中途半端に手をつけるのはやめよう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・補足その1
夏子に教えてもらった勉強法を始めて5日が過ぎた。
はじめはホントに大丈夫かと思ったけど、夏子のやり方だと意外とサクサク進むな。3日後の解き直しも、思ったよりも覚えててびっくりだぜ。
で、今日も部屋で夏子と勉強してるわけだけど。
「お前さー」
「ん? なに?」
「いっつもその超難しそうな問題集やってるけど、対策プリントはやんなくていいの?」
「ああ、それなら大丈夫だよ」
夏子がカバンからプリントを取り出す。
「もう何度もやってるし」
「げっ!?」
なんだコイツ、もうプリントにもマルが5つついてるぞ!? 当たり前のように全問正解してるし! しかも、マルの下に書いてある解答時間も超速ええ!
「てか、これ最後の発展問題のプリントじゃねーか!」
「2日前にもう一度やるつもりだけどね」
「まあ、この出来ならやらなくてもいいか……」
てか、このプリントまでたどりつけるのかね、俺。
「俺はいつこのプリントやるの? なんか時間ギリギリそうだけど」
「あ、残念だけど多分今回はこのプリントまで手が回らないんじゃないかなあ」
「え!?」
思わず声を上げる。
「だ、大丈夫なのか、それ!?」
「平気平気。発展問題はいつも20点分くらいしか出ないし。それよりも、秀ちゃんは基本を徹底的に叩きこむことをまず考えてね」
「お、おう」
こいつ、ホント厳しいな。まあ、今やってる問題集も超基本だしな。
「あ、でもお前はいつもさっきの問題集で勉強してるのか?」
「ううん、私も最初はこれでやってるよ」
「おお!」
夏子がカバンから取り出したのは、俺が使ってるのと同じ問題集だった。
「スゲえ、俺夏子と同じ問題集使ってるのか!」
「大げさだよ。だいたいその問題集、私がいつも使ってるから秀ちゃんにすすめたんだし」
「あ、そっか」
それから、ふと疑問を口にする。
「あれ? でも、じゃあ夏子は問題集2つ使ってるのか?」
「ううん、これとさっきの問題集の他に、その間くらいのものも使ってるよ」
「え?」
意外なセリフに、俺はさらに聞く。
「てっきりお前のことだから、問題集は1冊にしろとかいうのかと思ったけど。なんか頭いいヤツがそんな感じのこと言ってたぜ、いろいろ手をつけるのはよくないって」
「それはそれで一理あるんだけどね」
3つの問題集をちゃぶ台に並べて夏子が言う。
「私の場合、正確に言うとまず1冊を完璧に仕上げろってことなんだよね。もっと正確に言うと、単元ごとに仕上げていく感じかな」
「ほう」
「たとえば、この問題集を2次方程式のところまで完璧に終えたら、次はこっちの問題集を完璧にして。で、その後この問題集に進む感じ」
「ふむふむ」
「今の秀ちゃんもそうだよ。試験範囲のところまでその問題集をきっちり仕上げたら、対策プリントに移るんだし。そんな風にある程度のまとまりまでを、完璧にできるように仕上げてくんだ」
「へえ、そうなんだ」
「もちろん、できてもいないのに他のものに手をつけちゃダメだよ? だから秀ちゃんの場合、普段はその1冊をきちんと仕上げることを考えてくれればいいかな」
「おう、わかった」
なるほどな、まずは目の前にあるものをしっかりやれってことか。
「でも、お前ならその一番難しいやつだけで勉強した方が効率的なんじゃないか? どうせ他の2つなんてすぐに終わるんだろ?」
「ダメダメ、最初は絶対に、これなら必ずできそうってものから始めないと。それに、すぐに終わるんだったらわざわざ省く必要もないでしょ?」
「ま、言われてみりゃそっか」
「そういうこと。何ごとも積み重ねが大切なんだよ」
「学年トップが言うと真実味があるな」
うなずく俺に、夏子が笑う。
「それじゃそろそろ始めよっか。秀ちゃんもそろそろプリントに移らないといけないしね」
「そうだな。よし、今日もいっちょ気合入れてくか!」
そう言って、俺はいつものように問題集に向き合った。
今回、思ったよりもストーリーが長くなりました(笑)。解説は次回に回したいと思います。どうぞお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます