第85話 決意とは勢いでもある

「アレはなに?」

 エドモンドの上にオーロラのような光が現れた。

「綺麗でやんすな~」

「ホント、ジャポンってオーロラが見れるのね」

「見れない…そんな土地じゃない」

 桃太郎が否定した。

「でも出てるじゃない」

 B・Bが空を指さす。

 オーロラからナニカが降って来る。

「なんか浮いてるわよ…何アレ?」

「シルエットから推測するに…頭足類のようです」

「……タコだわ…緑のタコだわ」

「えぇ、タコね…気持ち悪い…緑だし」

 オーロラの中に浮遊するタコがエドモンドを抱き上げ、オーロラに消えていく…

「………あの…ダンナ、さらわれたんじゃ…」

「そうかもしれないわ、エディがタコにさらわれたという現実を受け入れなかったけど…さらわれたわタコに」

「つくづく、常識を超えた現実を引き寄せる男ねアイツは」

「マスター……現在、大気圏を超えて上昇中です」

「宇宙へ行ったのか…あの男は」


 もうなぜ?とか考えたくなくなる現実を目の当たりにした一同に出来ることは、エドモンドの無事を祈ることだけだった。


 一方そのころ…

「あのときの人間…目を覚ませ…人間、おい人間」

「ん…俺は生きているのか?」

 目を覚ますと、銀色の部屋、横に緑のタコ。

「緑の子供…久しぶりだ」

「オマエ…死んでたんだぞ」

「俺は死んでいない、なぜなら生きているからな」

「……解らんが、とりあえず回収して蘇生させたのだが…オマエ、なんか、ちょっと見ない間に、どエライ適当な身体になったもんだな…呆れるぞ」

 文明の進んだ異星人から見れば、遺伝子を引っ掻き回したような適当な配列は稚拙というか、子供の落書き程度のレベルなのかもしれない。

「体が痛くない…」

「一度、死んでんだからな、まぁ、こんな強制的に遺伝子の配列を書き換えれば、そりゃ苦しかろう…」

「俺は…死んだのか?」

「あぁ、死んだ…もうちょっと遅ければ蘇生もできないほどに、しっかり死んでいた」

「…そうか、それでオマエが?」

「オマエが前に来た時に、ちょっと位置を特定できる機器を埋め込んだのが役に立った」

「生き返ったということだな」

「まぁそうなんだが…オマエ、なんで、こんな玉っころを埋め込んだんだ? こりゃ、オマエさん達には馴染まんと思うがな…」

「その玉は何なんだ?」

「知らんのか? こりゃ、オマエさんの星とは違う生物の遺伝子だ…」

「まったく解らん」

「だろうな…まぁ、水が馴染まんということだ」

「俺は、その玉で強くならなければならないらしい…」

「理由は知らんが…この玉は、オマエさんに馴染めば、確かに筋力は上がるようだが…反動は大きいぞ、そもそもオマエさん、別の遺伝子も摂り込んでおるようだしの…短期間に無茶をしたもんだ」

「不適格…ってことだな…俺は」

「……筋力を上げたいのか? であれば、手助けはしてやれる」

「本当か?」

「幸い、オマエさん、甲殻類の特性を持っておる…その中途半端に食い込んだ遺伝子を、もう少し深く広く馴染ませることはできる」

「やってくれ‼」

「だがな…オマエさん、その姿は捨てねばならんぞ」

「今以上に…か?」

「あぁ…それは条件ということだ、よく考えろ」

 緑のタコはエドモンドにポイッと太郎玉を投げて渡した。

 エドモンドは、しばらく眠った。

 疲労が半端なかったのだ。


 目覚めて、しばらく地球を見ながら考えていた。


 よくは解らないが、徐福と奴がロクでもないことをしでかそうとしている。

 それはジャポンだけではなく、どうやら、あの星全体を巻き込みそうな規模らしい。

 桃太郎は、ソレを止めたいと思っている。

 だが…それは難しいようだ。

 B・Bも何か考えているようだった。

 それが何なのか自分には解らない。


「……やってくれないか?」

「後悔するなよ…ヒトの子」

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