第22話 友情と天敵

        友情と天敵


 「おはよう~。」

 「おっ、おはよう、マキちゃん。今日も黒子か。」

 「フン。ニシさんこそワンパターンのファッションだね。そのバ

ンダナはかなり古いでしょ。色があせて一部にほころびがあるよ。

新しいバンダナを造ってあげようか?・・・と言っても古い布から

だから新しいとは言えないけどね。アハ。」

 「いや、このバンダナでいいよ。これにはいろいろと思い出があ

るからね。この家が造られているころことだけど・・・あっ、その

話はまたの機会にするよ。あまり楽しい話じゃないし、マキちゃん

にとっては多分苦手な話だからね。えへへ。」

 「え~っ。それってお化けとか幽霊に関係する話でしょ。私、シ

ョウさんやユミさんから少し聞いたことがある。なんか、超複雑で

すごく怖い話だって言ってた。聞きたくないけれど、ちょっと興味

がある。ちょっとだけね。うふ。」

 「そっか。ユミちゃんたちから聞いていたか。前の石の幽霊や屋

根裏部屋の件があるから、マキちゃんは少し強くなったのかな。カ

フェが一段落したら話してあげるよ。覚悟しておけよ。ムフフ。」

 「うっ。何か嫌な予感がする。やっぱりやめておきます。ニシさ

ん。」

 「いや、もう遅い。俺はその気になってしまったもんね。アハハ

ハ。」

 「あ~ぁ、こんな時に滝くんが居てくれたら心強いんだけれどな

ぁ・・・。

 あっ。そういえば、滝くんはあの後ですぐに会社を辞めてここに

来たんでしょ?その後どうなったの?」

 「うん、来たよ。オーナーとしっかり話をしていたようだね。こ

の家の従業員として、また、オーナーのスタッフとしての二束のわ

らじを履くことになったようだよ。だから、このカフェにも時々手

伝いにはくるけれど、仕事の中心は建築を含めたクリエイティブ業

務だね。特にこの家の進化をサポートしながらオーナーのアシスト

をするらしい。まっ、比較的自由に動けるようだけどね。

 あっ、そうそう。今日は午前中はオーナーからの指示で改築物件

のプレゼンテーションのために外出しているけれど、午後にはカフ

ェを手伝いに戻ってくるなぁ・・・。

 じゃ、その時にさっきの話をしようかな。」

 「うん。滝くんと一緒だったらいいよ。今日は暇そうだし、みん

なを集めてニシさんの漫談を聞いてあげる。うふふ。」

 「ん?漫談だと!面白いね。どんな漫談になるか楽しみ~。ムフ

フ。」


 「おはよう。マキちゃん。ニシさん。」

 「おはよう。以下ユミさんに同じく。」

 「コラ!ショウちゃん。朝の挨拶に手を抜くな。アハハハ。

 アレ?アキはどうした?ショウちゃんの部屋に泊まったんじゃな

かったのか?寝坊でもしているのか?」

 「いや。なんか友達から連絡があって、さっき、ちょっとだけっ

て言って出て行ったよ。すぐ帰ると言っていたからもう来るんじゃ

ない。」

 「何!あいつは仕事を何だと思っているんだ。もう大学の3年だ

ろ。来年は就職活動をやらないといけないのに。もう少し仕事とい

うものを理解しないとな。あれじゃまともな就職ができないぞ。」

 「ま~ま、いいじゃないの。今だけだと思うわよ。少なくともニ

シさんよりもしっかりしているようだからね。俺、アキちゃんを見

ていると本当にまだ大学生で21歳なのかなって思うわ。」

 「アハ。ユミちゃん。あまり甘やかさないでね。ヘタするとこの

ままカフェにというか、この家に就職するって言い出しそうだよ。

相当にこの家が気に入っているようだしな。

 ところで、最近、ミーちゃんを見かけないけど、どうしてんの?

