第31話 動く機密事項

(B・B…と言うのか…ビービー…変な名前だ…)

 もっと変な事は、色々あるのだが…もとより、そういうことに高い順応力を持つエドモンドである、大目に見てあげたい。

「HAL、あなたが日本へ…へぇー…ふーん…興味あるわね~」

 B・Bの大きな瞳が疑わしげに繁々とHALを眺める。

「B・B、アナタが日本へ行くことには賛成できませんが」

 HALも奥歯にモノの挟まった言い方で返す。

「まぁ…いいんじゃない…目的は違えど、目指す場所は同じでしょ…旅を楽しみましょうよHAL」

「旅を楽しむですか…そんな余裕は無いように思いますが…アナタがソレを望むなら空路ではなく海路でもいいんですが」

「あらっ!それは楽しそうね、そうしましょうよ」

 2人(幼女とボール)の間にピリピリとした空気が張り詰めていく…。

 しかし…エドモンドも、オヤジも、まったくそういうことを気にしないである。

 これはもはや長所といえよう。

「ダンナ…ところでコチラさんも一緒に行くんでやすか?」

「そのようだ…」

「ちっさいのに勇気がありやすな~感心しやした」

(確かに…ちっこい…)

 金髪…緑の目…見た目は幼女なんだが…なぜだろう、変な威圧感というか圧迫感というか…。

(ハッ!これがフォースとやらであろうか?)

 頭上に表れた緑色の爺さんが囁く…。

(エドモンド…それはフォースではないが…暗黒面に魅せられぬようにな…フォースは常にお主と共にある…)

 幻聴だろうか…。

「…ンナ…ダンナ…」

「ん?なんだ」

「大丈夫ですか?ボーッとしてましたが」

「時折…緑の爺さんが語りかけてくるんだ…ホースがなんとか」

「あ~ダンナ…重傷でさぁ~…安心くだせェ!コレを飲めば一発で治ります」

 オヤジが唐草模様の緑色の風呂敷から茶色い瓶入りの錠剤を取り出す。

『セイロ丸』と日本語で書かれているのだがエドモンドは読めない。

「コイツはジャポンの万能薬で虫歯から水虫まで、つまり頭からつま先まで効用が見込める薬でさぁ!」

「ホントか!幻聴も幻覚も治るか?」

「ウソか真か…千切れた腕も生えて来たとか…こないとか…」

「いくらだ!オヤジ」

「ヘイ、毎度!3万円になりやす!」


「マスター…それは整腸剤です…下痢には効果的ですが…マスターの症状には効用は望めません…」

「オヤジ!」

「………間違いやした…コッチでした」

 取り出したのは『バッファリソ』

「なんと…こちらは旧ジャポンのオーバーテクノロジーで、半分はやさしさで出来ているらしいんでさぁ」

「……どうゆうことだ?やさしさで出来ているって?」

「そこがオーバーテクノロジーと言われる所以ゆえんでしてね…」

「で?」

「へぇ…説明できません…ですが、首から上の症状には抜群の効果が期待できますぜ」

「いくらだ!オヤジ」

「毎度!お得意様価格8000円になりやす!」

「……まぁ…あながち間違いではないですよ…マスター…」

「ホントか!オヤジ、3箱貰おうか」

「毎度アリ! 24000円と…サービスの風船5個…3万円で…おつりは6000円ですが…1000円で一緒に飲むと効果が倍率ドン!のエナジードリンクを2本お付けしやすが、いかがです?」

「この際だ、いただこう」


 炭酸濃いめのエナジードリンクで薬を飲んで…『UFOレプリカ』で揺られること3時間。

 飛べば、日本へ着いているのだが…B・Bの提案わがままで海すら見えない。

 それこそオーバーテクノロジーで音も無く地表2mを飛行中である。


「ところで…HAL、彼女はB・Bと言うのか?」

「通称というか呼称でしょうか…彼女に名前などありません。BLACK BOX理解できない者という意味でB・Bと呼ばれていました」


BLACK BOX理解できない者…なるほど…腹が黒いということか…なんか納得だ」

「腹黒くないわよワタシ」

 いつの間にか後ろに立っていたB・B。

 その手にはジャポンのペーパーウェポン『ハリセン』が握られている。

 スパーン!

 良い音で、はたかれるエドモンドであった。

「コレ、オヤジから買ったの、なんか、どんな無法者もコレで叩くと大人しくなる呪いの紙で作られているんだって!」


 もはやHALは何も言わずに航行に集中することにしたのであった。

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