◇目的地は同じ



 地界ちかい───四大しだい大陸で生成されている世界で【ノムー】【ウンディー】【イフリー】【シルキ】の四つ。

 これら四大とは異なる世界と言われているのが外界がいかい天界てんかい冥界めいかいだが、外界と天界は地界と同じ線にあり、冥界に至っては存在さえ疑わしい。


 今、四大大陸───地界イフリーが他二大陸への爆破人間という物騒極まりない刺客を送り爆破させた事により、その立場を危ぶめている。

 ノムー大陸はイフリー大陸を完全に攻めるつもりで騎士を数名、視察として送り込んでいる中でウンディーは冒険者を送り、今回の爆破人間の詳しい調査を開始した所で浮上したのが、特異個体であり覚醒種の女帝【炎塵の女帝】だった。


 女帝種の時点で対象はSSS-S3トリプル指定の犯罪者であり、そんな犯罪者が国を統括するなどあってはならない。女帝となった経緯にどんな理由があるのか......その経緯は免罪となる内容なのか、など、共喰いという行為は一端で判断するには根深い。のだが、爆破人間を送り込んだ事やそれらを爆破した事、ましてや国民に爆破を付与し人間爆弾として使い他大陸を攻めるなど免罪の余地は一瞬で消え去る。



 相手は覚醒種の中でも別格。


 そんな対象が玉座に座るイフリーの首都デザリアに、カイトとだっぷーは到着した。


 この街デザリアには、千秋、テルテル、ヒガシン達ドメイライト騎士も居る。





 トラオムの街から人は去った。バーバリアンミノスが凶悪なモンスターという役で人々を追い回し、近くの街まで全員を逃がした事により、今宿屋は貸し切り状態。


 ギルド【フェアリーパンプキン】のひぃたろ、ワタポ、プンプン。

 シルキの【華組】すいみん、モモ、スノウ、あるふぁ。


 魔女エミリオがイフリー大陸で出会ったヨゾラとリヒト。


 そしてつい先程、トウヤと白蛇もトラオムの街に到着し、身にのしかかる疲労を少しでも癒すべく休憩している。


「シルキの華が起きたら一気にデザリアまで向かうわ。貴女達は好きにするといいわ」


 ひぃたろは古い地図───紙切れの地図を広げ、デザリアまでの道を確認しつつ言った相手はヨゾラと、眠るリヒト。


「こっちも起きたらデザリアへ行く予定だ。別に足並み揃える必要もないし、そんな仲でもない。そっちはそっちで勝手にやってくれ」


「そう。わかったわ」



 ひぃたろはヨゾラを気にしていた。

 敵意や好意などではなく、単純に同じ女帝種として話せる相手が、ひぃたろにとっては初めてだからだ。

 そんな相手が自分よりも女帝種としての歴が長いとくれば色々と聞きたい事が湧いても不思議ではない。


 しかしそれは今やるべき事ではない。


 今はこの問題を───もうひとりの女帝種を止め、イフリーをどうすべきか。


 それが第一目的であり最優先。





 巨大なトカゲ型モンスターが荒野を駆ける。

 砂埃をわざとらしく逆巻かせ凄みを出す演出はわたしの指示であり、どうせなら格好つけたいと思うのが全生命に共通する美学なのだと最近は思う。


「ねぇ、この砂埃......イヤなんだけど」


「我慢しろよメティ。こうしなきゃエミリオ様がお通りだぞ感出ないんだから」


「............馬鹿なの?」


「あ? なんだって?」


「なにも」


 噂の天才魔女エミリオ様はメティを連れデザリアへ爆走中。このメティという女の子───というには少々、いやだいぶ礼儀がよろしくないクソガキが強いか弱いかなんて知らない。ただあの状況......いやわたしもリヒトが何したのか全然わかんなかったんだけど、とにかくあの場に居るのは危険だと判断し、強引に連れて逃げる作戦は見事成功し、今はとりあえずデザリアへ向かっている。

 デザリアについたら千秋ちゃんとテルテルを探してメティを預けりゃいいだろうし、程度には軽く考えている。


 問題は、なんちゃらの女帝だ。

 このまま行くとわたしが一番乗り、つまりわたしが女帝とソロ戦になる確立がくっそ高いという事だ......。これは非常にまずい状態であり、そんな状態にならないようどうにか立回らなければならない。


 本気だせば女帝なんてワンパンだけども。本気だせば。


「なぁメティ。お前なんでヨゾラ達と一緒にいんの?」


「好きだから」


「あー、いやそういうのじゃなくてよ。目的みたいなのあんだろ?」


「ないよ? 私はどうなりたいとか何をしたいとか、そういうのないの」


「まぢに?」


「うん。ないよ」


「それ楽しいのか?」


「ん? なにが?」


「いや......なんでもねーわ」



 具体的な目的はない、というのはわかっていた。ヨゾラが花を、リヒトはモンスターを探していると言った場でメティはこれと言った目的を言わなかった。あれは言わなかったんじゃなく、本当になかったんだ。

 今のやり取りは自然すぎるほどラグもなく返事をしていた事からもわかる。


 目的がないのは別に悪い事じゃないし、明確で具体的な目的......将来の夢だとかそんなもんを持ってるヤツの方が少ない。でも、段階的な目的ならみんな様々だが持ってるものだ。わたしもイフリーの件が片付いたらパフェを食べよう人の金で、程度の目的は持ってるが、コイツからはそういうのさえ感じない。


「なぁメティ」


「なに?」


「この面倒事おわったらパフェ食おうぜ」


「パフェ?」


「そう。この世界にある最強にして最高の食べ物」


「パフェは知ってるよ。でもなんでパフェ?」


「そんなもん食いてーからに決まってんだろ。わたしの目的はパフェを食う事なんだ」


「小さい目的だね」


「うるせーな、いんだよ小さくても。この小さい目的を達成させたら次の目的を、また次の目的を持って生きるのが最高に楽しいって偉い人が言ってた気がするし」


「......へぇ」


「だからお前もパフェ食うのを目的にしようぜ」


「なんで?」


「なんでって......パフェは最強だから以外にないだろ? そんな事もわかんねーんじゃまだまだ子供だな」


「むっ......私は子供じゃないし、パフェが最強なのは昔から知ってるし常識」


「だよなぁ? ウンディー戻ったらヨゾラの金でパフェ食おうぜ。キノコ帽子のシェフにお願いすれば最強のパフェが食えるからよ」



 こんな話をしていたら本当にパフェが食べたくなってきた。

 サクッと女帝ぶんなぐってキノコ帽子のしし屋に魔女パフェ作ってもらおう。




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