(仮)円の世界
@iori_kutsuki
第1話終わりの始まり
「ねぇ、どうして?」
女が言った。
狭くはないダイニングキッチンにはテーブルがある。
女の向かいには男が座っており、下を向いたまま微動だにしない。
「・・・何とか言ったらどうなのよ。」
「・・・。」
女は目を鋭くさせ、ヒステリックに叫ぶ。
「そうやってずっと黙ってるつもり!」
「そういうのが嫌なんだ。」
男は、抑揚のない声で言う。
「もう、うんざりなんだよ。君のそういうところ。」
「え・・・」
「育った環境には同情する。けどな、だからと言って俺に何を言ってもいいのか、してもいいのか!」
「そんな!そんなつもりは・・・」
「・・・勘弁してくれ。」
男は傍にあった鞄を持ち玄関へ向かう。
「待って!おねがい、少しでいいから、話を・・・」
女が縋るように男の腕に絡みつくが、乱暴に振りほどかれる。
男はそのまま女に見向きもせず部屋を出ていき、静かに扉が閉まる。
「ひとりに・・・しないで・・・・・・・」
太陽がまだ上りきらない午前4時、少女は寝返りを打つ。
「・・・(目が覚めちゃった。)」
時計を確認し、欠伸を噛みしめる。
「どうしよう、早く起き過ぎた。」
予定より2時間も早く目が覚めた彼女は、一つのびをすると、ポスンと布団に顔を埋める。
「(今日から中学生。入学に合わせて転校したけど、友達できるかな。不安だな・・・。)」
壁にかけてある真新しい制服を見遣ると、一気に起き上がる。
「よしっ!折角早く起きたんだもん、初日だし気合い入れてくぞー!!」
先程まで不安そうにしていたが、そんな素振りもなく、元気よくベッドから飛び起きると、カーテンを開けた。そこには今上らんとする朝日が輝いていた。
(仮)円の世界 @iori_kutsuki
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