なんとなく設定思いついて書いたけどオチつかなくて投げ出した短編

東利音(たまにエタらない ☆彡

第1話にして最終話


「あの……先輩……」


 気弱そうなおさげ髪の少女が俺の目の前に立ちはだかる。まあ立ちはだかるというのは大げさで、進路を塞ぐわけでもなく、俺の進行方向のななめ30°ぐらいから声をかけてきたのだが。


「えっと……たしか一年の……」


「一年A組の保下……ほなみです」


「で、? なんか用?」


 用があるから声をかけてきたのだろうが、俺は冷たく言い放つ。そのほうがお互いにダメージが少ないからだ。


「あの……付き合」「ごめん無理」


 俺は嫁にしたら尽くしてくれそうな後輩に、にべもない言葉を放ち、その場を後にする。


「今日何回目?」


 その様子を見ていたのだろう。クラスメイトの亜由美が俺に追いついて聞いてきた。


「数えてないけど、まあ5~6回目だな」


「相変わらずすごいペースだね。この分じゃ来月あたりに新入生全員から告白されるんじゃない?」


 亜由美が関心するでもなく、どちらかというと呆れた風に問いかける。


「新入生からの告白はさすがに減ってきたからな。同級生も去年の先輩、二年、三年も全員告白してきたってわけじゃないし」


「それはあれだよ。あんだけフリまくってたら怖くて告白できないって」


 亜由美の言うとおりだろう。俺に告白してきた女子のほとんどは未だに俺を憧れや愛おしさなどの籠った目で見てくる。中には諦めて他の彼氏を作ったのもいるがどちらかというと少数派。

 半数は俺に振られ、残り半数は想いを告げることなく俺に想いを抱き続けているのだ。


「罪作りな人間だよね」


「そういうお前はどうなんだよ?」


「だから前から言ってるじゃん。好きだし付き合いたいし、だけどどうせふられるんでしょ?」


「ああ、間違いなくな」


「だったら告白なんかして変な空気になるより友達でいれたほうがずっといいもん」


「そういうもんか?」


「そういうもんだよ。あずさだって、かえでだってそうでしょ」


「まあ……な」


 三回会えば惚れられる。そんな特異体質のせいで俺は男友達が少ない。

 男友達と街を歩いていてもしょっちゅう声をかけられるのだ。一緒に遊んでいて楽しいわけがない。

 それでも惚れた弱みで俺の相手をしてくれる亜由美のような存在が俺をぼっちでいなくしてくれている。


 三回会えば……といったが正確にはそうでもないらしい。

 いわゆる一目ぼれられ体質。

 ある特定の『共通点』を持った女性達は俺を見るとビビっと来てしまうそうだ。

 積極的な女性はその瞬間に告白してくる。

 さすがにそんなタイプはごくごく少数派だが。

 それでも二度目に会えば俺への想いが勘違いでなかったことを確信し、三度目ぐらいになるともう気持ちが抑えきれなくなって告白……ということになる……らしい。

 これは亜由美やら、かえでやらの実際に俺に惚れつつ告白を思いとどまっている当事者に聞いた話だからある程度の信ぴょう性はあるのだろう。


 そんなわけで、俺はしょっちゅう告白される。その中には男友達が好きだった女子も当然含まれる。それも俺に友達が少ない理由のひとつでもある。

 好きな女子を振った男とはなかなか付き合いづらいのである。


 

 そんな告白されてはあっさり振り……という人生を送ってきた俺だが、これまで付き合った女子がいないかというとそうでもない。

 小学校の低学年くらいの間は俺にも好きな女の子が居た。その子が告白してくると当然OKする。しかし長続きしない。

 親父の妨害が入るのだ。あの子と付き合うのはよせと。

 幼い頃は意味がわからず無視していたが。


 年を重ねて同じの言葉の真意を理解してからは俺は女に興味がなくなった。


 親父はこう宣言する。


「俺は最盛期は一日に7~8人の女性の相手ができた」


 微妙に相手とかぼかしているがまあ言ってしまえばあの行為のことだ。


「お前が生れる前後だったかな。20年ぐらいは毎日それを続けた」


「この街のめぼしい女は彼氏持ち、旦那持ち関わらずに俺と……」


 絶倫親父は、一年あたり2000人ほどの子を残した。

 俺のモテ体質はどうやら親父からの遺伝らしい。


 それはいいのだが問題は……。


「お前の今付き合ってる彼女な、やめとけ。お前の妹だ」


 と何度言われたことか。妹だったり姉だったり。


 親父は大金持ちでもあり、シングルマザーにはそれなりの養育費を援助してたり、一夜の相手だった女性も未だに――結婚してたり旦那が居たりするにもかかわらず――親父と連絡を取っていることもあり、親父の残した子供――何故か俺以外は全て女の子――の素性は明らかになっている。