ちゃんと学校へは行っているんだろう?」

 「うん。もちろん行っていることは確かだね。この前のように登

校拒否はしていないね。あの時は、友達と喧嘩ばかりして、バカバ

カしいから学校には行かないってすねていたもんね。アハハハ。な

んか天敵が居ているようだよ。かなりの強敵らしい。

 ただね。最近、変な遊びをしているようなのよ。数人で集まって

美羽が中心のようだけどね。あの子、普通の人とは少し違って、何

か持っているような気がして少し怖い。それに、同年代の子が居て、

その子も美羽と同じような感性を持っているようで、何かを起こし

そうなのよね。」

 「ふ~ん。変な遊びね。まっ、まだ3年生だろ。可愛いもんじゃ

ないか・・・。ん?確かこの家を造っている時にもひとり変な子が

居たなぁ~・・・。それは、後での話の中に出てくるか。アハ。」

 「何?その変化子って?」

 「いや。何でもない。また、後で話すよ。」

 「へぇ~。ミーちゃんにも天敵が出来たのか。そんなに早くから

できてしまうと後が大変だよ。私は17歳の時に今まで親友と思っ

ていたヤツに裏切られて完全に敵になったけどね。エヘへ。」

 「ん?マキちゃんの天敵って誰?そんな人が居たんだね。」

 「ショウさん、知っているでしょ。去年、このカフェに突然来た

変な外国人。」

 「あ~ぁ。あの子ね。確か、名前はシェリーだったよね。見た目

はアメリカンなんだけれど、話をするとジャパニーズね。私より日

本語を良く知っているし、あの時、和服で来たでしょ。ビックリし

ちゃった。なんかモデルさんのようで美しかったね。マキちゃんと

同じような感性を持っているようだった。」

 「そそ。あの子、超日本が好きで、何でも日本流って言っている

んです。お箸は使えるし、納豆も食べるんですよ。私、納豆は苦手

です。それに、性格は私と真逆なのに、やっていることは同じよう

なことです。特に、服に関しては自作モノがすごく多いですね。フ

ロリダに居た頃私の服を無断で着ていました。身長がほぼ同じだか

ら、時々貸してはいたんだけど・・・。ただ、先のことを考えずに

行動するから、後のフォローが大変でした。人の迷惑なんか考えて

いないんですよ。どこが日本流なのかわかんないです。それでよく

喧嘩をしていました。また、日本に来ているようですから、必ずこ

こに来ますよ。フ~。」

 「アハ。似た者同士って感じね。性格以外は・・・。ところで、

その喧嘩って日本語?それとも英語なのか?」

 「あのね、ニシさん。そんなのわかりません。互いに、興奮して

いるから両方の言葉が混じって何を言っているのかわからないんで

す。シェリーもわからずに叫んでいるみたいだしね。でも、ハッキ

リしているのは、お互いに手は出さないことですね。手を出してし

まうと本当に友人じゃなくなるし、天敵じゃなく、敵そのもので憎

いだけの存在ですからね。」

 「だよな。天敵って、憎いとかという感性的なものじゃなく、ラ

イバルって感じだよな。親友であり、友情もあるけれど、常にどこ

かで競い合っているというのか、比べているところがあるな。俺に

もひとり天敵がいるよ。アハハハ。」

 「へぇ~、ニシさんにもそんな人がいるんだね。どんな人?」

 「うんうん。どんな人?」

 「ユミちゃんまで興味あるのか。まっ、簡単に言えば超が付くく

らいのワガママなヤツだよ。と言っても、人の迷惑を顧みないのじ

ゃなくて、迷惑であることを承知で上手くワガママを通すからたち

が悪い。アハハハ。他の人はそんなに気にしてないけれど、俺、年

が近いから無性に腹が立つときがあるね。でも友達なんだよね、こ

れが・・・。」

 「ハハ。なんかニシさん自身のことを言っているようだね。うふ。

 そうか。さっきのマキちゃんの話じゃないけれど、天敵は悪じゃ

ないのよね。互いに競い合う友人であり、そこには友情もあるのか

しら。俺、モノに関しての天敵というか、ライバルは沢山いるけれ

ど、お互いにいい刺激を感じ合っていると思う。そのモノ同士にも

天敵がいるようだけどね。」

 「えっ。モノに天敵があるの?ユミさん。」

 「うん、あるよ。ただ、人間が作ったモノだからその人間同士が

天敵だと言った方が良いかもね。うふ。

 例えばね。茶道で使う茶器類は高額も物から安価な物まであるし、

様々な訳アリの物も少なくないから、互いにその経歴というのか、

使われてきた歴史のようなものがあったり、造った作者によっても

大きく評価が違ったりするよね。それで人間同士が競い合うようだ

けど、そのモノたちもおそらく競い合っていると思うよ。俺の方が

深い味わいがあるとか言ってね。アハハハ。」

 「あ~、そうですよね。確か、戦国時代に居た千利休という人が

茶の世界を広めて1つの国や領土より茶器の方が高いということも

ありましたよね。人間同士の争いのようだけどモノ同士とも言えま

すよね。そういえば私が造っている服にも古い布と新しい布を使う

時によく比較していたり、優劣をつけてしまうときがあります。そ

れって、その布たちが競い合っているのかなぁ~。アハ。ちょっと

考え過ぎですね。」

 「いや、そうじゃないよ、マキちゃん。俺のその天敵も俺がいる

からその価値があるのであって、互いに意識をしていないと何の進

化もないと思うよ。俺もそいつがいるから今頑張れる。エヘへ。」

 「ニシさん、マキちゃんそして、ショウちゃんやアキちゃんも考

えようによっては良い天敵になるのかもね。そう、お互いに意識し

合っているところがあるものね。でも、いい関係でいようね。」

 「は~い。」

 「うん。」

 「だな。エヘへ」


 『みなさん、ご無沙汰しておりました。“白い家”こと“白龍神”

