Scene8 暗闇を割く茜色の朝焼け

 パックツアーでたった1泊だけしたスウェーデンのストックホルム


 時差ボケのせいかやたらと朝早く目が覚める。

 前日フィンランドのヘルシンキから船でスウェーデン・ストックホルムへとやってきた。初めて飛行機以外で国境を越え入国した。その港に面しているホテルに宿泊して、早朝のストックホルムの港を見下ろしていた。


 まだ夜が明けておらず暗い街。暗い港。暗い空。

 港の海面は黒い。

 そこへ大型客船が入港してくる。


 窓から見える上半分が空で下半分が港の海面。

 その窓の右斜め上あたりから下へと向かって客船が進んでくる。


 空に彩りが加わる。

 濃紺の空のキャンバスにスポイトで一滴茜色が落とされる。

 水彩の空にそれは交じり、みるみる茜色の専有面積が広がっていく。

 その茜色は黒い港へも影響を与える。

 徐々に濃いオレンジのグラデーションは海面へも広がる。


 客船が進んできた海が明るい色を帯びてくる

 黒い海を進む客船の通り過ぎたあとは茜色のさざ波が残されている。


 窓の最下部に見える港に客船が接岸する頃

 空は薄い朱色から水色へと、夜から朝へと移り変わっていた。


 客船はその日の朝もストックホルムに運んできた。




【描写した場所】

スウェーデン・ストックホルム・バッタハムン港

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る