彼女は本当に俺のことが嫌いなのだろうか。
青見銀縁
第1話 嫌いと告白され、俺はどうすればいいのか。
「わたし、あなたのことが嫌いだから」
高校一年のクラスメイト、高塚志乃は、俺の方を睨みつけるなり、淡々と口にした。
一方、体育館裏に呼ばれた俺からしてみれば、どう切り返せばいいか戸惑った。
「あのさ、それは俺にどういう反応をしてほしいんだ?」
「今のはただ単に、事実を言っただけよ」
高塚は言うと、背中まで伸ばした艶のある黒髪をなびかせた。背は女子で高い方で、細長い足は目にするだけできれいだ。大人びた顔立ちも合わさって、さすが、クラス委員長で男女に人気があるだけある。
「俺、高塚に何か悪いことでも言ったのか?」
「あなたの言うことすべてが、わたしにとって、悪いことになるわね」
「それは、ひどすぎだろ」
「ひどくはないわ。ひどいのは八坂友則くん。あなたの方よ」
高塚は鋭い視線を移す。どうやら俺は、いつの間にか高塚の中で、相当なひどい奴となっているらしい。
俺は頭を掻き、どうしようかと悩む。
「何だかわからないけどさ、とりあえず、謝るからさ」
俺は頭を下げた。
「謝って済むのなら、わざわざあなたを呼び出す必要はないわ」
「そこまで俺はひどいことをしたのかよ?」
「あなたのすることなすことすべてが、わたしにとって、ひどいことね」
「そこまで言われるとさ、俺はもう、死ねって言われてるようなもんだな」
「そうね。死ねばいいと思うわ」
「そこまで、ダイレクトに言わなくてもさ……」
もはや、俺には情状酌量の余地はないらしかった。
「というわけで、今後はわたしの視界から現れないことね」
「待て待て。それはけっこう酷だろ。同じクラスだし、何かしらでっていうよりさ、クラス委員長なんだからさ、教壇に立って、何か決めごとをしてる時に、自然と俺が座る席に視界が入るだろ?」
「その時は、あなたが何とかすることね」
「無茶苦茶だろ」
「無茶苦茶じゃないわ。それをしてもらうぐらいに、わたしはあなたのことが嫌いで、ひどいことをされたと思ってるのだから」
「もう、何を言っても無駄みたいだな」
俺はため息をついた。俺はそこまで、高塚から嫌われるようなことをしたのだろうか。考えてみるも、心当たりがない。むしろ、高塚とは普段、あまり関わらない。取り分け、仲がいいわけでもなく、言うならば、単なるクラスメイトだ。
高塚は背を向けると、さっさと立ち去ろうとする。
「おい、高塚」
「言っとくけど、話しかけることも、今後はなしだから」
「マジかよ」
「マジよ」
高塚は言うと、場からいなくなってしまった。
取り残された俺は、肩の力が抜け、ぼんやりと高塚がいなくなった正面を見ていた。
「もう、あれか。嫌われたとあきらめて、割り切るしかないか」
俺は意を決してみようとするも、なかなかできそうになかった。
クラスから人気がある高塚に嫌われたショックは、簡単に拭えそうになかった。
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