です。そうそう、滝くんは会社を辞めてこちらに転職したようね。

ここが滝くんにとっての天職の場になってほしいものです。

で、みんなは何を話しているのかと思ったら天敵ですか。ある程度

年月を経るとどこかに天敵というかライバルのような人が現れるも

のです。でも、本当の敵にはしないで下さいね。いい刺激を互いに

与えたり受けたりしてください。

 あっ、そうそう。私にも天敵がいます。いや、いましたね。この

“白い家”が造られる時には居ました・・・。今、どうしているの

でしょうね。この世に居るのか、異世界に居るのかわかりませんが、

元気であることは確かのようです。時々便りをよこしますから・・

・。バカなヤツでしたね。本当に。

まっ、その話は後ほどニシさんがお話ししてくれるでしょうね。ち

ょっと怖いですが、本当にあったお話ですからしっかりお聴きくだ

さい。じゃ、後ほど・・・うふ。』


 「いらっしゃいませ。どうぞお好きな席にお座りください。」

 「あいよ。ありがとう。

 おっ。いたいた。お~い、啓介、久しぶりだなぁ~。やっと会え

たな。長野のロッヂ以来かな。元気そうでなによりだ。いいカフェ

で働いているな。啓介の店じゃないだろうけどね。ハハハ。」

 「あ~ぁ。篤史。お前、生きていたのか。突然、ロッヂからいな

くなってもう7年だぞ。連絡くらいよこせ。バカが。で、何でここ

がわかったんだ。昔の仲間にも行ってないと思うけどな。それに、

何をしに来た。また、何か邪魔をしに来たのか?」

 「あのな。久しぶりに会ったのにその言い方は無いだろ。それに、

ロッヂから居なくなったんじゃね~し、お前には、ちょっと実家に

帰るって言っただろ。聞いていなかったのか?あの後に啓介が突然

ロッヂを辞めたんだろうが。全く逆の話だよ。お前、変わらんなぁ

~。フン。」

「アラ。そうだったかな・・・。そうそう、俺、あの時にロッヂ

のバーでここのオーナーと知り合って、この家に誘われたんだよね。

篤史が居なくなったし、いい機会だからオーナーである藤倉さんに

ついてきたんだっけ。アハハハ。ゴメン。」

 「アホか。それに啓介、今、7年ぶりのようなことを言っていた

だろ。正確には6年と半年ぶりだ。おまえは本当に物忘れが多いな。

昔から神経質のわりには無頓着なところがあるからな。

 まっ、いいや。あの後、すぐにオーナーの藤倉さんに呼び出され

て、この家の材料入手の相談を受けたんだよ。お前が居なくなった

ことだし、いい機会だから手伝おうと決めたんだ。で。この家が完

成するまで2年半ここに関わっていたんだぜ。もっとも、お前と俺

との立場が違うから一度も会えなかったようだがね。」

 「えっ、そうなの?なんか同じような思考をしていたようだな。

アハ。でも、藤倉さんから何も聞いていなかったぞ。じゃ、俺がこ

こで働いていることをお前はずっと知っていたのか?」

 「いや、知らん。お前も藤倉さんに誘われてここに関わっている

とは知らなかった。啓介が藤倉さんと知り合ったのはロッヂのバー

だろう?俺はゲレンデで知り合ったんだ。」

 「そっか。篤史はスキーのインストラクターをやっていたよな。

殆どゲレンデに出ていたからな。じゃ、藤倉さんにスキーを教えて

いたのか?」

 「ちゃう。俺の教え方がおかしいって言っているおっさんがいた

から、ちょっともめてしまったけれど、それが藤倉さんだった。結

局、わかって頂いて仲が良くなったって訳。そして、この家を造る

お手伝いをさせていただいたんだよ。それで、久しぶりに藤倉さん

と会った時に啓介がここで働いていることを知ったんだ。藤倉さん

も俺たちが知り合いだったことを知らなかったようで驚いていたよ。

で、ここに来たってことだ。」

 「そうか、そうだったのか。篤史と俺は似た者同士って言われて

