第79話 聞くまでも無い

「徐福の手の者か!!」

 道中は…想像を軽々超えてきた。

 昼夜問わずに遅いくる忍びの者…

「恐ろしく訓練されているわね」

 B・Bの顔にも、さすがに疲弊の色が伺える。

 それなりに戦えるプリンセス天功では相手にならないほどの手練れを送り込んでくる。

 その都度、エドモンドが吠えるのである。

「徐福の手の者か!!」


「もう聞くまでもないでしょう…エディ」

 オヤジと逃げ回るプリンセス天功が呆れる。

 忍び服の背中と左胸に〇に囲まれた『徐』の1字…疑いようがネェ。


「これじゃ電池が持たない!!」

 多勢に無勢、真剣では捌ききれない徐福の刺客、刃こぼれなどしないライトセイバーレプリカの使用頻度が上がっているのは仕方ないことであった。


「チッ、出力が…頼む!!」

 ライトセイバーレプリカの光が危うくなると、変身して戦うエドモンド。

 その間にオヤジとプリンセス天功が回収し電池を入れ替える。


「ハァーッ…山を降るまでに何回襲われた?」

 B・Bが山積みになって転がる屍に腰を下ろして、大きなため息を吐く。

「数えるほどのヒマは無かった…スマン」

「エディ、謝るとこ?」

 プリンセス天功がエドモンドにライトセイバーレプリカを手渡した。

「7回です、3日で7回の襲撃を受けました、倒した数は57名、死者57名です」

 HALが冷静に答える。

「ダンナ、全勝でさぁ!!」

「当たり前だ…1敗が即、死だからな…」

 まぁ主にエドモンド、B・B、HALが戦い、オヤジが荷物番、プリンセス天功は止めを刺したり、バックアップに回っていた。

「やれば出来るものよね…ワタシ、生きてるのが不思議だわ」

 プリンセス天功が水筒の水をグイッと飲む。


 山を抜けると、川が流れている。

「なんか、やっと四方が見渡せるって気がするわ、それだけでホッとするわ」

 ギンッ!!

 水筒に苦無が突き刺さる。

「そんな暇はないようね」

 B・Bが構える。


 一同が互いをフォローできるように輪を作る、もちろんオヤジは輪の中心だ。

 身を屈めて鍋の蓋を構えるオヤジ。

「コレは、伝説のアイギスの盾…こんなところにあったとは…」

 先ほど拾った際に呟いたオヤジである。

「ダンナ…この盾に姿を映された者は石になるという伝説の盾でさぁ!!」

 ぼんやりと反射する鍋の蓋を繁々と眺めて一言。

「そうか…しっかり身を守れよ」

 さすがのエドモンドも容易く騙されない程度に世間を学んだのだ。


 どんぶらこ…どんぶらこ…どんぶらこ…


「聞いたことない音がするわ…」

 プリンセス天功が辺りを見回す。

「川から何か来ます」

 HALの検知にナニカが引っかかる。


 そのナニカが何だか解る頃…

 一同は絶句した。

「ジャイアント・ピーチ?」

 驚くほどに大きな桃が川から流れてきた…。


「冗談よね?」

 B・Bが思わず脱力する。

「苦無を投げたのは…この桃か?」

 エドモンドが首を傾げる。

「バカね、エディ…桃がどうやって苦無飛ばすのよ、ズバリ!! 桃はフェイクよ!!」

 だろうね…ってことを大きな声で指さしながら吠えるプリンセス天功。

「ハズレだ…」

 一同の前で流れに抵抗するように止まる桃が喋った。

「デカいだけじゃねぇですぜ、ダンナ…喋りまさぁ。この桃」

 オヤジが桃を指さして興奮している。

「……なるほど…」

 B・Bが桃の後ろに回って頷く。

 長いヒモがフックで縛ってある。

「コレが流れない理由か…なるほど…トリックは単純なほど見破られないということだな」

 エドモンドがヒモを白雨の切っ先でスカッと斬り離す。


 再び、どんぶらこ…どんぶらこ…と流れていくジャイアント・トーキング・ピーチ。

「さっ…行くわよ」

 B・Bが歩き出す。

 一同、後に続く…。

「アレ…いいの?」

 プリンセス天功がB・Bに尋ねる。

「用があれば、向こうからやってくるわよ…」

 愛想の無い幼女であった。

(見た目は子供、中身は悪魔…はて? どっかで聞いたような?)

 エドモンドが首を傾げた。

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