不覚

 押忍!!三十六歳。漢。名は学。現在の目標はハーレムを作る事だ。


 スタート地点から適当に出発したが、しばらくは景色を見て楽しんでいたが早々に飽きた。ずっと草原だと見飽きるぜ。写メもばっちり撮ったぜ。記念だからな。


 あ、そうだ。地図のスキルがどういった物か分かった。これはアレだ。ダンジョンとかで使う自動マッピングみたいなやつだ。自分が歩いた道のりが大体分かる気がする。まぁスタートの位置がおおよそ分かるから直進する分には全く問題ない。地図のスキルを常時発動して唯々真っ直ぐ進む。何気に便利。


 人の方向感覚は個人差があるらしいが二十年以上一日を部屋で過ごす人種をやっていて優れているってことはないだろう。地図スキルグッジョブ!!


 そんなこんなで冒険を初めて早三時間。現在の時刻十時半過ぎだ。スマホの時間を見たがスタートが七時半ぐらいだったからな。こんなに長く歩くのも久しぶりだな~。動けるもんだな。今の身体が十五歳だからだろうか。それともステータス補正なのか。


 ヒマだな~。確か残念ロリ神のメモがあったな。それを見ながら行くか。歩きスマホは危ないが、まぁ、大丈夫だろう。


 えっと。


<プリティー女神のアドバイス入り初心者用メモ>


 読むのを止めたい。本当に残念なロリ神だ。笑顔でニコニコしていれば癒されそうだが、なんでここまで残念なのだろう。見た目のイメージと行動した結果にギャップがありすぎるのだろうか。実に残念だ。


 不本意ながら読み進めるか。


 フム。最初の方は残念ロリ神が言ってた事がほとんどだな。俺の知らないアプリの説明もあったが、これが参加賞のアプリか。


【ガチャガチャアプリ】

・一日一回の運試し!!

【地図アプリ】

・最初にこれを確認!!

【ランキングアプリ】

・自分の順位が分かる!!


 少ししか説明文はないが最初にあれば便利なアプリだな。多分。


 正直、羨ましいな。


 【ガチャガチャアプリ】とか欲しいな~。ガチャりたい!!一体何が出るのか知りたいな。やっぱり武器とかなのだろうか。初期武器って棒だしな。良いな~。


 絶賛していた俺の地図スキルとこの【地図アプリ】は違う物だな。説明に『最初にこれを確認!』って書いてあるし、俺のスキルは見ると言うより感じる的な物だしな。周辺が分かる的な物だろう。これも最初にあると便利。と言うか必須に近いよな。地図スキルは歩かない事には意味にないスキル出だしな。だが俺はこのスキルの可能性を信じてレべ上げしよう。


 この【ランキングアプリ】は俺には無用な物かな?たぶん転生者同士ゲームの順位だろ?必要ないな。


 次は基本的なスマホの使い方か。必要なのかねコレ?ちょっと流し読みで見たが、スマホが異世界仕様になってるらしいな。とても頑丈で充電も不要らしい。今考えれば充電の事全く考えてなかった。充電がなくなった時どうするつもりだったのか。俺。


 ふと俺は気になる文を発見。


「スマホは体にしまう事が出来ます。……ドユコト?」


 どうやら盗難防止や置き忘れ防止の為らしいが、体にしまうってなんか痛そうだな。


 説明を読むと物理的にしまう感じじゃなくて装備の一部みたいなに俺自身の一部になるらしい。ぶっちゃけ分からんな。自己解釈するか。まぁ、物理的に体内入ったら痛みで死ぬよな。普通に考えて。異世界に来ての死因がスマホとかなんかイヤだな。


 話がそれたな。フム、【アイテム収納アプリ】みたいにイメージ力が試されるのか?アニメや漫画だと「それどっから出した!!」みたいな感じなのがあるが、あんな感じだろうか。……駄目だ。スマホが消えない。


 別のイメージ。装備の一部って事は体に身に着けるイメージだよな。身に着ける物ってペンダントとか指輪にとかか?スマホが別の物になるか。あ~マジックとかであるよなそういうの。別の物に変わったり、持ってたのが入れ替わったり。俺はどちらかと言うと種を解くよりも、なぜ?どうして?を楽しむのが好きだな。その方が魔法使いじゃね?みたいなノリになれて中々楽しいんだよな。


 おっと道がそれた。スマホをペンダントに変わるようにイメージ。指輪は落としそうなのと、人に見られるから却下。落としなさそうで、人の目から隠せるペンダントにしよう。


 ……何が悪いんだ?まったく変わらん。メモをもう一度読むか。説明文が分かり辛いんだよ!俺の所為じゃない。まったく分からんかった。


 次はスキルの発動についてか。真面目に読もう。もう寄り道や脇道はなしだな。


 スキルは常時発動型と任意発動型があるそうだ。俺の防御力上昇や素早さ上昇は常時型、鑑定や地図は任意型だな。多分。えっと~任意発動はスマホ操作とイメージ操作がある。また出たよイメージの野郎が。この説明文誰作成だよ。分かり辛いよ!!


 イメージ操作は使いたいスキルを思い浮かべる。また、同時に固有のスキル名を言葉に出すとよりイメージが固定され発動しやすくなる。らしい。


 うーん。鑑定を使う場合は鑑定を思い浮かべて、さらに鑑定と口に出す……と。やってみるか。


 あの花にするか。


「スーハー・・・・・・鑑定!!」


 お?おお!うをおぉ!!できた!!やった~!!


