戦隊イエローという微妙なポジションになっちゃったら

ふぁち

第1話 プロローグ

「ごめんなさい……今は、そういうの考えられないの」


――振られました。


 告白して振られました。

 こんな時、どんな顔したらいいか分からないの。

 笑えばいいと思うよ――笑えねぇ……。

「あはは……だよね~。ごめんね、変な事言って」

 告白した者の社会的序列は底辺です。

 まずは謝っておきましょう。

 彼女は気まずそうな上目遣いで俺をじっと見る。

 沈黙で出来た僅かな間が、さながら時が止まったかのような錯覚を起こす。

 少し俯いた彼女は、大きな瞳がさらに大きく見えた。

 白い肌と黒い髪、見目麗しい姿。

 入学した時に一目惚れして、毎日その姿を目で追っていた彼女。

 告白前より、俺の心臓の鼓動は激しさを増していた。

 しかしそれはトキメキではない。

 恐怖と不安と絶望と……あらゆる負の感情が心を支配していく。

 鼓動が増すごとに、何故か臀部が熱くなってきた。

 俺の体、どうなってんの?

 いや、今考えなければならないことはもっと別のこと。

 同じクラスの子に告白して振られた場合、教室内での自分の立ち位置が大きく変わるということ。

 女子のコミュニティの情報伝達速度は異常です。

 明日どんな噂を立てられるか、考えただけで恐ろしい……。

 小雨が降り始めた、人気の無い学校の裏庭。

 あと二年、俺を振った子と同じクラスか……。

 俺は何故告白なんてしてしまったんだろう?

 容姿平凡、頭脳並。

 運動神経?聞いた事無い単語だな。

 翌々考えてみれば告白する前から社会序列底辺だったわ。

「じゃあ、私もう行くね」

 俺は放心状態で、そのまま彼女が歩いて行くのを見送った。


 彼女がこの場を立ち去ると一陣の風が吹き抜けた。

 暖かくなって来た筈なのに、その風に撫でられた俺の心は寒さに震えた。

 と、突然後ろで爆発音が鳴り、物理的な衝撃が突き抜ける。

 俺が驚いて振り向くと、赤を基調として白のラインで彩られた服を来た男らしき人と、同様にピンクに白ラインの服を着た女らしき人が立っていた。

 らしき人と言ったのは、二人ともヘルメットを被っていた為に顔を判別出来なかったので、体格から恐らくそうであろうと判断したからだ。

 その二人の視線の先を追うと、昆虫が巨大化したような背丈2メートル程の怪人が立っていた。

 先程の爆発は彼等の仕業だろうか?

「止めだ!ピンク!」

「はい!」

 赤い人とピンクの人が手を繋いだ。

「ファイナルフラッシュ!」

 怪人にむかってその繋いだ手を突き出すと、その先から閃光がほとばしり怪人の体を貫いた。

 怪人は断末魔をあげながら塵となって消え去った。

 怪人を倒した二人はチラっとこちらを見た気がしたが、すぐにどこかへ消えた。


 その二人を見た時に俺が思ったのは、怪人と戦っている人がこの学校にいる――ではなく、あれがリア充か……である。

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