第264話 吾輩『大掃除』から逃亡する
吾輩は目を覚ました。こうもりが話しかけてくる。
「旦那、お目覚めですか?」
「目覚めた。さぁ、しご―――」
「いいえ。今日は違う仕事があります」
「ハイ?」
「今日は、大掃除してもらいますよ」
「・・・明日ではだめですか?」
「もう、30日ですよ!!」
「・・・いやだぁああああああああああああああああ」
吾輩は仕方なく大掃除をすることに。
設定を忘れている方もいるかもしれないが、洋館的な屋敷に住んでおります。
屋敷の外観としては古びた2階建ての洋館。
これは1章の3話をご参照ください。書いてます。はっきりと。
「さて、どこからやろうか・・・」
「旦那、援軍を呼んできますね」
「出来れば、マダム勢でお願いします」
「合点承知の助!!」
そういうと、セバスチャンは飛び立っていった。これから、こうもりたちを使って掃除をしてくれるんだろう。大群が吾輩の屋敷に押し掛けるだろう。
ささ――吾輩は今のうちに・・・・
吾輩は中が赤いマントに身を包む。なんか、久しぶりな感じするんだけどな・・・。まぁ、いいか。
脱出しよう。さらば、大晦日。
吾輩はひとり屋敷の裏口からこそこそ逃げるように外へ出た。こちらは心臓破りの坂はないが、くねくね曲がるいろは坂3号がある。
1号は日光で、2号はどこか知らん。
ということで吾輩は現実逃避を開始します。
クネクネした道をテクテク歩き続ける。夜空は澄み切っており、空気も澄み切っている。さすがに一張羅でも肌寒い。冬は吾輩は嫌いな季節だ。いろんな意味で・・・・。
心臓破りより3倍の時間を使い、見事に街まで繰り出せた。
「なんだ。吾輩セバスチャンいなくても、結構いけんじゃん♪さて・・・パン屋は・・・あれ?」
吾輩は辺りを見渡す。何かおかしい・・・。いつもと違う入り口から街へ入ってしまったからか?ドラクエとかだと、どこから入っても入り口は一緒だったのに。もしかしたら、最近の違うかもしれないが・・・。
ここどこよ?
吾輩はとりあえず、道を真っすぐ歩き続ける。ちらほら、お店があり明かりがともっている。
吾輩は歩きながら考える。
年の暮れ。忘年する前に思い出しておこう。色々。
お忘れの方もいるが、吾輩極度の太陽アレルギーである。浴びると死ぬ。以上。
ただし、照明はOKよ。但し、家は電気代節約の為に、ほぼ停電状態で過ごしている。但し、パソコン環境だけは整っている。但し――。
但し――
但し、―――――――――――――――
但しの但し、――――――――――――――――――――――――――――――
但し、貧乏である。
はぁ、はぁ、なんかすごい疲れたぜ。初期設定を反復するのは疲れる。さすがに、400話近いと、あれだな。色々実は縛りプレイさせられているのかもしれない。
あっ、一個考え忘れた。これは、バンパイアと名付けたやつに物申したいことを書いたストーリー。これが初心。途中からは世界平和エッセイになった。
なんだか、懐かしいな。色々考えたな。51万文字の駄文を積み上げてきた。いつでも書籍化できるぜ!
吾輩は今までの自分が歩いてきた道を思い出しつつ、振り返る。
本当に色々ありすぎて、書ききれないわ。51万文字とかをまとめるなんて、無理無理。けど、これはいろんな人に支えられて書き上げられたもの。吾輩だけではなく、見てくれる人がいてこその物語。読者失くして物語は完結しない。語る相手がいなければ、何も伝えれないから・・・。
そして、吾輩は目当ての店についた。
「邪魔する」
「アインツさん、いらっしゃい♪ 今日もいちごパンですか?」
「もちのロン」
「ふふふ」
いちごが笑いながら吾輩を出迎えた。まぁ、営業スマイルだろう。わかってる。ということぐらい、わかってるさ。
「勘違いなんかしてないぞ、セバスチャン」
あれ・・・?
