フクロダVSアーネ3

「火よ降り注げ! 『ファイアレイン』」


「くっ……!」


 私はアーネと戦うため、耀助さんの家から遠く離れた森の奥へと移動した。

 理由はもちろん耀助さんの家を破壊されたくないからである。

 そして今、上から降ってくる火の雨を避けるため私は空へ飛んだ。


「ふう……」


「くっ! 風よ我を浮かせ! 『フライ』」


 アーネも風魔法で空を飛び、私の後を追う。


「火よ放て!『ファイアボール』」


「水よしなれ! 『アクアウィップ』」


 私はファイアボールを放つも、アーネの水の鞭で一瞬で消えてしまった。


「ふん! この程度なのかしらノーマルディア!」


 やはり魔力が半減してると威力がない……。

 それだけではない。彼女の方も魔法の力、精度、ともに前と比べて段違いだ。


「さあ喰らいなさい! 太陽よ! 我が前にいる敵を一掃せよ! 『サンフレイム』」


 そう言った次の瞬間、炎が彼女を包み、まるで太陽のような丸くて大きな火の塊が出来上がった。

 そしてその太陽から無数の火の玉が放たれ、私を襲う。

 火の上級魔法のサンフレイム、ここまで使えるとは……。


「くっ……!」


 私は襲いくる火の玉を避けたり、手で払うも、その数になす統べなく、最後の数発全て当たってしまった。


「がっは……」


 火の玉に当たってしまった私はそのまま地に落ちてしまったが、木の茂みがクッションになり、それほどの衝撃はなかったが、体が動かなくなった。


「これで私の勝ちのようね」


 降りてきたアーネが私にとどめを差そうとしている。


「これで終わりよ! 大地よ放て! 『ロックブラスト』」


 放たれた岩が、勢いよく私に向かってくる。

 私はもうダメのようです。

 耀助さん……ニコのことをーー。


「フクロダさん! 無事でぶがあぁ!」


「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」


 突然茂みから私の前に耀助さんが現れて、アーネのロックブラストに直撃した。

 この状況に私もアーネも驚いた。



***



 空に大きな火の玉が見えたから行ってみると、フクロダさんが倒れてたのが見えた。

 急いで向かうと、突然岩に激突……俺は気を失いかけた……。


「耀助さん! 耀助さん!」


「……ぬぁ! 死ぬかと思った! フクロダさん無事ですか!?」


「いや耀助さんが無事ですか!? 頭から血が出てますよ!」


 俺はおでこに手を当てると、血が出ていた。


「あー、これくらいなら平気です。歩美の実験台に比べると」


 小さい頃、よく歩美の格闘技の実験台にされて、何度も病院送りにされてるから痛みに耐性がある。


「え、なら……いいです……か?」


 平然としている俺にフクロダさんは納得してないようだ。


「あんたがどうしてここに……スネーリアとウルルンはどうしたのよ!?」


「ハッハッハ! あの使い魔達は俺達が倒した!」


 俺は特に何もやってないけど……。


「おいライバル(笑)」


「誰が(笑)よ!」


「お前は使い魔にフクロダさん一人に相手をさたんだから、俺達もお前に相手してもいいってことだよな! だから俺達はフクロダさんに加勢させてもらう!」


「いいわよ! ただの人間が増えたぐらいで、私の魔法に敵うわけないもの!」


 よ~し、了承を得たということでーー。


「全員攻撃開始!」


「「おっしゃあ!」」


「何!?」


 茂みから歩美と金山が現れた。


「喰らえ! メ○トスコーラ!」


「ぶ……! ぷあ……甘っ! 何これ!?」


「&ヘアスプレーファイヤー!」


「熱っ! 何でただの人間が火の魔法を!?」


 金山が動画で見た2リットルのコーラにメ○トス入れて噴射させた。

 その次に歩美が、チャッカマンにヘアスプレーをかけて火炎放射をして牽制。

 ちなみに燃えないために先にメ○トスコーラで濡らした。


※どちらも実際人に向けないでください。


「捕まえた!」


「なっ!?」


 アーネが怯んでる間、歩美が後ろからがっちりと脇をつかんだ。


「離しなさい!」


「離さないわよ! 金山お願い!」


「よし! コチョコチョコチョコチョーー」


「ちょっやめ! アーハハハハ! ヒーヒヒヒ!」


 金山がアーネの脇腹をくすぐり、アーネが大爆笑。

 その隙にーー。


「ニコさん!」


「はい! ノーマル様、ポーションです」


「あ、ありがとう」


 最後にニコが茂みから出て来て、フクロダさんにポーションを飲ませた。

 瓶に入った緑の液体を飲ませると、フクロダさんの体が発光しながら傷が癒えた。

 リアルのポーション回復なんて初めて見た。


「ありがとうございますニコ」


「いえ……」


「フクロダさん! なんかいい方法ないですか!? このままじゃやられますよ!」


「……一つだけ方法があります」


 そう言うとフクロダさんは何もない所から紙を出した。


「この紙に書いてある呪文を主である耀助さんが唱えることによって魔力が上がります。ただ、これは主の魔力の消費、魔力のない耀助さんの場合はどっと疲れが出て体が動かなくなります」


