【Take a break】
◇地界の魔女 エミリオ
イフリー大陸のふざけた気温は元通りの気温───元々も熱いが───に落ち着き、地殻からわたし達も戻った。
地脈という場所がどんな感じだったのが、残念ながらわたしは知らない。
フローとラヴァイアを地殻で撃退し、地脈前にいたデカ狼と話していたらみんなが地脈から戻り、わたし達は地上へ帰還したからだ。
地脈で何があったのか報告を聞いたのが数時間前。【四大精霊のイフリート】にわたしも会ってみたかった、とそりゃ多少は思う───が、今回の地殻探索はわたしにとって大きな結果に繋がったので良しとしよう。四大には今度会えそうな気がするし。
裸足の王様アグニが用意してくれていた宿のベッドに寝転がりながら、ふたつの武器をわたしは眺める。
対魔竜の短剣【ローユ】と霧薔薇竜の剣【ブリュイヤールロザ】だ。地殻にいたデカ狼はこのふたつの武器───の竜と顔見知りだった。わたしもデカ狼に会った瞬間「コイツはピョンジャピョツジャの知り合いぽいな」と何の根拠もなく思い、本当にそうだった。
あの狼はイフリートの眷属らしく、イフリートが眠る地脈を守るのが仕事。
他の四大にも同じように狼の眷属......ガーディアンみたいな狼がいる。
四大精霊と眷属の契約をしたからこそデカ狼は炎の中でも余裕で、それは契約精霊がイフリートだから。つまり他の地殻には他四大の恩恵を
これはまぁ、まぉいい。
問題......というか驚いたのは、ローユもピョンジャピョツジャも “四大にとっては災害レベルの存在だった” という事だ。
もっと言えば、生きているだけで世界に様々な影響を与えてしまう、そんな存在。
だからデカ狼は『エミリオが殺したのか? 経緯を聞かせてくれ』と落ち着いた様子で、でも鋭い視線でわたしの話を聞いていた。あれは絶対、わたしをどんな存在か確認していた......もしわたしが別になんとなく竜をぶっ殺した系のヤバイヤツなら地殻から戻れていないだろう。
四大にとっては災害レベルの存在───それって普通に、人間......
少なくとも対魔竜と霧薔薇竜からは
そして............
「......
魔女の危険度合いは “危険” という領域を既に突破している事も、魔女族という種族で見れば単体で強い存在より遥かに危険な事も。
今現在で唯一の救いが、魔女達はバラバラって所だ。
でもそれも、多分今だけだ。
勿論これはわたしの勘でしかないし、自分で言うのもアレだが、わたしの勘なんてアテにならん。
それでも、多分今だけだ。
人工的に作られた【黄金魔結晶】の存在を知り、【世界樹】に宝珠として隠されていたそれを【レッドキャップ】に奪われ【世界樹】は死んだ。
それから【黄金魔結晶】を使うには【魔結晶塔】にある特種な魔結晶が必要な事がわかった。
ここから一気に、
魔女の介入だ。
フローも含めて、魔女が積極的に地界へ絡むようになった。
目的は様々だと思うが......【黄金魔結晶】をガチで狙ってる魔女もいる。
それから【シルキ大陸】の存在が幻ではなく現実だと判明し、妖怪やアヤカシ、大神族なんてのも普通にいた。そして【世界樹】と同じ霊樹の【夜楼華】も。
「思い返してみるとすげーな......」
冒険者になって色々なヤツに会った。
魅狐や半妖精......純妖精の森にも行ったな。
猫人族やキノコ帽子の獅人族、悪魔とか吸血鬼、天使にも会ってる。
妖怪、アヤカシ、大神族......そんで四大。
先輩冒険者にも、いい関係とは言えないが出会ってそれなりの顔見知りレベルに。
騎士学校にも行った。
痛い事も沢山あったし、
思い出しただけでも胸糞悪い事もある。
辛い事も、楽しい事も、アホみたいな事もある。
「───あ、そっか......わたし、
フローとラヴァイアへ流れ的に言った『わたしの地界で外来種が好き勝手してんじゃねーよ』という言葉。
あの時は本当に流れというか、深く考えず言ったが、わたしは地界が好きなんだ。
ノムー、ウンディー、イフリー、シルキ。
四大陸が、この
「
ずっと浮いていた足が、つま先だけでも今やっと地面についた。
理由なんてなんでもいい、って言うけど、
なんでもいいけど理由があるとないとじゃ、こんなにも違うのか。
魔結晶関係も、四大関係も、絡んでくる魔女を迎撃する理由も、多分これから行くであろう【外界】へ行く理由も、ぜんぶぜんぶ、“地界が好きでこのままあってほしいから” でいいんだ。
地界を変えたいとか、良くしたいとかは、わたしの仕事じゃない。
ただ、コレでいいんだ。
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