要じゃない。重要なのはサラクの笑顔だ!!」


 そうだ。重要なのはサラクの笑顔。あの笑顔は俺に翼を授けてくれる。


 ……地球で実際に授かっちゃったんだっよな俺は、洒落にならん。


「フム。俺の目標にある国を破壊して瞳の常識を変えるを追加するか」

「随分物騒だな。本気か?」

「……また声に出てたか」

「出てたな。醜眼を持つ物は女が多く。男は極端に少ない」

「だから?」

「醜眼を持つ女は決まって目の以外に特徴がある」

「その特徴とは?」

「美人が多い」

「目標追加!!国を作る!!」

「他の目標はなんだ?」

「ハーレムを作る事!!」

「お前はバカだったんだな」


 バカとはなんだ!!バカとは。合ってるけど。


 しかし、俺はハーレムを隠すことはしない。なぜかって?フッそんなの決まっている。


「俺はハーレムの為に生きているのだから!!」


 俺の目標に国を作ることが加わった。

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