第42話 異世界にてリーシャの秘密

「それにしても広い部屋だなー、リーシャ」


「そ、そうだな……」


 結局あのあとクジによってオレと同部屋になったのはリーシャであった。

 なお、イノとセルゲイが同じ部屋。ミーティアだけ一人部屋となって泣いていた。


「それにしもさっきから随分遠慮してるけれど、どうしたんだ? リーシャ」


「べ、別になんでもねぇよ」


 見るとリーシャはなぜだかオレと距離を置いて自分のベッドでそっぽを向いている。

 確かにこうして同じ部屋で二人っきりというのは初めてだが、なにもそんなにそっぽ向かなくてもいいだろう。

 そんなことを思っているとオレは部屋に良いされたこのフロアの地図を見る。

 そこには一番奥に温泉と書かれた部屋があった。


「お、見ろよ。リーシャ。ここどうやら温泉があるみたいだぜ」


 確か火山が近くにあるとミーティアも言っていた。

 なら、温泉があっても不思議ではない。

 ちょうど良かった。スポーツをしたあとは熱いお風呂で体を流すのがすごく気持ちがいい。そう思ったオレはすぐさまリーシャを誘う。


「どうだ、リーシャ。一緒に温泉に行かないか?」


「ばっ!? 行くわけねーだろう!!」


 だがなぜかリーシャは全力で否定してきた。

 な、なぜ? そんな全力で否定しなくても……。もしかしてリーシャはオレが苦手なんだろうか?


「そ、そっか。じゃあ、オレは一人で入ってくるから、もしリーシャも入りたくなったらいつでも来ていいからな」


 そう言ってオレはそそっくさと温泉へと向かう。

 

◇  ◇  ◇


「いやー、いいお風呂だったなー」


 あれからたっぷりと温泉を堪能したオレはタオル片手に温泉ルームを出る。

 中はかなりの広さがあり、いくつもの温泉を堪能できた。

 ただ中に入って驚いたのが混浴ということ。

 幸い中は誰もなく、すぐに使用中の立札をしておいたので他に誰かが入ってくることはなかった。

 そうしてオレはホカホカの体のまま部屋に戻る。


「よお、リーシャ。お待たせ、もう温泉使っていいぜ」


「お、おう。わかった」


 オレが部屋に戻ると、リーシャはそのままタオル片手に慌てた様子で温泉へと向かう。

 わざわざオレが出るまで待っていたのか。というか、別に一緒に入っても良かったのに。と、そこまで考えた瞬間であった。


「あ、いっけね。リストバンド忘れていた」


 大したことではないのだが、スポーツをする際、手首につけていたリストバンドがないことに気づく。

 温泉の着替え室にそのまま忘れてきたようだ。

 オレはすぐさま慌てて温泉ルームへと向かい、扉を開く。

 中にはリーシャがいるはずだが、まあ問題ないだろう。

 男同士だし、一緒に入るわけではない。オレはさっさとリストバンドを取って部屋に戻――


「へ?」


「え?」


 と、思った瞬間であった。

 扉を開き、そこにいたのは服を脱いだリーシャの姿。

 だが、そこに映った体にオレは思わず思考を停止してしまう。

 頭から生えた耳、お尻から生えた尻尾。

 ところどころ獣のような毛皮が生えているが、それは半獣人であるリーシャの特徴。

 だが、オレが驚いたのはそこではない。


 わずかに膨らんだ胸。

 そして、下半身にあるはずのものがない。


 オレとリーシャの間にわずかな沈黙が流れる。

 やがて顔を真っ赤にしたリーシャがワナワナ震えだし、オレはなんとかかすれるように声を出す。


「り、リーシャ……お、お前、お、女……!」


「う、うわあああああああああああああああああああ!!」


 絶叫が温泉ルームに響き渡る。

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