第72話 意味なき結果論

「勝ったのね…エディ」

 プリンセス天功が意外そうな顔で闘技場のエドモンドを見る。

「盗みに来なくてもよかったわけね」

 B・Bが呟く。

「そうでもないさ、僕に逢えただろ?」

 ナベリウスがクスッと笑う。

「ダンナ…無駄に戦わされたんでヤスね…」

 しみじみとオヤジが呟く…

「それを言ったら…エディがバカみたいじゃない」

 身も蓋もないプリンセス天功の悪気ない一言で一同、憐みの視線をエドモンドへ向ける。

「知ったら…泣くかもしれないわね」

 B・Bが腕組みして頷く。

「ダンナ…そういう星の元に産まれたんでヤンすね…御可哀想に」


「長い付き合いだったな…リッパー」

 エドモンドが白雨を払って納刀する。

「やだ…エディ…なんか雰囲気だしちゃってるわよ」

「もう見ていられないわ…HAL…エドモンドを呼んできてちょうだい」

 B・Bの目には涙が浮かんでいる。


 闘技場にコロコロ転がってきたHAL…

「えっ…どういうこと? 太郎玉を手に入れたって…えっ? 俺は何で戦ってたの?」

 しゃがみこんでHALに尋ねるエドモンド。

 徐々に小声になっていくエドモンド、時々、VIPルームの窓を見ている。

 項垂れた様に闘技場を降りるエドモンド。

 白熱した殺し合いにエキサイトした観客の様々な歓声・罵声を無視するかのような後姿…それは勝者のソレではない。


(俺は…一体…)

「マスター、急ぎましょう…少なからず、敵意を向けている者もいるはずです、長居は無用です」

「あぁ…そうだろうな…俺も早く此処を去りたい気持ちで胸いっぱいだ」


「やぁ…キミがエドモンドだね」

 にこやかに握手を求めるナベリウス。

 なんとなくエドモンドと目を合わせない仲間達。


「お前は誰だ?」

「僕はナベリウス、ベリアルの…まぁ兄妹というか仲間というか…」

「仲間ではないわね」

 B・Bが即座に否定する。

「ナベリウス、太郎玉貰っていくわよ」

「どうぞ、構わないよ…それをキミがどう使おうが…僕には興味ない」

「コレか…」

 ヒョイッとB・Bの手から太郎玉を取り上げるエドモンド。

(ほう…早いな…)

 その無駄の無い動きにナベリウスが驚く。

「こんな玉っころのために俺は…戦っていたのか?」

「違うわエディ」

 プリンセス天功が真顔で否定する。

「アナタの戦いなんて関係無かった!! 盗みに来て…譲ってもらうという、まさかの棚ボタにアタシ達もビックリしたの」

「あぁ…いや…いいんだ…べつに」

 太郎玉をB・Bへ返すエドモンド。

「その『ウラシマ』は…『カスパー』だよベリアル」

「そう…何でもいいわ…3つ揃えなきゃ意味の無いものだからね」

「僕は興味ないけど…徐福は違うよ、三賢人の祝福を受けるのは自分だと思っているのだから…」

「厚かましい爺さんね…相変わらず…」

「ヒマなのさ…無限の時間を生きるんだ、目的が無ければ生きる意味を考えてしまうんだろう」

「憐れなものね」

「キミはどうなんだい?ベリアル」

「………」

「生きる意味を考えることはないのか?」

「っさいわね~」

「ベリアル…キミは、彼に祝福を与えるつもりなのか?」

 ナベリウスがエドモンドを見る。

「ん? 俺がどうかしたか?」

 プリンを食べているエドモンドがナベリウスの視線に気づく。

「さぁね…」

 クスッと笑うB・B

(なんだってんだ、サッパリ解らん話をしているようだが…)

 聞いても解らない話には、興味を持たないことに決めたエドモンド、気になればHALにでも聞けばいい、長々と説明してくれるはずである。


「アンタは、どうするの?」

 アトランティスを離れる際にB・Bがナベリウスに聞いた。

「どうもしないよ、卑弥呼が動いている間は、此処にいるさ…行き場所も無いしね、僕は、もう、この世界に興味が無い」


 ニコリと笑う浴衣の青年は悲しそうに笑った。

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