◇火炎の四大
イフリートはゆっくりと語った。
元々この世界に
ノムー、ウンディー、イフリー、シルキ、という現在の四大陸は【
多種界-1が現在のノムー。
多種界-2が現在のシルキ。
多種界-3が現在イフリー。
多種界-4が現在のウンディー。
数千年前から四大精霊が宿るエリアとして存在していた、と。
しかしある日、魔女界からひとりの魔女が世界を巡り始めた。
目的は絶対的な力を手にするため。
気に入った生物をコインに封印するという特質系能力を持っていた魔女は、その能力を使い様々な種族の猛者をコインへと封印し、力を高めていった。
魔女の目的は全ての支配だった。
コインにした生物を自由に召喚する事が出来る魔女の能力は脅威的で、一度でもコイン化させられた生物は二度と戻らず、永遠に使役された召喚獣のような扱いに成り果てる。
それが【邪神コイン】と呼ばれる異物。
これが【シンシアと十二の
魔女シンシアが所有するコインに【博識コイン】と呼ばれるものがあり【パラケルスス】が封印されている。
この【博識コイン】が四大精霊にとっては厄介や脅威という言葉では到底足りない鎖のようなものだった。
魔力シンシアはコイン化した存在達の知能や技術を利用し、四大を強制的に使役。
その結果、各
そんなシンシアを止めたのが、魔女、人間、魅狐、純妖精だった。
四大のひとり【ウンディーネ】は純妖精と契約し、シンシアの手に落ちる事は無かったものの、それでも力の差は子供が見ても明確だった。
しかし、シンシアは負けた。
その後、四大達は各
それが今の
地界誕生の際にマナの乱れが発生し、地界と外界の往来が難しくなってしまい、今の関係がうまれた。
四大達は大陸の安定に全力を注ぎ、ノムー、ウンディー、イフリー、シルキが安定した頃、魔女は【パラケルスス】に、今後同じ事が起こらないよう何かしらの対策をしたい、と相談し、四大精霊については “四大の力のみを宿す器を用意する” と決定した。
いつの時代になっても四大精霊───大精霊という存在は世界を変える程の力を持っている。
四大そのものは大陸に残し、四大の力のみを注ぎ納める事が出来る器があれば、シンシアのような存在が再びが現れても崩壊を避ける事が出来る。
そうして何千何万と繰り返し生成されたホムンクルスが、四大の力を納める器としてのホムンクルスを完成させた。それが【だっぷー】だ。
『完成した器───ホムンクルスは眠ったままだった。成長もせずフラスコの中で永遠に眠ったまま。もし、ホムンクルスが目覚めた時は四大の力を集める時である............』
イフリートはそう告げ、この先は今に繋がると言わんばかりにクチを閉じた。
今現在、だっぷーはフラスコの中にいない。
十年ほど前に目覚め、四大の力を宿せる状態まで成長し、今ここにいる。
『ホムンクルスが目覚めここに来た以上は、必ず世界に何かが起こる。これは絶対なんだ』
「なぜそう言い切れる? だっぷーは確かに目覚めた......でもそれは十年も前の話だぞ? そしてこの十年間、さっき聞いた “シンシアと十二の邪神” のような大規模な事は起こっていない。そもそもさっきの話を俺はまだ信用出来ていない......」
カイトはイフリートの話を、シンシアの件を信用出来ないとぼやくも、それはカイトだけではない。トウヤとリピナも “御伽話” としての認識しかなく、現実に起こっていた歴史です、と言われてもまるで信用出来ない。
『信用するしないは重要じゃない。重要なのは彼女が───四大の力を納める器が目覚めてここに来た、という事なんだ。こうなった以上は火炎の四大として力を授ける』
四大の力。
これについては毒ではない、とカイトも認識している。
先程、息をしていなかっただっぷーへイフリートが何らかの処置をし、呼吸を再開させたのは事実であり、それが四大の力である事も納得出来る。
四大の力については拒否する理由もない。
「待ってくれイフリート」
カイトは再びイフリートへ質問をする。
「絶対、と言っていたが、なぜ絶対なんだ?」
ひぃたろやリピナ、トウヤとワタポもその発言には引っ掛かるものを感じていた。
必ず世界に何かが起こる、という聞き流せない言葉に添えられていた絶対。
本当に何かが起こるなら、その絶対の根拠が何よりも欲しい。
『詳しくは話せない。話してあげたいけど、そういう契約で四大は大陸に宿っている。でも、シルキ大陸にいる2人の大神族に会うといい。彼女達も世界分裂時代を知る存在で、ひとりは絶対を示す。もうひとりは
イフリートはそう語り、ホムンクルスのだっぷーへ【火炎の四大】としての力を授ける。
イフリー大陸に発生した不可解な気温上昇の原因を突き止め、本来の状態へと戻す。
この目的は果たせたが、不安や不穏を残す結果へと繋がってしまった。
しかし、道は確かにある。
シルキ大陸の大神族に会えば何かがわかる。
何が起ころうとしているのか、何が起こっているのか、何が───始まろうとしているのか。
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