~鑑定情報~

・名前 たぽぽ

・説明 花。観賞用。


 鑑定情報少ないな~。レベルが低いとこんなもんか。だがコレはなれれば便利だな。戦闘の時に一々スマホ操作してたんじゃたぶん負けるし。慣れるためにも鑑定をしながら進もう。


 ん?何か俺の心でモヤっとした感じある。何なんだ?このモヤモヤは。


「ビチャ!!」

「ヤベ!なんか踏んだ!!」


 歩きスマホは前がお留守になりやすからな~。なんだ?コレ。ジェルな透明のブヨブヨだな。異世界動物のウ〇コ?やべ~ウ〇コ踏んじゃったかな。なんか違う気が来るな。フム。


「鑑定!!」


 さぁ!その正体を晒すが良い!!


~鑑定情報~

・名前 ムミの死骸

・説明 魔物


 なんだ~こら?ヤベ!イントネーションが田舎のそれになってしまった。


 魔物?このジェルが?弱くね?踏んだだけで死んだぞ?


 ……よし!!初の魔物対峙は俺のワン踏みで決着がついたな。何かステータスに変化があるか【自身のステ-タス確認アプリ】を起動っと。


  ステータス

名前  ガク

性別  男

HP  一一一/一五十(111/150)

MP  一九/三〇(19/30)

SP  二〇/四五(20/45)

装備

頭  なし

胴  初心者防具

腕  初心者防具

足  初心者防具

靴  初心者防具


スキル

・鑑定Lv一・地図Lv四・防御力上昇Lv一・素早さ上昇LV一


称号

・転生者・親愛の女神の加護・参加賞を無駄にした者(笑)


 変ってないか。少し期待したんだが。HP、MP、SPが減ってる。これはスキルの鑑定と地図を使ってるからだろう。


 地図の以外は全然使ってないかレベルも地図以外不動か。


 地図のレベルが上がったが違いはあまりないな。気持ちはっきりと分かるような気がする程度。地道行きますか。


 ムミって魔物は(某)RPGでいう最弱モンスターよりさらに弱いな。俺の体感だがな。


 さて、初の魔物退治は無事に終了した事だし、続きを見るか。


 転生者ゲームの注意点が書いてあるな。注意点と言うよりも心得みたいな感じだな。他の転生者の迷惑になる行為はするべきではないとか転生者同士の私闘は極力控える事とか、別に破ってもこれといった罰則などはないらしい。……俺、他の転生者に狙われたら間違いなく負ける。下手したら殺されるな。うん。全力で逃げよう。


 次は、このゲームの目的が書いてあるのか。ざっくりと言えば楽しく頑張ってってことらしい。ルールとかあったが、俺の目的はあくまでもハーレムを作る事。流し読みで良いだろう。


 これで最後か。


 <プリティー女神のアドバイス>


 正直いつ出るかと思ったが最後に来やがったか、このまま閉じてしまいそうになる衝動を抑えて読か。


<学君?良いですか?早寝早起きを基本としてちゃんとした食生活を心掛けてくださいね!!>

「お前は俺の母親か!!」


 思わず声を出してしまった。


<嫌な事があったり、めげたくなる時があるかもしれません。もしかしたら死にたくなるような事が起こるかもしれません。ですが諦めたらそこで試合終了ですよ!!>


 そこで、そのネタを使うな!!残念ロリ神!!ネタを知ってるのか分からんが普通に諦めるなで良いだろうに。


<とりあえず生きていればそのうち良い事ありますよ!諦めないでくださいね!>


 何? 俺ってそこまで良い事無いの? 自殺考えちゃうくらいイヤな事ばっかなの? ちょっとステータスの運の値とか見れないかな? マイナスとかじゃなよな?


<冗談はこのぐらいにして真面目にアドバイスしますね>

「最初からそうしろ!!」


 真剣に考えた俺の時間を返せ!!


<まず、地図アプリを持ってない学君に最初だけ大まかな位置をお教えします。目覚めたところから北や南にまっすぐ行くと町があります。どっちに行くかは学君が決めてください。他の方角の近くには町が無いので気を付けてくださいね>


 アレ?太陽が昇る方が東だよな?有名なアニソンの逆って覚えたからな。なぜ西から太陽が昇る歌詞なのか分からんが天才は違うってことか。東を正面にして左が北で右が南だ。良かった。覚えてて。


「……まっすぐ西じゃん。やっちまった~」


 しょうがない。戻ろう。


<まともなアドバイスとしては防具や武器は装備しないと意味がありませんよ!!>


 まともなアドバイスじゃねー!!知っとるわ!そのぐらい!だてに一日を部屋で過ごす人種を二十年以上やってないわ!


<最後に……早く死なないでくださいね!>


 ………………ッチ!


 少しだけ残念度が下がったな。


 不覚にもかわいいと思ってしまった。


 不覚にも少しだけやる気が出てしまった。


 不覚にも……あいつに会いたいと思ってしまった。


 くそ!!ここに来てこんな事言うなんて反則だろう!!まったく!!


「ハァ~……頑張ってみるよ。神様」


 さてと、戻りますか~。

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