Scene23 稜線に横たわる黄褐色の龍
中華人民共和国・万里の長城
中国語では
英語名ではGreat Wall of China
まさに中国の壁である。
2千年以上の時をかけ
おびただしい数の石が積み上げられた
それは国を護る壁。
濃緑の山の稜線に沿うようにうねる石壁。
北側と南側2枚の城壁の間は通路となっている。
長い長い廊下が果てなく続く。
数え切れない階段。
各所に配置される砦。
風雨に耐えてきた褐色の長廊。
現存する部分だけでも日本列島の2倍の長さに匹敵するその姿は龍の姿にたとえられることが多い。
悠然とアジア大陸に横たわる龍。
紀元前から悠久の歴史を見つめてきた龍。
中国の歴代王朝が北からの異民族の侵略を防ぐために築き上げたものだ。
それゆえに北側の壁は侵入を阻むべく高さを誇るが
自国側の壁はさほどでもない。
世界四大文明のうちのひとつであり、常に世界の歴史をけん引してきた中国王朝でも北の異民族はかように脅威だったのだ。
脅威は防御と言う形で東西に延びていった。
最東端は遼寧省で尖端は渤海に達している。
最西端は甘粛省の嘉峪関でゴビ砂漠に交わる。
総延長21,196.18㎞。
「宇宙から見える唯一の建造物」と聞いたことがあったが、どうやら肉眼では見えないらしい。宇宙飛行士がそう証言した。けれども国際宇宙ステーション(ISS)から望遠レンズでのカメラ撮影には成功したそうだ。いずれにしても世界最大級の建造物であることに変わりはない。
秦の始皇帝の時代から17世紀の明の時代までの長きに渡り
人の手で積み上げられた石。
人々が築き上げた壁。
人々が守った砦。
人のチカラでこれほどのスケールの建造物が創造できる。
この長城の歴史は侵略と防御の歴史でもあるが
これからは地球の遺産として平和的に遺されることを祈りたい。
静かな眠りをアジアの龍に。
2千年に及んだ攻防よりも遥かに永い穏やかな眠りを。
深い緑の山々の幾重にも重なる稜線で。
青に落ちる海際で。
砂に溶ける琥珀の砂漠で。
最近国境に壁を作ると言っている大統領がいる。
以前は若者達が壁の上に昇ってハンマーを振り下ろしてそれを破壊し、壁を取り払いひとつの国家に戻したふたつの国があった。
すべての壁を取り払おうとは思わない。
けれどもすべてを壁で取り囲もうとも思わない。
【描写した場所】
中華人民共和国・万里の長城
※参考文献
365日 世界一周 絶景の旅 いろは出版
Wikipedia
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