第60話 その名はユーラシア

「行かなきゃならないのよね~」

 プリンセス天功が、あからさまに嫌な顔をした。

 荷車を置いて、砂浜を歩く。

 エドモンドはオヤジとプリンセス天功に足を持たれて引きずられている。

「いやぁ~待ってたよ、迎えに行けって言われたけど、いつ来るのか聞いてなくてね、2日待ったね実際、アハハハハハ」

 日焼けした肌、不自然に白い歯、そして腰ミノ。

「怪しい出で立ちですな~信用できなさそうでさぁ」

(アンタが言う?)

 胡散臭さは、オヤジとタメ線レベルだとプリンセス天功は思った。

「ようこそ、我が領域へ、英語の方がいい?ウェルカム トゥ マイ テリトリー」

「ウッセェ!! 変態!!」

 B・Bが怒鳴る。

「変態って…僕は由緒正しき血統の…」

「黙れって言ってんだよ、腰ミノバカ!!」

「この腰ミノはなー、先祖代々受け継いだ正当なる後継者の証で、ブフォワラァー」

 B・Bが砂浜から一足飛びで海面の腰ミノに飛び膝を食らわせる。

 バシャーンと海に沈む腰ミノ。

 スタッと海面に立つB・B

 足元をジッと見つめ、一言

「なんじゃこりゃ?」

 銀色のナニカ…見覚えのあるような色、

「UFO?」

「レプリカじゃなさそうですよB・B」

 HALが砂浜からB・Bへ話しかける。

 2mほど下で沈んだままの腰ミノを眺めてB・Bは思った。

(ただの変態じゃないとしたら…この変態は誰なんだ?由緒正しき変態じゃなかったのか…)


 意識不明者2名となってしまった御一行。

「まさか出迎えを瞬殺するとはね…」

 プリンセス天功が呆れる。

「まだ少年じゃねぇんですかい、この御仁」

「早まったか」

 少し後悔しているB・B話くらい聞くべきであったが、イライラの頂点だったのだ。

「B・Bやはり、これはオリジナルのようです」

 腰ミノが乗っていた乗り物を調べていたHALがB・Bに声を掛ける。

 乗り物は1人乗り、4mほどのカメに似た潜水艦のような乗り物。

「なんで迎えに来て、1人乗りなのよ?」

 プリンセス天功が最もなことを言う。

「まったくね、やはり早めに倒して正解だったんじゃないかしら」

 B・Bが自らの行動を正当化しようとする。

「にしても早まったんじゃねぇでやすか?」

 オヤジが砂浜に寝っ転がっている腰ミノを指さす。

「生きてます」

 HALが問題ないとばかりに事務的な報告をする。

「そりゃ~良かった」

 プリンセス天功がわざとらしく天を仰ぐ。


 その夜、砂浜でキャンプファイヤーになってしまった。

 意識不明の2名を荷車に放置したまま、若干静かめなバーベキューは会話少な目で進められていた。

「カニですな…」

「またカニね」

「カニ嫌いになりそうーーーー!!」

 B・Bが月に向かって吠えた頃、海面が不自然に盛り上がる。

 ピンクやブルーのライトが瞬き、辺りが明るくなる。

「なにアレ?」

 プリンセス天功がカニみそを甲羅ですすりながら呟く

「アレじゃねえでやすか、パラパパパー♪みたいな音楽でコンタクトとるホラ、前に映像で観たヤツ」

 B・Bが無表情で、カニの甲羅を箸でコンコココ♪と叩いてみせる。

「すると、向こうからも音で返してくるんでやすよ」


「お迎えにあがりました、ユーラシア様」

「メッチャ、喋ってきたじゃない」

 プリンセス天功がオヤジをキッと睨む。

「ユーラシアっ誰ですかい?」

「決まってるじゃない、アタシ達の誰でも無ければ、アレよ」

 海面に停泊している派手な電飾のバカデカい乗り物を見たまま親指で後方の荷車を差すB・B。

「ダンナ…」

「じゃないほうよバカ」


 シュッと音がして、派手な乗り物から降りてきた、腰ミノーズ数名、

(皆、ああなのかしら?)

 プリンセス天功が少し怪訝な表情をする。

「ユーラシア様!!」

 荷車で伸びている腰ミノ(ユーラシア)に駆け寄る腰ミノーズ、

「気を失っておられる、すぐにアトランティスにお運びせねば、あなた方も早くコチラへ」

 腰ミノーズに促されるまま、派手な乗り物の中へ入る御一行、すでに警戒とか無意味だと悟っているのか、ハナから無いのか…。

「ユーラシア様、御一人で迎えに行くと申されたのですが、あまりに遅いので様子を見に来れば、この有様…なにがあったのでございましょう?」

 腰ミノーズの女性に尋ねられたプリンセス天功、

「それは、このチッコイのが…」

「襲われたところをユーラシアさんに助けられて、その時に…」

 プリンセス天功を抑え、B・Bが口を挟んでくる。

「正義感の強いお方ですから…弱いのに…昔もカメを助けられたとかナントカ…」

「はぁ~…カメを…ねぇ~」


「あの、何処に向かっているんでしょうか?」

「ん?聞いてませんでしたか?ユーラシア様から?」

「はい、ご覧の有様ですから」

「アトランティスです、ジャポンでは『竜宮』とも言われる海底都市です、なんでも最初に発見した御仁が at land thisここで?これ?!! と叫んだことから始まったとか…何とか」


「アトランティス!!」

 HALが何か説明したくてウズウズしているが、B・Bが唇に人差し指を当ててソレを制した。

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