かみのはこにわっ!!

杉崎 三泥

例え話のプロローグ

 もし、自分がファンタジーの異世界に生きる人間だったとしたらどうだろう。

 ただの農民なら昔と変わらず税とかを収めるのだろうし、戦士や魔法使いであれば魔法に疑問を抱かず、そういうものとして勉強し、使うであろう。それに、魔物が住んでいれば魔物の存在を恐れはすれども存在することに驚きはしないだろう。


 もし、自分が有り余る才能を持っていたらどうだろう。

 現代では才能を持ったものが上に立つのはもちろん、努力して才能をカバーする人間だってごまんといるだろう。しかし、自分が思うに努力というのもある意味では才能で、努力する才能がなければ結果的に社会に適応しないといわれ、うまく生きていけなくなる。

 そういう意味で考えれば、才能を持っているならある程度頭角をあらわしたり、不自由なく生活をしていったりすることができたのだろう。


 さて、ここで最後の例え話をしようか。




 もし、何の才能もない人間がある時、異世界で転生して一花咲かせませんかと聞かれたら、どうするだろう?




 自分は平凡だけど、今の生活に不満がないからこのまま生きていく!そういう人もいるだろう。それがなに一つ間違ったことを言っているわけでもないのだし、それを変だということはもちろんしないさ。妻や子供などの親戚がいれば、おそらく私も現代に残ることを考えたのは確実だ。

 

 だが、50を過ぎてはや8年。親父や母さんもおととしに息を引き取り、会社でも可もなく不可もない平社員、同僚と飲みに行く酒だけが楽しみで生活していた自分。

 いきなり転生と聞かれて、そんな自分の身の回りのことを思い出しながら、その問いに対する返答なんて、決まっていた。


 何の変化もない人生を好きというわけではないのだから、一回くらい普通の生活ではありえないものを体験してみたいものだろう?




 そんなことを考えながら私、田中太郎は転生をした。

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