◇モヤモヤのミコ
なんとも頼りない───古びた外見をした大太刀。
柄も鞘もボロボロで以前シルキ大陸で見た姿とは別物でしかないが、同一物であり
冒険者達が平然と利用している【フォン】も例外なく含まれている。
「むむ......こんな古ぼけてたっけなぁ......」
銀色の髪を掻きながら、扇状に広げた
【
プンプンはこの武器を
前所有者であるジプシーがプンプン戦でそう告げ、
それから少しの時が経ち、今の姿───錆付くように古ぼけてしまった。
「んぐぐ......、抜けないし......なんでかなぁ?」
大太刀を置き、プンプンは大の字に倒れる。【デザリア】の瓦礫の上で、昼夜問わず復興作業に勤しむ者達の声も気にせず。
普段のプンプンなら喜んで復興作業を手伝っているだろう。
しかし、今は普段通りではいられない。
この大陸イフリーでプンプンは
今まで何度かリリスと戦闘してきたが、いつも決まらず終わる。しかし何度となくプンプンの中には敗北感が色濃く刻まれてきた。
今回に至っては、敗北感だけではない。
───あの時、ボクの存在がこの世の
リリス戦にてプンプンは自分の身体に起こった異変。
指先がすり抜け、何かが何処かへ強く引っ張られるような不快感。
喋る事も出来ない脱力、身体の内側の何かを抜かれるような感覚に冷たい恐怖を感じるものの何も出来なかったあの現象。
強い力は世界そのもののバランスを大きく崩す。それを決して世界は許さない。
世界の
そんな力があの瞬間、プンプンに襲いかかったのだ。
原因などハッキリしている。
魅狐特有の力であり、それは
そんなものをプンプンが執行し続ければ人という世界の
単純に、使わなければいいだけ。
使っても連発しなければいいだけ。
そうわかっていても───肉体的に大きな反動があるとしても、使う場面は必ず来てしまうのが運命というものだ。
使えば使うだけ、蝕まれ失う。
だからこそ、プンプンは切り札を温存出来るよう、この【魅狐喰】で戦う事を選んでいるのだが、肝心の武器が武器として機能しない。
強引にでも引き抜ければいいのだが、それさえも叶わず。このまま振り回すしか使い道がまるでない。
誰が見てもガラクタのカタナだが、不思議な事にプンプンはこのカタナに───大太刀に、何かを感じている。
言葉にするのはとても難しい、しかしただならぬ何かを、強烈に感じている。
同時に、このままではダメだ、とも。
【魅狐喰】はプンプン記憶にはない両親が素材となっている武器。子にとっては残酷な
記憶にない両親に思う事も、言ってしまえば何もない。絆と言えるものなど何ひとつ無いのに、漠然と「この武器がいい」と思える。
「誰か詳しそうな人は......お?」
身体を起こし周囲を見渡すと、詳しそうな人ではないにせよ、何かヒントを貰えそうな───人間ではないが───人がいた。
「おーい! シルキの......おーい!」
「ん? あ、あなたは───」
どこかへ向かう途中だったと思われるシルキ大陸出身の冒険者で
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