若榴
棚見
第1話
――恋人というより、ボーイフレンドって感じだったけど。
吟味するようにそう言って、
――数えられるだけのキスと、数えられるだけのセックス。お互い別に、淡白だとか浮気だとか、そういうことはなかったんだけどね。
――喧嘩とかしたんですか。その……。
きっかけとか。言いさす
――特別には何も。衝突なく、恙無く……。何かきっと、抗えない力があったんだと思う。
そこで言葉を止めると、少し思案してから、
――いえ、私に抗う力があったのかも。
と、彼女は続けた。
――清々したとは言わない。何が駄目だったんだろうって、何をすれば上手くいったんだろうって、長い間未練みたいなものは残ると思うけど。今の方がゆとりはあるのよ。
そうして、吉乃はちらりと時計を見やり、
――余裕はある気がするのよ。
再び、グラスを呷った。
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