たべものいちばん。

 いつものバス停にて――


「ん?」

イブキが今時珍しい食パンを咥えたまま猛スピ〜ドで駆けて行く中学生らしき女の子を発見する。


「あれってさ――」


「ん〜?」

月夜がそちらに視線を向け。


「あの中学生の娘がどうかしたの?」

月夜がハ〜ゲンの新作『珈琲バニラ』の画像と一足先に食べた記者の感想を読んでいる途中に視線を移し。


「あれってパンだったらイイけど、もしスマホそ〜さでぶつかったらトキメかないよね〜ってはなしをキノ~、オンゲのチャットでいってたのおもいだしてさ……」


「あ~……確かに歩きスマホでぶつかられたらイラっとくるかもね〜」


「う〜ん……サがわっかんない! なんでパンはよくってスマホはダメなのさぁ〜! あるきスマホでぶつかってもトキメイてよっ! だれかそ~いうマンガかいてよっ! そしてだいヒットさせてよっ!! オトコのヒトがあるきスマホのオンナのこみてトキメクよ~なフウチョ~にしてよっ!!!」

 完全に他力本願+自己都合な物言いに、


「パン食べ物だからよっ‼︎」

だから許されるという有無を言わせぬ理屈で、背後に『ドンっ‼︎』という効果音つきでそう言い切る月夜。


その迫力に圧されて口を閉ざすイブキだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る