脳内メリーゴーランド

穂波 類

第1話 美容院にて

先日美容院に行った時の事だ。

どうしてもカラーリングとトリートメントをしたくて担当さんはいなかったけれど当日予約で行って来た。


鏡前に案内されて打ち合わせ。

いつもの色と「コルテックス再生ナンチャラカンチャラ」をオーダーした。


先ずカラーリングから始めるとの事で、2人の方にカラー剤を塗っていただく。

塗り終わった後に生え際に沿って紙テープを貼り始めたのを私は見守る。

「しばらくお待ちください」

と言われて私はしみじみと鏡の中の自分を見た。


(ふざけてる小学生みたいだわ。あ〜、目が悪くて良かった。はっきり見えなくて助かる。)


時間が来てシャンプー台に誘導されて、念入りにシャンプーをして頂いた。

ベッドマッサージはとても気持ち良くてウットリしていたら何時も通り尋ねられた。


「何処か気持ち悪かったり痒い所はありませんか?」


私はもちろん「大丈夫です。ありがとう。」

澄まして言いながら別の事を考えていた。


(いつも思うけどもし、背中が痒いです。とか、お尻が痒い!とか言ったらどうなるんだろう?誰か言ってみてくれないかなぁ。)


シャンプーは終わり、席に戻りトリートメントをする。

このトリートメントが問題、と言うより今回は与えられた席の方が問題だった。


まず薬剤をトリートメントが浸透しやすいように霧吹きで付けてからシルバーのキャップをするのだが、このキャップに温風を吹き込むのである。

当然キャップは膨らむ。

頭から四方八方に20センチ近く膨らむ。

その姿は銀色の熱気球を被った様な

キノコの宣伝キャンペーンキャラクターの様などう見てもハロウィンに「当たり前な格好はしたくないんだよね」とか言って結局ともだちに

「それ何の格好?」とか言われてしまうイタイ人そのものである(ケープをしているからなおさら)

で、今回は特に席が問題。


私の通う美容院は通りに面して全面ガラス張りである。

上下左右隈なくガラス張り、ちょっとした文字やデザインアートさえ施されていない全くのガラス張り。


そして私の席はいちばん端っこ。

つまり通りに面しており、隈なく張られたガラスから隈なく店内にいる私を見学できるのである。

自意識過剰になった私は考える。


(どう見てもアホな格好だわ。ケープが白い所がこれまたアホっぷりを上げてるな。あ〜、知っている人が通りかかりませんように!でも、本当に目が悪くて良かった。外から見られてもよく見えないもん。)


日常からちょっと離れた時に人は落ち着きをなくしくだらない想像が脳内を駆け巡るのだろうか?

少なくとも私はそうだ。

そしてその想像は時としてありえない事まで発展してしまう。

だからこそ人間は物語を紡ぐ事ができるにちがいない。

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