「ならいいですね! では早速!」


 俺は紙を取って唱えようとしたがフクロダさんに止められた。


「ちょ、ちょっと待ってください! いいんですか!?」


「疲れるだけだったら大丈夫です。明日は日曜なのでゆっくり休めますし」


「…………耀助さん、どうして私のためにしてくれるんですか?」


「…………たしかに最初は嫌でした。フクロウ人間だし、騙して契約されたし、ゲロ吐いたり、蛇やネズミ食わされましたしーー」


「多いですね……」


「ですけど…………正直嬉しいんです。家にずっと一人で寂しかったので……ですからフクロダさん達がいてくれて、毎日刺激があって楽しいんです」


「耀助さん……」


 俺はフクロダさんに心のうちを話した。

 これは嘘偽りのない真実である。


「だから力を貸しますよ」


「わかりました。お願いします」


「よし!」


「いい加減にしなさい! 風よ我を守れ!『ウィンドガード』」


「「!?」」


 アーネがくすぐりに耐え抜き、自分に風を纏わせて、歩美と金山を吹っ飛ばした。


「歩美! 金山!」


「だ、大丈夫……」


 吹っ飛んだ二人にケガはないようだ。


「行きますよ、耀助さん!」


「はい! ……ですけどこれ読めません!」


「あ、そうでした……私の後に続いて読んでください!」


 俺は紙に書いてある字を読もうとするも、字が異世界語でわからないからフクロダさんに続いて呪文を唱えた。


「「我が力よ! 我が使い魔に分け与えたまえ!『マジック・ギブ』」」


 俺達が唱えた瞬間、契約した時の腕輪が光りだし、俺の腕輪の光がフクロダさんの腕輪に吸い込まれていく。

 それと同時に力が吸われているのがわかる。

 俺は力尽き、倒れそうな所をニコに支えられた。

 あー……あの松の薬を飲んだみたいに動けない……。

 フクロダさんはというと、体からオーラを放ち、まさにパワーアップした感じだ。


「ありがとうございます。行きますよ。アーネ」


「くっ……! ふん、いくら力を上げた所で私が負けるはずない! 大地よ敵を囲め! 『グランドトラップ』」


 アーネが呪文を唱えると、フクロダさんの周りの地面が盛り上がりフクロダさんが土に閉じ込められた。


「フクロダさん!」


「風よ我を守れ……『ウィンドガード』」


 ゴウッ!


 土の檻が風によって吹き飛び、そのまま散っていった。

 フクロダさんの周りはアーネと同じように風を纏わせている。


「くそ! 風よ我を浮かせ! 『フライ』」


 アーネは今度は空を飛び、新たな魔法を出そうとした。


「では、新たな技を試しますか……風よ放て『ウィンドボール』」


 フクロダさんの手から風の玉を出してきた。


「風の初級魔法で何が出来る!」


「それはどうでしょう」


 そう言うとフクロダさんは羽を広げてバサバサと勢いよく羽ばたかせた。

 そして手にある風の玉がどんどん大きくなっていく。


「なっ!? 風を引き起こして、魔法の力を上げた!? くっ……! 太陽よ! 我が前にいる敵を一掃せよ!『サンフレイム』」


 アーネの周りを火が包み込み、太陽みたいな大きな火の玉が出来上がった。

 そして、そこからたくさんの火の玉がフクロダさん目掛けて放たれた。


「大した魔力量ですね……ですが甘い」


「何!?」


 アーネが放った火の玉がフクロダさんの風の玉に吸収されていく。

 フクロダさんの風の玉に火が混ざり、赤い玉になった。


「どうしてただの初級魔法が上級魔法に負けるのよ!?」


「教えてあげますよ。『ウィンドボール』はたしかに初級魔法ですが、これはサンフレイムと同じくらいの魔力を使ってます。つまり、魔力を分散した大量の火は、一個に集中した風に勝るということです」


「そ……んな……ハア、ハア……魔力が」


 魔力が尽きたのかアーネはどんどん下に降りていっている。


「これは耀助さん達に迷惑をかけた罰です! 『サンフレイム・ウィンドボール』」


 フクロダさんは炎入りの風の玉をアーネに向かって投げつけた。


「ちょっ待っ! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ボガーーーーーーン!!


 フクロダさんが放った魔法がアーネに当たり、まるで花火のように空に爆発した。

 敵に味方するわけではないが……フクロダさん容赦ねえ……。

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