第十四話 休日

 ケモノ耳はいいぞ。



 …………いや、別にフィーに何かしたとか、そんな話ではないんだけどな?

 よく、ファンタジーの世界だと定番であるところのエルフとかドワーフが目立つことが多い。

 たしかにエルフのイメージだとスタイルめっちゃよくて、場合によっては胸が大きいなんて設定もある。俺も好きだよ?エルフ。もちろん、ダークエルフ、ハーフエルフもどんとこいだな。

 ドワーフだって男は筋肉ムキムキのちっこいのでイメージ固まってるだろうが、女性になると小柄でパワフルという話も多いな。ものによれば、小柄というイメージが消えるらしいが、まぁ、それぞれの設定次第だろう。

 もともとエルフやドワーフなんて仮想の種族だからな。こんな種族っていうイメージを具現化した有名どころみたいな部分がある。


 さて、ここで獣人だ。

 獣人の種族となると話によれば言語をしゃべらない場合もあって面白いよね。フィーみたいにしゃべる獣人もいたりするが、中には、ぐるる…、がぅ!、といった感じの犬っぽさはほんと好き。他にも獣人はその獣にもなれる的な設定は大好物ですね。

 獣人といえば、犬っぽいイメージが目立ちますがよくよく考えてほしい。獣なのだからキツネでも猫でも何でも獣人なわけですよ。

 そんなの当たり前だろ!!そういう方もいらっしゃいます…。ですが昨今のそういう文化はどうやら犬派や猫派なんですよ…。



 私はここで異を唱えたい。キツネだっていいじゃないか!



 キツネかわいいでしょう!某ファンタジーの主人公や幼馴染以外登場キャラが全員獣人のアニメだっていっぱい種類いるんですよ!?リスだって猫だって犬だって狼だってキツネだっているんですよ!?

 

 だったら別に狐というジャンルでキツネ人族とか作っても怒らないで下さいよ!


 狼人族とかあるくらいだしあってもおかしくないでしょう?!







 ………………………いったん落ち着いた。OK、俺は正常です…。


 魔法試験からの1週間、ガルド先生は大忙しの日々を送っていたが俺の場合は家で待機だったのでとてつもなく時間に余裕があった。

 レベルアップのおかげで魔力の量を増やそうにも魔法を何十発と使わなきゃいけないからなぁ。どうせやるなら何か別のことをやろうかな、ということになった。最初の1日目こそ、何もせずにフィーと一緒に遊びながら過ごしたよ。


 1日目、そういえばフィーって日中は何してるのかなーと思ったらやってることは主婦でしたねーというか否かの山に住むおばあちゃん的な?

 日中はさんさんと日光が差し込み明るい山の中、食べられる草、キノコ、果実類が多く生えており、それを同じところから毎日とらないように調整しながら採取している。ワーウルフは昼間は活動せずに地面に穴を掘ってそこで暮らしているらしい。なんかモグラみたいだな。

 そのおかげで昼の間にフィーが森を散策しても大丈夫なんだとか。


 それが終わったら持ち帰った食材を洗ってそれぞれ下ごしらえして、終わりだそうだ。この後はフィーも気分によってやることが変わるらしく、基本は昼寝したりするらしい。米のような食べ物「クメ」はどこからと聞くと、ガルド先生が国で買って持って帰るらしい。今まで国で暮らしてて一度も食べてなかったんだけど、理由は簡単で作ってる量が少ないんだとか。作り方は日本のコメと一緒らしいが、やはり管理が難しいんだとか。まぁ、魔物出るし、仕方ないか。

 どうせ、俺もいるし、何か面白いものでも…と考えてボードゲームなんか面白そうだし、フィーに勧めてみた。


 「フィー?ちょっといい遊びがあるんけど、やってみない?」

 「?なにー?」


 外に出て、地属性の魔法を使って石でできた碁盤と碁石を作る。色の違いを出すのが難しいので代わりに碁石を作るときに近くにあった葉っぱを表面に巻き込みながら固める。これで片面が土色、片面が緑色の碁石の完成だ。これでリバーシができるぜ!

