37話
ものすごく時間がゆっくりに感じた
どれだけの間悠人と悠人にしがみつく女を見つめていただろうか
陽平くんに顔の前で「おーい」と手を振られて
ようやくハッとした
「りかちゃん大丈夫?俺のこと見えてる?」
と陽平くんに言われて「あ、うん」
と視線を陽平くんに向けたがまた直ぐに2人に戻す
麻里が悠人に近づいていく
「え、ちょっ麻里!」
私の声は届かず
ズカズカと歩いて行き2人の前で立ち止まり「悠人久しぶり!誰?この女」と笑顔でそう言った
なんだかすごく怖い笑顔で
目が全然笑ってなかった
雰囲気に気づいた安井くんが入ってきて
「こいつは俺らの幼馴染で1つ下の学年なんだ」と説明してくれた
「ふーん」腕を組みながら今度は真顔でその幼馴染の女子を見下ろす麻里
その様子をずっと離れて見ていると悠人と目があう
悠人は女の子の腕を自分の腕から離し
私の方に来る
「あっ」
と寂しそうに悠人を見つめる女の子を見ると
彼女も悠人の事が好きなんだなって
なんとなくそう感じた
悠人は私の腕を掴みそのまま歩き出す
「え、ちょっ、どこ行くの?」
いきなりのことに戸惑いながらも引っ張られるままに歩く
ようやく立ち止まったかと思うと校舎の裏側だった
「どーしたの?こんなとこ来て?」
私がそう聞くと
校舎の壁にもたれながら「なんとなく」と答える
2人っきりになりたかったから
とかそーゆーセリフを期待していた私は
ちょっとガッカリする
「午後は自由時間だけ?」
と聞かれ私が頷くと
「じゃー一緒にまわろう」
と私の腕ではなく手を握って歩き出す
グランドをブラブラする
「私のクラスのクレープ行こう!」
と言うと「案内して」と言われたのであっち!と指をさすと「雑っ」と笑われた
2人でクレープ片手に6組の写真館に行って写真を撮ってもらったり、お化け屋敷に行ったり
すごく充実した時間を過ごせた
ただずっと気になっていたのは
幼馴染の女の子の事
2回の廊下の窓からグランドを見ながら風を浴びる
「楽しかったね〜」
「うん。俺らの文化祭も来て欲しかった」
「いつやるの?」
「来週の土日」
確か来週の土日は予定は無かったはず
「行きたい!」
私が悠人の方を見てそう言うと
「他校は立ち入り禁止なんだ」
と残念そうに言う
すごく行きたかった
こっそり入れないかなー
なんて悪い事考えてたら
「あ!居た!」
と可愛い声が聞こえた
声の聞こえた方に顔を向けると
こっちに、あの幼馴染の女が走ってくる
その後ろには麻里や優希、安井くんや快くん、陽平くんも居た
「もー置いてかないでよー!」
とほっぺたを膨らませて可愛く言う幼馴染の女
「置いてったもなにも、お前とまわるなんて言ってねーだろ」
悠人が呆れたようにそう言うと
彼女は私に視線を移し
「初めまして!1年5組の
麻里は随分ご機嫌斜めな顔をしている
「初めまして、奈々瀬 リカです」
あれ、なんで私後輩に敬語使ってんだろうなんて思いながらも差し出された手を握る
彼女の笑顔からは考えられないくらいの力で握られる
手の骨がギシギシ音を立てる
「いっ」
慌てて手を離す
なんなのこの子!?
すると私にしか聞こえない声で
「そこまで可愛くもねーくせに調子乗んなよブス」と低い声でそう言った
「な!?あんたね!先輩に向かってその態度なんなの!?」
私が怒鳴ると怯えたように方をすくめる
「りか」
後ろから悠人に名前を呼ばれてゆっくり振り向く
「それくらいにしといてやれ」
なに、なんなの
悠人はこいつの見方をするわけ?
ありえない
彼女は私でしょ!
きっと今の私は怒りに満ちた目をしているだろう
いきなり優希に手を掴まれ引っ張られる
麻里と3人で外に出てグランドの隅に行く
「まじありえないよねあの女」
麻里が低い声でそう言った
「てか、なに?安井くん達さみんなしてあの女の見方ですって感じの雰囲気でさ、なんかすごいイラついた」
優希も不満を吐き出す
「なんかショック。悠人がよく分からない」
さっきまでの怒りが悲しみに変わり
ため息しか出てこない
その日は3人で最悪な雰囲気のまま帰った
明日は南高際2日目で
基本的に体育館で先輩達の劇やバント、ダンスなどを見る
もちろん明日も一般の人は見に来ることができる
来ないことを願いながら眠りについた
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