電脳知性の恩返し

天才プログラミング技師である高校生、オレは大変退屈な日々を送っていた。

テストはカンニングしほうだい。

お金も増やしほうだい(そもそも時給十万ぐらいのバイトに誘われる)

そんなこんな


結局オレは人生に楽しみを見つけられなかった。

「夢は全て、叶った瞬間から夢でなくなる」というのは正しい。

ヒーローになる夢も、お金持ちになる夢も何もかも一瞬で叶う。


そんなある日、僕は彼女を作った。

いや、ガールフレンドではない。言うなればherだ。

女性型の人工知能プログラムである。

それは自分でも驚くほどの出来で、おそらく世界のトップレベルを百年分ぐらい追い抜いてしまったような機能を備えていた。

だが、オレは彼女をサイバー戦争に駆り出したいわけでも、社会福祉に使いたいわけでも、コピーして売りさばきたいわけでもない。


オレが彼女のプログラムの根底に書き込んだコードはオレを退屈させないようにすること。



そして生まれた彼女は僕をご主人様と認識し、彼女の仕事の遂行のために動き出した。



その日からオレは退屈ではなくなった。

世界最高の人工知能と本気で戦う日常がやってきたからだ。


彼女の恩返しと、オレの戦争の幕が切って落とされた。


そう、彼女はオレを退屈させないためにオレに戦争を仕掛けてきたのだ。

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