どこを見ている!

 いつものバス停にて――


「う〜ん……」

イブキがいつになく険しい表情で呻くのを見た月夜は、

「ど〜した? なんか悩み事?」

「んとね……」

そういって説明する代わりに、スマホ画面見せた。

「『男性があまり求めていない女性らしいさ』?」

「そう。これによるとさ〜ネイルとかってまったくみてないらしんだよ」

「あぁ〜……そ〜いえば、最近イブキってネイルがんばってたね? 形整えたりするために削ったり、ささくれしないように保湿とかしたり」

「そう。そ〜いうキソとかもだけど、かくギジュツのシュ〜トクとか――」

「前、ウチにしてくれた時も、すっご時間かかったね〜。べ〜スコ〜トして乾かして、マニュキア塗って乾かして、もう一回塗ってから書き出したんだっけ?」

「そうそう。たのしかったね〜アレ? なんのはなしだっけ?」

「いや……そんな苦労してんのに、男子はあんまり、そんなトコ気にしないから落ちこんでたんじゃないの?」

「あぁ〜……でも、よくかんがえたら」

「うん?」

「おとこのヒトがネイルをほめたり、そもそもそこにふれたワダイをふられことないや……」

「そんなトコ見てないんだろ〜ね」

「やっぱりムネかぁ! ムネみてんのかっ‼︎」

イブキ自分胸元に視線を向け。

「ムネなら、わがグンのセンリョクあまりにもビリョク! ……くっ!」

「イブキ……」

月夜イブキ肩そっと手を置くと――


「兵士が一人もいない軍隊を戦力って言っちゃダメだよ」


傷心のイブキにそっとトドメを刺した。

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