3.
――いざ、外の世界へ。
部屋のドアを開けると、まだ外ではない! 当たり前だ。廊下があって、キッチン、風呂場、トイレがある。しかし、信じがたいが俺の家でない事が明白である。俺の家は隣の部屋に妹の
「ここはいったい何処なんだー!」
「うるさいわね、私まで馬鹿だと思われたらどうしてくれんの? ここはシャフレヴェル学園都市に決まってるじゃない。この素晴らしい世界を知らないと言うの?」
「そう、シャフレヴェル学園都市、俺なにも知らない」
「……」
もしかして、あきれられた?
ここは、俺が知る日本の親しみ深い風景とは、かけ離れていた。
「朔乃ちゃんおはよう。今日も買って行くかい? 珍しい
道を歩いていた途中、一つの屋台から天月さんを引き止めるように優しそうなおじさんが話しかけてきた。
「おはようございます。あら、ほんと珍しい形ですね。でも、今は急いでるからまた帰りに寄らせてもらうね。そう言えばおじさん。おばさんの具合良くなったんですか?」
「朔乃ちゃんが看病してくれたから良くなったよ。今日は病み上がりだから休ませてるが、明日はあいつも出てこれるだろよ。ありがとうな朔乃ちゃん。そうだ! お礼ちゃっなんだけどリンゴ持って行きな隣の兄ちゃんにもあげていいから」
「いいの? ありがとうおじさん」
「天月さんって優しんだね」
「何言ってるの、騎士として『と・う・ぜ・ん』なんだから、褒められても何もでないわよ」
天月さんは人差し指を立て、チ・チ・チ・チー的に指を振り、髪をかきあげた。その時の顔はドヤ顔だった。
「りんご貰ったのに俺にはくれないの?」
「あげないわよ……私が貰ったんだから」
「ケチ」
「……あげればいいんでしょ……」
やっぱり刃物は食べ物に使うべきだだよな。うん。さっきの短剣は足ベルトにあったのか、スカートでわからなかった。
「どうぞ、変態さん」
「変態!? なんで俺が変態なんだよ」
「さっきから私の事やらしい目でジロジロ見てたでしょー」
「それは……なんか向こうの方騒がしくないか?」
「誤魔化したわね」
「いや、本当だって向こうの階段近くで
「うそ! ……」
騒がしい方に恐る恐る近寄って行く。
騒動の現場に着いて俺は気づく、異様な老人の姿に。
「爺さん盗み食いは大人がやることじゃないよな、きちんとマニー払ってくれないと」
「誰がお前なんぞに
「何言っていってんだ? 爺さん? ろれつが回ってねーじゃん酒でも飲んでんのかよ? おっとそれは生肉だ食ったら腹壊すぞ?」
老人は
「あれ天月さん……?」
俺は振り向き天月さんに聞こうとした時、天月さんは既に俺の隣ではなく老人の方に向かっていた。
「マジかよ! おい爺さんいい加減にしろよ。腹壊しても知らねぞ!」
辺りの人の目線は肉屋に向いていた。
「あのお爺さん気持ち悪い……」
「見ちゃダメよ」
老人の異様な姿を子どもに見せないように場を離れるように促す母親や家と家の間にある階段に座り込み身を寄せる子ども達、恐怖のせいか握ったバナナがぐちゃぐちゃになっている。大人達もまた
「おいおい、俺の腕は商品じゃねーよ……爺さんふざけてんのか? 離してくれよなぁ爺さん痛いからさ」
肉屋の商人が場を離れたくも老人は商人の腕を掴み引き寄せる。明らかに体格差があるはずなのに、筋肉隆々の商人の方が力負けしているように見える。
老人は店に置かれた肉切り包丁を手にして振り
見ているこっちからすれば、まさかの行動だ。
「本当ふざけんじゃねぇよ! このくそ
「そこの老人止めなさい! 私はシャフレヴェル騎士学園所属、現、五番隊王直属騎士天月朔乃だ! 民に多大な迷惑をかけ、マニーも払わず暴食を繰り返すとは見過ごす訳にはいかない」
天月さんは老人から少し距離を置き忠告をする。老人は肉切り包丁を振り翳したまま、天月さんの方に振り替えった。
その老人の顔には今着ているボロボロに汚れた衣服の切れ端で眼帯側りに左目を覆っており、不揃いに伸びた白髪は顔を隠すように張りついているみたいに振り返っても乱れない。見るからに
「なぁ天月さん、なんかこの老人やばくないか?」
「そんな事分かってる。おそらく、この者は
「朔乃ちゃんか、頼むこの爺さんを殺ってくれ」
「まさか天月さん、ここで闘うのか街中なのに?」
「ここで人鎧に暴れられては住民にも迷惑だし、被害を広げる訳にもいかない。だからこそここで騎士の私が解決する。君は私のマルタイだ今は私の後方で離れてていい」
「天月さんだけで何とかなるのか?」
「我、天月朔乃の名の下に一陣の風を纏いし炎の精霊よ今この刻、姿を表し加護をもたらさんレーヴァテイン!」
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