 そこからフィーにリバーシの説明をしてみると、


 「面白そう、負けない」


 と、鼻を膨らませながら乗ってきたので何回か対局してみた。するとフィーも呑み込みが早く3回目ですでにいい戦いになっていた。4回目にはすでに負けたよ、とほほ…。でも、幼女のドヤ顔ってありだと思うんですよ、はい。


 そうやって日中遊んでると昼を過ぎたくらいでフィーが簡単なパンのはさみ物を作ってくれた。普通に焼けたパンを横に切って、間に痛めた野菜とキノコ類をいれた簡単なものだ。これが単純ながらにおいしく、野菜のシャキシャキ感がなくなっておらず、キノコのしっかりした歯ごたえもよくて大満足だった。うますぎてがつがつ食ってる俺をフィーがクスクスと笑っていたので、少し恥ずかしかった。


 飯時も終わると、フィーはいつもの寝床でゆっくりと昼寝をしていた。ちょうど日光が格子状の窓から入って気持ちよさそうだ。木造建築でガラスのできていない時代だから、虫とかは気になるが、こういう昔っぽさは落ち着くよなぁ…。というか、この世界でも蚊がブンブン飛んでるのには驚いたわ。世界を超えて蚊という文化は共通でした、くそったれぃ。

 まぁ、ひとまずこれでとくに相手してくれそうな人もいないので、俺も昼寝を…あ、そうだ。


 フィーが寝てるのを起こさないように服を学園に行くときの簡素な服装に着替え、愛用の爪武器を持って訓練場へ向かう。この爪武器、なんだかんだで歯の収納ができるおかげで持ち運びの際はボクシンググローブくらい持ち運びが楽だ。ついこの間、帰りの時にちらっと見かけた武具屋で爪武器の話を出してみたところ、使う人も少なく持ち運びも難しいといってたので、たぶんこの武器は希少品なのではないだろうか。

 まぁ、だとしても返す気はないんだけどさ。



 ところ変わって訓練場、なぜ来たのかというと…。


 「ルーテシア、出てきてくれるか?」

 「何かご用でしょうか、マスター」


 いつもの様子で…と思ったら今日は少し服装が違った。と言っても劇的にというわけではなく、長袖だったゴスロリドレスが半そでになっていて、スカートもひざ上まで短くなっている。短くなったことで出てきた白い素肌はまるで雪のようで…くっかわいすぎる!昼間だからなのだろうかねぇ…。

 でもこうしてみると、本当にルーテシアって精霊なのか疑うよなー。深窓の令嬢って言葉がすごく似合うレベルだしなぁ。うぅむ…いい。


 「?マスター、大丈夫ですか?」

 「ん、おお、大丈夫だ。すまない、見とれてた」


 いかんいかん、完全に見とれてた…あ、間違えた。ぼーっとしてたって言おうとしたのにそのまま言ってしまった。女性にもてたことない歴前世を足して60年オーバーの私からすれば完全に地雷を踏んだのではないだろうか。あれ?でも精霊って性別あんのかな?わからん。

 まずいなー引かれるなーと思っていると、


 「マスターはこういうのがお好みですか?それでしたら、しばらくはこのままにしますが…」


 案の定引かれ…てなかった。意外にもうれしそうにその場でくるっと回ってみせるルーテシア。おお、精霊が踊っているようだ…あ、精霊か。

 と、引かれてはないが一応言い直しておくべきかな?


