世界の終わり
この星では一日中テレビやパソコンが情報という名のドラッグを処方している
僕らはそれを片っ端から丸呑みにして精神を安定させたまではいいが
どの組合せが危険なのか忘れてしまった
そもそも、今じゃそれが本当にキイテルのかどうかすらわからない
まるでダイエットのために複数のサプリメントを摂取してるうちに
ブクブク太ってしまったお嬢さんのようだ
医者が金儲けのために出した沢山の薬を何に効くのか知らないままに
毎日飲み続けて死んでいく、そんな老人の気分だ
そのうち嘘か本当かに興味をもてなくなった
悪意でも善意でも結果には関係ないだろうだなんて言ってやがる奴らもいる
昼間に一気呑みした記号に酔って今日も千鳥足で満員の地下鉄に駆け乗ると
今度は吊り広告ができたての呪文をサブリミナルで擦り込んでいくんだ
もうこれ以上は吐き気がするから呑めないと目を逸らしたとしても
どの方向にも満遍なく結界が張られてるから僕らは仕方なく目を閉じる
隣り合わせで立っている女が手にするiPodからは
流行りものの電子音のデータがイヤホンを通してこれみよがしに漏れている
音の中まで使い捨ての記号が支配したこの星ではもう
音楽が雑音で雑音が音楽みたいだ
繰り返される小刻みな振動の周期の中で閉じた瞳に影のない光が揺れる
赤みがかったクロとシロ
下手すりゃそれすら何かの記号に見立ててしまいそう
それなのに愛しい猫もあの娘も瞼の裏に映ることは決してなくて
ますます酔いがまわっていきそうだ
その晩、僕は夢を見た
メモリーが一杯です消去して下さい
大丈夫だよ、新しいハードに交換すればいいと誰かの声
どうやって?
再起動のかからない人生なのに
消去できる想い出なんて
・・・狂・・っテゐる
記号ではなく言葉で話して欲しい
『ねぇ、明日世界が終わると知ったら何をする?』
「そんなの決まっているだろう。世界が終わらないようにする」
ただ、それだけの話だ
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