俺の望んでいた嫁はこんなのじゃない!!
霧島 菜月
一章 俺と嫁とのプロローグ
「行けっ!おっと…やばいやばい。危なかったぁ~…………え?」
俺達の生きる現代でそこそこの人気を勝ち誇るネットゲーム【イクリプス・パージ】。
プレイヤーの間では名前を略して【IP】と呼ばれている。
自称引きこもりである俺、田中浩司は今日のアップデートで新しく実装された最高難度クエストに行っていたのだ。
俺のパーティは基本的に火力重視のソードマスター中心として構成されている。他にも防御重視のアーマーナイトや回復重視のアークプリーストなど豊富な
そんな中いつも俺を助けてくれる【IP】のゲームヒロイン「マリア」ちゃん。
綺麗なスタイルにデジタルにたなびく美しい白い髪。服の所々に紫色が入っていてセンスも抜群。そしてなんといっても…可愛い!!
そんな俺の嫁マリアちゃんの
基本的にはゲームに参戦はしないのだが、クエストなどで俺が死んだ時にはいつもコンテニューという神の道を俺に説いてくれる。
そうしてたった今ボス戦で戦っている最中にコマンド選択を焦って誤ってしまい、体制をなんとか整えて一度目の攻撃を避けきった。
が、二度目の攻撃が俺の育ててきた愛情たっぷりのソードマスターに直撃した。
基本的には防御が低いため、強い攻撃が襲ってくると即死率はほぼ確実なレベル。俺のパーティは呆気なく敵の攻撃により壊滅してしまった。
「おい嘘だろ?なんだ今の攻撃!?俺の総合体力が6,850なのにあいつ今350,000の攻撃食らわせてきたぞ!!最高難度とはいえ強くなりすぎじゃねーか!?」
俺はヘッドホンを付けながら悔し涙を流し机を勢いよく叩く。
通常の俺なら新しく実装されたクエストは、攻略ページを一切確認せずに初見ノーコンクリアする。それこそが俺の生きがいと言っても過言ではないだろう。
俺が嘆き始めて数秒後…。
『コンテニューしますか?コンテニューしますか?』
ヘッドホンから聴こえてきたのは俺の嫁であるマリアちゃんの声だ。その声が聴こえた瞬間に俺はゆっくりと顔を上げる。そこには俺の感情とは裏腹で、清々しく可愛らしく微笑んでいるマリアちゃんがいた。
天使だ…。神の救いだ。
どこか煽られているように聴こえるのは気のせいだろう。
俺はそう思っていつものように『はい』というコマンドに手を伸ばそうとした。
だが不意に画面右下に『蘇生魔法の呪文』と書かれたコマンドが現れる。
普段ならこんなことはありえない。『はい』のコマンドを押してガチャ石がなくなり、また課金に手を出すという流れが日課なのだ。
俺は用心しながらそのコマンドに軽く触れた。すると勢いよく画面に『呪文認証』と書かれたページが開かれる。
あまりにも速すぎるページ展開とその量に呆気をとられていた。
「…そういえば」
何かを思い出したようにボソッと呟くと薄い本の山から小さな一枚の紙切れを取り出した。
そこには昔どこかのサイトから拾ってきた呪文がツラツラと記されていた。かなり信じ難い情報ではあったが、この機会を逃せば呪文を使う機会なんて二度と来ない。こんなチャンスルートを逃す訳にはいかないのだ。
時刻は夜中の2時。ネトゲのやりすぎでそろそろ眠くなってきていた。
カタカタとキーボードを打ちまくる間にも眠気は俺を襲う。
「次は…。これがこうで、こうなるだろ…。そんで……つ…次は」
最後の五桁になった所で俺は意識を失った。
深く寝入った後にパソコンが突如として光り出したことに気づくことはなかった。
明朝。
俺がゆっくり目を覚ますと時刻はもう既に学校の授業遅刻寸前の時間帯になってしまっていたのだ。キーボードの上で寝てしまったため、キーボードの跡が顔にみっちりと並んでいる。
「やべ!寝すぎた!!」
俺がイスから立ち上がろうとすると、何故か上手く身体が持ち上がらなかった。それと同時に何か体温のような温かいものを感じる。
おかしいな。ともう一度立ち上がろうとして下を見た。
するとそこには普段ならありえない。むしろありえてはならない光景が広がっていた。
白色の綺麗な髪でスタイルは良い。可愛らしい寝顔を生まれつきとして持っていた。
俄にも信じ難い。むしろ信じたいが信じたくない。なんといったって……。
「…ふぁぁ。おはようございます」
「嘘だろ……」
突如として【俺の嫁】がこちら側に転生してきたのだから。
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