ふつうじゃわからない
目黒ケイ
うそでしょ?
10年片想いしてた人との恋が実った。
少なくとも3回は告白してる。
軽いのも含めたら寝言のようにあるいは息をするように好意を伝えてきているから回数なんてわからない。
毎度ナチュラルかつカジュアルそしてエンドレスに振られてきていた。
ので、ちょっと、実ったときには信じられないことが起きたと思って、その告白の場所には踏み絵があって試されてるんじゃないかとか、なーんちゃって、みたいなドッキリなオチがあるんじゃないかとか、そんなことを自らがわざわざ思考の片隅によぎらせてしまうほど、起きえないことだった、そのはずだった。
「振られないと前に進めないから振ってほしい。それで、もう一生、関わることなく行きたい。そうでなければ、きちんと彼女にしてほしい」という天か地か、そんな二択を提示して、決断を迫った。
ただの友達で居続けるには、わたしのなかに彼が入り込みすぎていたからだ。どちらかに寄せたい。平静な感情が保てない。
結果。
うそ。うそでしょ?
三十路女が不毛とも言える10年を過ごす間には一度、他の人と結婚もした。
それで10年の彼を忘れて前向きな人生を歩んでいこうと決めた。のだけれども、旦那さんだった人との縁は切れた。10年の彼への想いはくすぶっていただけで消えてくれなかった。それだけが原因で旦那さんだった人との縁が切れたわけではもちろんないのだけれど。
いやはや。
いま、同じ空間で彼と過ごしている。
もう、2ヶ月くらい。
仕事に行って、買い物をして、料理を作って、部屋を片付けて、洗濯機を回して。
自分の生活の半分くらいは彼のために生きている。彼と生きている。
これが、自分がしたかったことだ。
10年越しの夢をかなえた。
努力はしてきたつもりだけれど、まさか。
けれども、かなった。
これはたぶん、東大入るより難しいはず。
東大入れたことないからそもそも比べられないけど。
さて。
どうぞよろしく。
10年の奇跡と、そこに至るまでの三十路の努力と意地をご覧くださいませ。
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