Scene29 チョコレート色の風と砂山のプリン

 フィリピン・ボホール島


 幼い頃に公園の砂場で円い型を使って砂のプリンを作ったことはないだろうか。


 お子様ランチで万国旗の刺してある円いケチャップライスを覚えていないだろうか。


 そんな円いボウルを逆さまにして作ったような山がいくつも連なる場所がある。



 コポコポと。

 それは泡のように

 やはり砂山のプリンのように

 地球の砂遊び


 これが自然が造り出した情景だろうか

 同じような形

 同じような高さ

 そんな山々がいくつも連なる

 それは数え切れないほど

 全景が見渡せないほど


 山の裾野はジャングル

 粘着質を思わせる熱帯雨林

 立ち昇る湿気

 立ちこめる濃緑の匂い


 緑の植物が覆う季節と

 枯れた植物が茶色に染める季節


 乾季はチョコレートヒルズ

 緑の雨季はミントチョコレートヒルズ


 どこまでも青い空

 浮かぶ雲は綿菓子のよう

 地上には型抜きのチョコレート

 甘い味が想像できるような

 そんな情景

 吹き渡る風はどんな香りなのだろうか


 神話がふたつ


 ふたりの巨人が喧嘩して投げ合った石に草が覆ったという説


 愛する女性を亡くした青年の流した涙が固まったという説


 自然は時として奇跡的な風景を造り出す

 そこには設計図も完成予想図もレシピもない


 壮大なチョコの並ぶその光景は



 地球のショコラトリ―




【描写した場所】

 フィリピン・ボホール島・チョコレートヒルズ


 ※参考文献

 365日 世界一周 絶景の旅   いろは出版

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