一緒に世界史を勉強しよう!英仏百年戦争編

まめたろう

第1話 百年戦争とは何か

 百年戦争とは何か、その答えは、私たちがなぜ百年戦争に心を惹かれるかというといの答えと同じかもしれません。

 定義的にいえば百年戦争とは、①フランスのヴァロワ朝と②イングランドのプランタジネット朝およびランカスター朝が③1337年から1453年にかけて約100年間④フランス王国の王位継承をめぐって争った外交状況ということができます。


  《簡単な注釈》

  世界史を履修していない方は百年戦争ってイギリスとフランスの戦争じゃ ないのと疑問に思うかもしれません。しかし、イングランドを含む4つの国が連合王国ユナイテッド・キングダムとなるのはずっと後の時代です。特にイングランドとスコットランドは百年戦争期にも争っていました。

  《ここまで》


 うーん、どこから手を付けていいかわかりませんね。

 まず注目したいのが、百年戦争終結の年、西暦『1453年』という年号です。

 意外なとこから攻めてきたと思いましたか?

 それとも当然のことだろうと納得でしょうか。

 この年の5月29日にはオスマン帝国によってコンスタンティノープルが陥落。東ローマ帝国が滅亡しています。

 そして10月19日にはボルドーが陥落。百年戦争が事実上終結します。

 そう、一般的にはこの2大イベントが起こった1453年をもって『ヨーロッパの中世』が終わるとされているのです。

 『ヨーロッパの中世』については第2話で詳しくお話ししますが、その始期は、西暦476年の西ローマ帝国滅亡とされています。ですから、977年間にも及ぶひとつの時代の終焉に位置するのが百年戦争なのです。


 百年戦争とは、『中世の終焉』を飾る一大イベントである。

 これがとっても大事なポイントなのです。

 異世界ファンタジーの源流が、ヨーロッパの中世にあることはよく知られていますが、中世と近代の違いを学ぶには百年戦争はいい教科書になるといえるわけです。


 両当事者であるヴァロワ朝とプランタジネット朝については第3話と第4話でお話ししますのでここでは詳しく述べません。

 重要なのは百年戦争によって、フランスとイングランド両国で封建領主が没落し、相対的に国王の力が増し絶対王政へと進むきっかけとなったことがあります。

 封建社会が崩壊して、近代的な主権国家というものが生まれていくきっかけになったわけです。


 中世といえば封建社会。国王ー諸侯-諸侯ー領民という重層的な人間関係によって社会が作られていた時代です。

 国王と諸侯(貴族)は主君と臣下という関係をとり、また諸侯はより格下の諸侯と

主君と臣下という関係をとります。ここで大事なのは『臣下の臣下は臣下ではない』ということですね。

 まだまだ巨大な国家というメカニズムは生まれておらず、個々の人間関係が集まって社会を生みだしていた時代なのです。

 それが近代になり、国王を中心とした主権国家というものに生まれ変わっていくのですね。


 軍事面でも変化がありました。

 封建領主の没落とは即ち騎士による戦争の終わりということになりますが、政治面だけでなく戦術面でも騎士(重装騎兵)の時代は終わりました。

 百年戦争中のクレーシーの戦い、アジャンクールの戦いを通じ、時代は歩兵を主力とした大規模戦闘の時代へと移ります。

 中世最後の騎士と呼ばれたマクシミリアン1世が生まれたのが1459年。

 その彼は、ランツクネヒト(ドイツ人傭兵)を創設するのでした。

 すでにこの時代、騎士という存在はかなりロマン的なものになりつつあり、戦争という合理性の中で着実に成長していった歩兵に敗れさるのは歴史的必然だったのでしょう。


  《簡単な注釈》

 1419年に始まったフス戦争ではハンドカノンが実戦投入され、ヨーロッパ史上初の火器を使った戦いになっています。

 銃の登場が重装騎兵というスタイルを終わらせたという意見もありますが、主権国家の発達の中で、歩兵を大量にかつ高い練度で用いることができるようになったことで、高コストな重装騎兵というものの役割が限定的になったといった方が正しいのかなぁと私は思います。

 百年戦争では、大砲が用いられていますが、まだまだ威嚇目的に留まっていたようです。ヨーロッパで火器の重要性が注目されるのは1494年から始まるイタリア戦争だと言われています。

 また、オスマン帝国のイェニチェリ軍団はマスケット銃で武装し、大きな成果を上げています。

  《ここまで》


 最後に、百年戦争の有名人と言えば?

  イングランド代表はエドワード黒太子

  フランス代表はジャンヌ・ダルク

   といったところでしょうか。

  ちょっとマイナーな所では(でも漫画の主人公にもなった)ジョン・ホークウッドかな。









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