Scene10 セラドン色の雨にけむる街
ベトナム・ハノイ
国慶節の休みを利用して出かけたハノイは雨の街だった。
気候的には雨季から乾季へと移り変わる頃ということだったが、連日の雨である。
ベトナムは旧フランス領である。ハノイの街並みはどことなく洋風の建物が多く見られる。ベトナムのファーストフードともいえるバインミーというサンドイッチもパンはフランスパンだ。
古き良きフランス風とおぼしき建物も雨の中。
ハノイ市内にホアンキエム湖という湖がある。
湖面は濃い緑色をしたお世辞にも澄んだ綺麗な色とは言い難い水の色だ。
湖の周りが緑道となっており、遊歩道をはさんで両側に緑の樹木が立ち並ぶ。
緑の木々も雨に濡れる。
濃緑色の水面にも雨が注がれる。
音は濁音ではない雨音だ。
雨が、細かい雨が街全体に白っぽいレースを纏わせる。
木々や湖面が淡い緑色になる。
街のアスファルトも淡いグレーになる。
パステルカラーの壁のフランス風建物もスモーキートーンの背景になる。
ハノイの街がセラドンと呼ばれる淡い緑色の雨に覆われる。
人々は雨のカーテンの中を気ぜわしそうにバイクで行き交う。
こんな日は
特に予定も立てず
街のカフェで
雨を眺めていたい。
コンデンスミルクを敷き詰めた上に
フランス式で抽出され
極濃のコーヒーを淹れた
ベトナムコーヒーを楽しみながら。
お気に入りの文庫本や写真集があれば言うことなし。
憂鬱な雨が
素敵な効果をもたらす舞台装置へと変化をとげる。
※セラドン 中国の青磁器のような薄い緑色。白地にごく薄い緑を混ぜたような色。青磁色より白っぽい。
【描写した場所】
ベトナム・ハノイ
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