第30話 見た目は幼女、中身は…
さっぱりとした四角い部屋。
四方はガラス張りになっており、乗り物にしては、やたらと解放感がある。
外側からはガラス張りになっていなかったので、マジックミラーかモニターか…。
まぁ…エドモンドもオヤジもそんなことは気にならないようで…
「殺風景な部屋ですな~」
「なにもないな…」
「乗ってみると、結構、高いんですな~」
「あー、しばらくここで暮らすのかー」
「はっ!ダンナ、荷物を運び込まにゃ~なりませんな」
「うむ…ベッドは無理かな~布団だな」
「トラックから適当に運んでおきやす」
「頼む、俺は、そこら辺から適当に入用な物を探して来よう」
起動準備に転がり回っているHALとは別の次元で忙しそうな2人。
一旦、『UFOレプリカ』から出て、基地内を歩き回るエドモンド、電動のカートを見つけて乗り回しながら、適当に旅に必要と思われるものを荷台に積みこんでいく。
保存食、寝袋、着替え…さすが軍の格納庫だけあって当面、必要な物に困ることは無い。
ボチボチ積み込んで、戻ろうかと思っていたところで、銀色のカプセルを見つけた。
(変わった冷蔵庫だな~)
とタッチパネルを適当に操作していると、0~9までの数字が並んだ画面に切り替わった。
ちょっと考えて…389625007と打ち込んだ。
(懐かしい…軍の認識番号だ…)
プシュッと音がして冷蔵庫の上部が開く。
中には裸の女の子が横たわっている。
機械音声で周囲にコールドスリープ解除のアナウンスが流れる。
エドモンドは思った…。
(ヤバいことした…)
そして、ソレは当たっていたのである。
事態が動き出すまでキッカリ3分、タイマーがカウントしていたのだから間違いない。
チーンという聴き覚えのある音と共に、冷蔵庫から起き上がった眠そうに幼女が伸びをする…。
「おい…私の肢体に見惚れてないで、とりあえず服だ!認識番号389625007」
「えっ?」
「服だ! ホントにロリコンかオマエ…ひくわ~」
「えっ?はい!」
カートの荷台をゴソゴソ漁り、10歳くらいの彼女が着れそうな服を探す…あるわきゃない。
いつの間にか、一緒に漁っている幼女。
「はぁ~とりあえずコレでいいわ」
軍服の上着を羽織る。
「認識番号389625007…私を起こしたんだ…なにがあったんだ?」
「いや…なに?ってほどのことでもないのだが…ジャポンへ行くついでというか…冷蔵庫を開けたら居たと言うか…」
「ジャポン?日本か?そうか、日本へ行くのか…それでね…うん、そうか、よし行こう」
なんか独りで勝手に納得したようだ。
「認識番号389625007! カロリーフレンド! フルーツ味な!」
「俺は…すでに…エドモンドだ…俺の名はエドモンドだ、認識番号で呼ばないでくれ」
「エドモンド…と呼べばいいのか?…まぁ認識番号よりは呼びやすいからソレでいいや」
『UFOレプリカ』に戻り、荷台から荷物を運ぶエドモンド。
コクピットに戻るとオヤジが昼寝していた。
イラッとして、脇腹を軽く蹴って起こすエドモンド。
「ンガッ…構いやしやせん! 売りつけましょう!…んぁ、ダンナ!お帰りなさいやせ」
なんの夢を見ていたのか…ロクな夢ではなさそうだが…。
「エドモンド!ジュース!」
エドモンドの後ろからダボダボした軍服の袖をブラブラさせて歩いてくる幼女。
「ん?どちらさんで?」
「まぁ…保護したというか…解凍したというか…とりあえず、ジャポンへ送ることになってしまった」
そう…ここまで戻る道中で色々話は聞いたのだが…まぁ8割がた理解できなかったのだ。
理解したのは、凍っていたところを解凍したということ、ジャポンに用事があるということだけだ。
「そろそろ発進しますが…マスター…ゲッ…B・B…」
「あらっ?HAL?お久しぶりね」
「知り合いか?」
「マスター!B・Bを起動させたんですか! なんでも起動させればいいってもんじゃないんですよ」
「すいません…」
エドモンド…怪しげなものを奇跡の様な確率で起動させる男…。
起動させたモノにキレられる男。
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