3日後におさらいしよう! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の7
「おっし、終わり!」
3回目を解き終えた俺は、勢いよく右腕を振り上げて宣言した。
「すごい! 9分32秒! 秀ちゃん、速い!」
「お、10分切ったのか?」
「うん、それに全問正解だよ! がんばったね、秀ちゃん!」
「おお!」
マジか! めっちゃ進歩してんじゃん俺!
「なんか超頭よくなった気分だぜ。見る問題全部わかるし、すぐ解けるし。ま、さっきやったばっかりなんだからなんだろうけど」
「そんなことないよ。あれだけしっかりやれば、しっかり身についてるよ」
「まあ、お前がそう言うならそうなのかもな」
「それに、その頭がよくなった気分っていうのも間違ってないよ。できる人はみんなそんな感じで問題解いていくからね」
「ウソ!?」
俺はビビって思わず大声を上げる。
「お前らって、みんなこんな感じで問題わかるの!?」
「そうだよ。その本くらいの内容なら、だいたい問題見た瞬間に解き方や答えがわかる感じかな」
「マジかよ! お前らエスパーか!」
そういやこいつ、さっきからろくに解答も見てなかったな。全部頭の中で計算してたのか!?
夏子が苦笑する。
「さすがにエスパーではないかな。でも、それを言うなら秀ちゃんだって、3回目は頭の中で解いた問題も多かったでしょ?」
「まあ、確かに。あ、別に答え丸暗記してたわけじゃないからな?」
「わかってる、わかってる。とにかく、さっき秀ちゃんが感じたその感覚が、普段の私の感覚なんだよ」
「お前、やっぱ天才だな……」
「だから違うってば。私も同じように勉強してるだけ。秀ちゃんも、今やったように勉強すれば自然とそうなるんだよ」
「うーん、そこはどうも信じられねえなあ……」
いくらがんばったって、俺が夏子みたいな天才になれるとは思えないんだけど。
「でも、このやり方はホントに効き目ありそうだぜ。一瞬でも夏子になった気分も味わえるしな」
「一瞬じゃ困るよ。試験の時もその後も、ずっとその気分でいてもらわなきゃ」
「わかったわかった、そうなるようにがんばるよ」
手をひらひらさせながら、俺は適当に返事する。
「あ、そうだ」
「どうしたの、秀ちゃん?」
「ちょっと聞きたいんだけどさ、3回繰り返したら、これはもう終わりなのか?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「うおっ!?」
ズバッと人さし指を突きつけてくる夏子に、俺は思わずのけぞった。
「そう、ここで終わっちゃダメなんだよ!」
「は、はあ」
「だから、今やったところは3日後にもう一度やり直すの。やり方は今と同じで大丈夫だよ」
「ああ、やっぱやり直すんだ」
「そうだよ。3回っていうのはあくまで最低限の回数だし、それは記憶を定着させるのに必要最低限な回数のことだからね」
夏子が問題集に書きこんだ日付を指さす。
「今日が7月3日だから、次回は7月6日だね。その時はここにその日付を書いて、問題を解いたら今までと同じようにマルバツをつけていくの。あ、秀ちゃん、3回目の分のマル、全部つけてね」
「あ、そうだった」
言われて思い出した俺は、問題にマルをせっせとチェックしていく。3回目は全問正解だから、マルをつけてくのもなんだかちょっと楽しいぜ。
「でも、これからは復習も増えてくのか。ちょっと大変になるな」
「心配ご無用。7月6日って試験の1週間前だから、勉強時間も今よりたくさん取れるよ。部活は試験休みになるでしょ?」
「ああ、そっか! 頭いいな、お前!」
「どういたしまして。それに、復習は思ってるほど大変じゃないよ? 今やった問題はもう結構身についてるはずだから、時間もそんなにかからないし」
「そうなのか。でも、もし忘れてたらどうするんだ?」
「鋭いね。それを探すのが真の目的だよ」
夏子が不敵な笑みを浮かべる。なんていうか、こいつも微妙に中二病なんだな。こんな優等生でも中二病だったりするのかと思うと、なんだかちょっとホッとするぜ。
「もし復習の時にわからない問題や間違った問題があったとしたら、それこそが秀ちゃんが本当に苦手な問題ってことだよ。その問題には目立つようにしっかり印をつけて、何度も繰り返し勉強できるようにしておくの」
「へえ」
「ほら、これ見てよ」
そう言って、夏子はカバンからさっきの超難しそうな問題集を取り出す。
「ほら、こんな感じで印がついてるでしょ? これを休日とかにまとめて練習するんだ」
「ほほー」
夏子が示した問題には、4回目のところにバツがついていて、問題番号に星マークがつけられている。なるほど、こうしておけば苦手な問題だってすぐわかるな。
てか、ほとんどの問題がマルばっかりで、星マークを探すのが大変そうだな……。その星マークの問題も、1回バツがついただけであとは全部マルだし……。
「そういうことだから、6日からは復習もがんばろうね」
「おう」
「それじゃ、もう1セットやってみよっか」
「いいぜ。まだ8時前だしな」
「秀ちゃん、今度は自分で時間計ってくれる? 私もちょっと勉強したいから」
「ああ、そうだな。わかった。お前もやるなら、ちゃぶ台出した方がいいか?」
「あ、ありがと。お願いしてもいいかな?」
「おう、ちょっと待ってろ」
うなずくと、俺は部屋の端からちゃぶ台を引っぱり出す。
なるほどな、こいついつもこんな感じで勉強してるのか。でも、これなら俺にもできそうな気がするぜ。
二人向かい合ってちゃぶ台の前に座ると、俺たちはタイマーをオンして問題集に取りかかった。
少し長くなりましたので、今回はストーリーパートのみに留めておきます。必要なことはすでにほとんど書いてしまいましたが、次回もう少し詳しく説明したいと思います。どうぞお楽しみに。
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