 「ああ、いや、今の姿もすごくかわいいけどほかの服装のルーテシアも見てみたいから大丈夫だよ?」


 恋愛経験虫けら以下の私にはこれが精一杯です…というか前のままだったら、こういう状況になるとどもるか、何も言えなくなるかの二択だよ?ちゃんと乾燥言えてるのはいいと思うんだよ、うん。

 思ったよりも好印象で済んだのか、ルーテシアは少し驚いた感じだったが、


 「ありがとうございます、マスター。ではそのように」


 と、いつものスカートの端を持ってやる礼をスカートをスカートを持たずに同様に礼をした。うむ、様になるよなぁ。

 あ、そうだそうだ、本題を忘れるところだった。


 「それでなんだがな?今回呼んだのはちょっと訓練に付き合ってほしいからなんだ」

 「訓練…ですか?」


 そういってルーテシアが首をかしげる。


 「そうだ。実戦形式で戦闘訓練をしたいんだ。とはいっても一つ問題があって、あくまで怪我はしないようにしたいんだ。俺はもちろんだけど、ルーテシアもだ」


 ガルド先生の場合は双方遠慮なく…といってもガルド先生はわからないが、形式に慣れながら、戦いあっていたのでいいのだが、ルーテシアは精霊とはいえ女の子…だと思うし、彼女の攻撃の場合どういう効果があるのかが謎だ。ワーウルフの戦闘から察するに彼女の炎は、どうも触れるだけで体力が削っていく節がある。さすがにそれだと体力が持たんし…。

 いろいろ考えているとルーテシアが案を出してくれる。


 「それでしたらマスター、【疑似空間】を作ってみてはどうでしょうか」

 「ん?なんだそれ?」


 何だろう、闇魔法とか何かかな。


 「【疑似空間】は闇魔法でも難しいとされる空間魔法に近いものですね。もともと闇魔法は呪系の技を多く持ったりしますが、中には特殊なものも少なくないのです」


 へー便利だね、闇魔法。


 「その一つである【疑似空間】は作ったものの意思で作られる空間で、魔力を多く消費する代わりに自分の意のままに作れる空間を作り出すのです」


 なにそれ便利。そしたら、空間だけ作ってもの詰め込み放題じゃん。


 「この作り出した空間は、半永久的に存在し創造者が死ぬまで残ります。なので、闇魔法を使う人は大抵、自作のアイテムボックスなどを持っていますね。もちろん、魔術でも空間作成は可能で、お店などで売っているアイテムボックスはそのほとんどが紋章だけを書いて、そこに魔力を注ぐことで使えるようになっています」


 さすがルーテシア。主人よりおそらく後にこの世界に来てるのにこの情報量の差ですよ。俺、情報戦に弱すぎない?

 しかし、そんな魔法もありなのか…んじゃ、それを試してみるか。


 「ありがとう、ルーテシア。ちなみにルーテシアは【疑似空間】を使えるのか?」

 「もちろんです、すぐおつくりしますか?」

 「じゃあ、お願い」

 「御心のままに…」


 ルーテシアは軽く礼をすると、俺に背を向けると、訓練場の中央に向けて片手を突き出す。そして足もとに魔法陣が浮かぶとすぐに目の前に、妙に豪奢な鉄扉てっぴが現れる。難しい魔法って言ってたのにこうもあっさり…俺も早く自分で作れるようにイメージしたいなぁ…。


 「大丈夫ですよ、マスターなら私よりも私の手の届かない領域にまで手が届くことでしょう」


 そんなこと考えていたら、ルーテシアが魔法を行使しながらこっちに向かって、そういっていた。あらー心の声もれてたかねぇ…というか、あの領域に達するのが想像できないわ、うん。

 俺がそんなことを考えてるうちに終わったのか、


 「マスター、【疑似空間】が完成しました」


 ルーテシアが完成させたようだ。こちらに向き直し優雅にお辞儀をしていた。ちなみに、今の【疑似空間】はちゃんと視ていたのでおそらく俺も使えるようになっていることだろう。楽しみだねぇ、アイテムボックスとかとくに。


 「うっし、そんじゃあ、中で戦闘訓練と行くか」

 「了解です、マスター。『オープン』」


 再びルーテシアが片手を鉄扉が開きその先にドーム一個分の真っ白な空間が見える。すげぇ。


 「では、マスター。行きましょう」

 「おう」


 ルーテシアに催促され、俺も中に入っていく。さてさて…どんな感じの戦いになるかねぇ…。

 

 


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