 運命とでもいうのだろうか。今いる高校の女子生徒はなんと全員俺の腹違いの姉か妹だ。

 亜由美をはじめ魅力的な女子は沢山いる、というか何気にうちの高校は平均値が高い。


 なのに、俺の彼女にはなれないという十字架を背負ってしまっている。

 後から調べたら、幼稚園も小学校も、そして中学も女子生徒は全員そうだった。


「あ、あの……」


 OL風の女性に声をかけられる。


「なんですか?」


「あ、あのね、こんなこといきなりでびっくりすると思うんだけど、あの、彼女とかいるのかな?」


 女性は亜由美のほうにちらりと目を向ける。

 女子と一緒に歩いているのに声をかけてくるんだからよっぽどなんだろう。


「いませんよ」


「だったらわたしと」


「名前と生年月日教えてくれませんか?」


「え!? ああ、そうだよね、なのりもせずに……、えっ? 生年月日?」


「ええ、年と月と日付を」


「木下真理子、1993年の10月12日だけど」


 俺はスマホを取り出して、念のためにデータベースにアクセスして検索する。

 学校中の女子が親父の子であるのは既に調べがついている。

 だから街中で突然声をかけられた時のためにコツコツ親父から聞いた情報を元に作った俺専用のサイトだ。

 名前と生年月日を入れれば検索して該当者がいるかどうかがわかる。


「キノシタマリコ……」


 期待はしていなかったが、名前も生年月日も同じ人物が登録されている。


「すいません、付き合えません」


「そっか、そうだよね。いきなりでね」


「行こう、亜由美」


「いいの?」


「ああ」


 俺は頷く。付き合ったところでその先がないのだ。時間の無駄だし、これで俺のことをすっぱり諦めてくれたら相手にとってもよいことなのだ。


「いつかいい人と巡り合えたらいいね」


 そう。たかだか一年で二千人。この国の女性はもっと多い。

 小さな街だからことごとく親父の遺伝子を引いてしまっているだけで。

 大学はもっと都会に行こう。そうすればこの呪縛から逃れられる。


「ただいま」


「ああ、お邪魔してるよ」


 玄関を入るなり廊下から親父が顔を出してくる。


「お邪魔? どういうことだ? 親父?」


「やっぱり見間違うか」


 さらにその後ろから親父が顔を出す。


「親父が……二人?」


「ああ、こいつは俺の兄貴だ。一卵性だから良く似てるだろう」


 良く似てるってもんじゃない。ほとんど一緒だ。


「見分けつかねーよ」


「まあな、体格もほとんど一緒だし、未だに一番似てるって言われるからな」


「一番?」


「知らなかったか? 俺は一卵性双生児ならぬ、六つ子だぞ」


 ああ、そうなんだ。


「お前がな、大学は都会に行きたいっていうからよ。念のためにお前のリストを拡充させとこうと思ってな」


「なんせ、当時は日本中旅をしながら毎日7~8人ぐらいの女を相手してたからなあ」


 俺の叔父にあたる人物がそう告げる。

 まだまだ大丈夫だ。

 たかが、6人。一人が一年当たり2000人の子供を作ってそれが全員女子だったとして一万二千人だ。

 大惨事(←誤字じゃないよ)世界大戦で人口が激減したとはいえ、日本には、まだ1千万人の人口がいるのだ。

 100歳まで均等に存在したとして、同い年は十万人もいるのだ。そのうちの半数が女子だとして5万人もいるのだ。うち一万二千人が姉か妹だとしてもそれ以外にも女子は沢山いるのだ。


 大学のサークルやバイト先で俺の血族以外の女子と巡り合えるだろう。

 それでもだめなら親父ブラザーズの活動範囲外である10才上、あるいは10才年下の女子を狙えばいい。


「ああ、ちなみにな、俺の親父、つまりはおまえのじいちゃんはそりゃあもう絶倫で、俺達に触発されて(中略)だから、年齢的にはお前と同世代だが、実際は腹違いの叔母に当たる人間が……」


 そんなちなみは聞きたくなかた。


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