高雄阿婆仔冰菓店

 かき氷が食べたくて食べたくて堪らない私達は、フェリーで西子港に戻ってきて、すぐにタクシーに飛び乗った。だが、そこから走り出して5mも行かないところに、氷屋さんが並んでいるの発見……orz 


 なんだよ~~!!こっちに戻ってくれば、氷屋さんたくさんあったのかよ~~!!あぁもう、タクシー代損した!!知らないっていう事はこういう事だよ!何でも損しまくりだよ!!と憤っている私に、パパ吉は「本に載ってるくらいだから、きっとすごい美味しい氷屋さんだよ。雑誌がお勧めしてるかき氷、俺は食べたいよ」と慰めてくれた。優しい……やさぐれた私の心に沁みましたよ……(ほろり)


 そしてタクシーに連れて行ってもらったのが、どの雑誌でも紹介されている「高雄阿婆仔冰菓店」


 「阿婆」というのは「おばあさん」という意味だけど、やたらとこの「おばあさんなんたら店」という店の名前が多いのは何でだろう……。


 お店の中にはずらりとメニューが掛けてあって、ずっと「台湾でかき氷が食べたい」と楽しみにしていた私たちの期待を、いやが上にも盛り上げてくれる。

 何を頼もうか色々悩んだのだが、盛りが大分多いので、1人1皿にしたら絶対おなか壊すなと、3品注文することにする。


 たぬ吉がが選んだのが「巧克力香草牛奶冰」(巧克力はチョクリー=チョコレートで、牛奶はニュウナイ=牛乳のこと)35元(約105円)。


 ぢぞ吉がの頼んだのは「超人気水果冰(超人気フルーツ・フルーツは季節で変わる)」50元(約150円)。


 パパ吉が頼んだのは「四果冰(4種類のフルーツ)」40元(約120円)。


 この四果冰、雑誌に「スターフルーツのシロップ漬けなど、ここでしか食べられないおいしさ」と紹介されていたので、パパ吉は「スターフルーツのどれかなぁ」と探して注文していたのだが、やって来たスターフルーツは茶色い……。


 あれ?スターフルーツって普通黄緑だよね……?なんか、茶色って……漬かりすぎてない?という一抹の不安を覚えながら口に入れてみると。



 何じゃこりゃ~~~~!!!!!



 なんかね、なんか、四果冰の上に、茶色っぽい塊が乗っかってたのだけれど、これなんだろうと口に入れてみたら、梅ジャムっぽいの!!しかもこの梅ジャム、乾燥梅の甘い奴を、お出汁で溶いたような、甘くて酸っぱくて出汁くさくて、なんかすごい独特な、何とも言えない味をしているのよ!!!


 しかも、この梅ジャムがシロップに溶け込んで、全ての氷、全てのフルーツがこの味に!!もちろんパパ吉が楽しみにしていたスターフルーツもこの味に!!!


 ……いや、いや、周りを見渡すと、この梅ジャムだけの氷を食べている人もいるほどで、台湾の人はこいつが好きみたいだよ……。梅ジャムの素みたいのも問屋街で見たしね……。


 ……でも……でも日本人の口には取りあえず合わないのでは……。えと、怖い物見たさの方と、罰ゲーム以外の方は、チョイスしない方がよろしいかと……orz


 ちなみに、息子のチョコレートはベタ~っとしていて、あまりかき氷には合っていないような……。でも娘の超人気フルーツは、パイナップルとキウイの味がシロップに混ざって美味しかった!!


 ただしそれを食べたパパ吉は「え~?甘い?全く味がしないんだけど……」と……。

「いや、それ梅ジャムのせいで舌がバカになってるんじゃない?」

 という私の台詞にパパ吉は1人で納得し、大受けしていました。


 ……タクってまで来た、どの雑誌にも載っている有名かき氷屋で、超お勧めのかき氷が舌をバカにするほどの梅ジャム……。正直、息子なんて「美味しいかき氷屋さんがでかき氷が食べたい!」という一念で「台湾に行きたい!」と言っていたほどなのに、この仕打ち……。うぅう、興味と勇気のある方はぜひお召し上がり下さい。



 この後、朝閉まっていた74景観台にタクって行こうということになったのだが、タクに乗るなりぢぞ吉が「タマゴッチを忘れてきた!」と。


「旗津区に忘れたんだったら、もう戻らないよ!」

「違う!氷屋さんでいじったから、あそこで忘れたんだ!」


 慌てる車内の様子を察した運ちゃんがお店に戻ってくれたら、机にはタマゴッチは見あたらず。娘には「そんなの、他の人が持って帰っちゃったかもしれないよ?パクられてたら諦めるんだよ?」と言ってあるので、半ば諦め気味にお店の人に「有没有小孩的玩具?(子供のオモチャありますか?)」と、こういうときに使って良いんだか悪いんだから分からないような適当中国語を書いて見せてみたら。


 おじさんが笑顔で「有、有」とタマゴッチを出してきてくれたのだ!


 ちゃんと取っておいてくれたらしい!!すごい!!これ、よそのアジアの国だったら、大抵パクられて終わりだよ!?台湾人、良い人だ~~~!!!本当にありがとうとお礼を言いまくり、無事タクシーに戻ったのだった。

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