吾輩はいつもの調子で話しかけてしまった。
いつもだったら・・・そうか。いるのに・・・今日は置いてきたんだっけか・・・。今頃、カンカンに怒ってるかな・・・それとも、呆れられてるかな・・・。いつも、セバスチャンにお世話になってたからな・・・。今年は、特にお世話になったしな・・・。
「どうしたんです? アインツさん?」
「ちょっと、いちご」
「はい」
「参考に教えて欲しいんだが・・・こうもりが喜びそうなパンってあったりするか・・・?」
吾輩の中で・・・何かしたい衝動に駆られている。伝える方法を考えたいと。
「こうもりですか?」
「そう。脊椎動物亜門哺乳綱コウモリ目が喜びそうなパンを」
「・・・ちょっと、待ってくださいね・・・」
いちごは上を向いて唇を尖らせて考え込んでいる。真剣に考えこんでくれているのが、ヒシヒシ伝わる。吾輩・・・結構無理難題を聞いてるのに。
「やっぱり、食パンじゃないですかね!!」
「食パン?」
「そうです!!キングオブパン!!それが、食パンです!!」
いちごは自信満々に語りだした。
「食パンなら、焼いてよし!! ジャムをつけても良し!! チーズを乗っけても良し!! シチューにつけても!! さらに、そのままでもいけます!!」
「・・・すごいぞ!食パン!!」
「そうです、ふふふ」
いちごはドやぁ~と言わんばかりに両手を腰につけて、三角形を作っていた。確かに、食べちゃいけないものとかあるかもしれないし、食パンなら色々アレンジもできるし・・・きっと!!
「いちご、食パンをくれ!!」
「ハイ!!」
「あと、このいちごぱんも」
「ぬかりがないですね。アインツさんは」
当たり前だ。吾輩の分を買わないとは言っていない。少し、痛手でもあるが・・・。年末は金が飛ぶもの。しょうがない。お金には羽が生えているみたいだ。
「ハイ、アインツさん♪」
「サンキュー」
「それにしても、こうもり飼ってるんですか?」
「野良こうもりたちを少しな」
「優しんですね♪」
「あたり前田のクラッカー」
「ちょっと、さっきから古いですよ♪」
吾輩はいちごからのツッコミを受けながら、袋に包まれたパンをもらった。そして、店を出ようとした。
扉を開けた途中で言い忘れたことがあるのを、思い出した。
「いちご、今年は世話になったな。よいお年を」
「来年もよろしくお願いします、アインツさん。よいお年を」
扉を開けて、外に出ると
「さむっ」
寒さがより厳しさを増していた。早く帰ろう。我が家に。
吾輩はパンを握りしめながら、家路につく。
歩きながら考える。
セバスチャン失くして、吾輩は成り立たない。眷属であり、従者であり、時には厳しく𠮟りつけてくれる親代わりであり、さらに執事的なこともこなす。ハイパーインフレ蝙蝠。それが、セバスチャン。
伝えなきゃな――年が終わる前に――
吾輩は屋敷についた。
「あっ、旦那!? 何してたんですか!!」
やはり、ちょっと怒っている・・・。まぁ、無理もない。逃亡したのだから。
「ちょっとな・・・」
「掃除はやってますけど、大きいものは旦那しかできないんですからね!!」
「わかってるよ。それより、ちょっと、渡したいものが――」
吾輩は食パンを取り出した。思いを伝えるのにアイテムは効果的である。あの時、吾輩を駆り立てた衝動――それに名前を付けよう。
「セバスチャン、いつもありがとう。これ、口に合うかわからんが、いつもお世話になっているお礼だ」
「旦那・・・わざわざこれを買いに?」
「いや・・・たまたまさ・・・たまたま」
「・・・だんにゃ・・・」
あれ・・・?涙ぐんでいる?
「だんにゃ・・・」
「いや、そこまで感動されると・・・ちょっと気が引けるというか・・・なんというか」
「気持ちだけでも・・・うれしいっす。ううううぅうう」
名前を付けよう。
「これは、感謝の念だ。吾輩だけでなく、セバスチャンがいないと成り立たないのだよ。吾輩の物語は」
「・・・お供しまっす!!」
うれしそうに食パンを頬張り始める、セバスチャン。
まさか・・・ここまで・・・通じるとは・・・。日頃の行いが悪いのが功を奏しすぎている。ちょいと、逆に反省をしてしまう。迷惑かけすぎかな?心を入れ替えよう。
「それじゃあ、大掃除するか!!」
「はぐ、はぐ・・ごっくん。やりましょう、旦那!!」
「おう!!」
「じゃあ、2階の棺と大広間のテーブルと椅子を36脚と一回の中庭の噴水と、窓全てと、ベッドのシーツとシーツカバーの洗濯と、カーペットの水洗いと――」
「セバスチャン・・・ちょっと待ってくれ・・・」
「どうしたんです? 旦那?」
「・・・来年にしよっか♪」
「だめです」
「ファッキン、大晦日フェスティバルぅううううううううううううううう!!」
吾輩は眠りにつく。
《つづく?》
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