2回目が本番のつもりで! ――「超ズボラ勉強法」の極意・その3の5
「さて、それじゃ最初に戻ろっか」
ページの最後の問題を解き終えると、夏子は俺にページを戻すよううながす。
おとなしくそれにしたがい、俺は一番はじめにやったページまで戻る。
「また同じようにやっていけばいいのか?」
「ええとね、2回目はさっきとはやり方が少し違うんだ」
「どう違うんだ?」
質問する俺に、夏子は左ページの例題を指さした。
「2回目からはね、その例題を見ないでやってみてほしいんだ。できればそっちのページは何かで隠してもらえるかな?」
「ああ、わかった」
俺は手元にあったプリントで左の例題を適当に隠す。
「他には?」
「あとはさっきと同じだよ。時間をはかりながら、わからなかったら答えを見て書き写して。問題が終わったら、さっきつけたマルバツの横にまたマルバツをつけてね」
「おう」
「今回は例題なしだから、ここからが本番のつもりでがんばってね」
「なあ、間違ったら前に戻ったりしないよな?」
「よっぽどバツばっかりだったら別だけど、多分大丈夫だよ」
ホッと胸をなでおろすと、俺は問題へと目を向ける。
うんうん、さっきやったばかりだからな。まだやり方覚えてるぞ。
「それじゃ始めるね。そうそう、全体で15分以内に終わるのを目標にがんばってね」
「15分?」
「そう。さっきは全部で15分かかったから、次はもっと速く解けるようにならないとね」
「へえ、スピードも大事なのか」
「もちろん。それじゃいくよ」
夏子がスマホのタイマーを押す。
おお、なんかさっきより全然楽に解けていくな。あ、さっきひっかかったやつも楽勝で解けるぞ。
さっき夏子はすぐに繰り返しするべきって言ってたけど、確かに忘れる前にやった方がいいのかもしれないな。俺、今中学に入って以来最速のスピードで問題解いてる気がするぜ。
たまにわからない問題にぶつかったりしながらも、俺はサクサクと問題を解いていった。
さて、1回目の学習が終わったら、ただちに2回目の繰り返しに入りましょう。
基本的には1回目と同様に進めてくれればいいのですが、2回目は例題を見ないで解いてください。すでに一度触れた問題ですので、2回目は1回目よりもかなり速く進めることができるはずです。1回目よりも早く終わることを目標に解いていきましょう。
解き方がわからない問題、忘れてしまった問題に出くわしたら、バツをつけて例題を見ながら解きましょう。それでもわからない場合、時間切れになった場合は解答を書き写して解き方を頭に入れ、次の問題へと進みます。
やっていただく内容はこれだけです。とにかく1回目が終わったらすぐに2回目の学習を終える。これこそが「超ズボラ勉強法」の極意です。
「解いた直後にやれば解けるに決まっているじゃないか、そんなことをしても意味はないのでは?」と思った皆さんのために、少し補足を加えたいと思います。前々回の二人のやり取りにもあった話ですが、もう少し理論的背景を説明します。
まず、本書にしたがわず、忘れた頃に復習するとどうなるか。これは皆さんも経験があるのではないでしょうか。そうです、忘れた頃に学習しても、すでに以前学習した内容を忘れてしまっているので、結局1からやり直すはめになるのです。完全に二度手間です。
しかも、過去の内容をすっかり忘れてしまっているので、再び覚えるまでに必要な労力が1回目とほとんど変わらず、無駄に長い時間がかかってしまいます。さらに悪いことに、この時点でははじめて学習した時とほぼ同じ状態ですので、放っておけばまたすぐに忘れてしまいます。
これを防ぐにはどうするべきか。そうです、忘れる前に繰り返して記憶の定着をはからなければいけないのです。「覚えているうちに解いても無意味」なのではなく、「覚えているうちに解かなければ無意味」なのです。
これは、理論的には短期記憶と長期記憶の関係から説明することができます。人は学習した内容をまず短期記憶するのですが、この短期記憶というものは文字通り短時間しか記憶できません。長く記憶したいのであれば、短期記憶から長期記憶へと移行する必要があるのです。そして、長期記憶へと移行するためには、繰り返し学習をして記憶の強度を高める必要があるのです。
この際、繰り返しの間隔が開き過ぎると短期記憶が消えてしまい1からやり直しとなってしまいます。それを防ぎ、確実に長期記憶へと移行するためには、間隔を空けずただちに繰り返すことが最も有効なのです。
ですから、1回目が終わったらただちに2回目を行ってください。1回目を15分と短めに区切ったのも、2回目、3回目をただちに繰り返すためです。2回目、3回目は1回目よりも早く終わるはずですので、15分で区切った場合、トータルでは1セット40分前後になるはずです。
このように、記憶が鮮明なうちに問題を繰り返すことによって、短期記憶を長期記憶に変えて脳に刻みこむことができるのです。
次回は3回目の繰り返しについてお話します。どうぞお楽しみに。
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