いたし、どっちも細かいところがありながら、動きが大胆で早いか

らな。多分、そこを藤倉さんは観ていたんだろうね。あの人は不思

議な人だな。」

 「うん。この前会った時にお前と俺は良いライバルだなって言っ

ていたよ。同じような性格だから、どこかでぶつかる時はあるだろ

うけれど、向かう方向は同じだねって。良い天敵だなってね。それ

で懐かしく思ってワザワザここに来たんだ。アハハハ。ただ、あの

人、俺たちが知り合いだったことを知っていたような気がする・・

・多分。」

 「フン。ワザワザは余計だろ。あっ、そうだな。あの人って不思

議なところがあるし、俺たちのことを知っていて、別々に誘ったん

じゃ無いのかな・・・多分。で、篤史は今何をして飯食っているん

だ?」

 「今、藤倉さんの紹介で、建物や建材の調査、管理の仕事をさせ

てもらっているよ。なんか、俺にピッタリ仕事だ。全国、いや、世

界にも行けるからな。エヘへ。」

 「へぇ~、いいなぁ~。世界か・・・俺もこの“白い家”の管理

と運営を任されながら時々料理の関係で全国各地へ行っているがね。

海外も、イタリアとフランスには何度か行かせて頂いたな。エヘへ。」

 「お前、変わらんなぁ。そうやってすぐに敵視というのか、対抗

心を燃やすな。でも。啓介らしいな。アハ。」

 「フン・・・。」

 「でも、篤史。俺たちって何か上手くオーナーである藤倉さんに

操られていないか?やっぱり、不思議な人だ。」

 「だな・・・。」

 「おい!いい加減にどこかに座ったらどうだ。うちの従業員が困

っているじゃないか。」

 「あっ。悪い。じゃ、あそこの席に行く。」


 と言いながら、このアツシという人は隅っこの1番席に行っちゃ

った。どうも、あの席にはこの家に縁が深いというのか、深くなり

そうな人が多いのよね・・・あっ、滝くんの口癖が出ちゃった。へ

へへ。


 「いらっしゃいませ。何にいたしましょうか?」

 「おっ。可愛いね。店員さんでしょ?そのファッション良いね。

全体がレース柄なんだ。でも、肝心なところはちゃんと隠している

んだね。残念。アハハハ。」

 「コラ!篤史!そのスケベ~な目はやめろ!バカが。」

 「いいじゃんか。可愛いものは可愛いんだから。ね、彼女。」

 「アハ。ありがとうございます。ところでご注文は・・・。」

 「じゃ、注文は、あなたとこの特性ミルクを下さい。ハハハ。」

 「うっ・・・かしこまりました。特性ミルクですね。それから、

“あなた”というメニューはありませんので。あしからず。エヘ。」

 「おっ。強いね。良いね。アハハハ。」

 「篤史、お前ではその子には勝てないぞ。ハハ。スケベ~が。」

 「ショウちゃん、特性ミルクを出してやって。このスケベなおっ

さんにね。」

 「は~い。」


 「おお、良いね、この庭。

 俺、ここには関わったけれど、完成したところを見ていないから

ね。今日はいい機会だからしっかり観ようと思ったんだ。俺が手配

した材がどんな使われ方でどんな役に立っているかね。」

 「そうか。篤史が手配をしてくれていたんだな。なかなかいい材

ばかりだぞ。オーナーもすごく気に入っていたね。ただ、まだまだ

これからだとも言っていたがね。」

 「うんうん。そうだろうね。この家を造るのにいろんなコトがあ

ったらしいし、俺も少しだけ体験したよ。藤倉さんの思い入れは半

端じゃないと思うよ。」

 「ああ、そうだな。とんでもない家を造ってしまったような気が

しているよ。俺もね。あの藤倉さんは何者だろうね。もう7年近く

なるが、いまだにわからん。篤史はどうだ?」

 「わからん。ただ言えることは、ヒトもモノもそして、コトもす

ごく大切にする人だということだね。それで十分だと思う。」

 「だな・・・。不思議な人だ。」


 『ニシさん。そして、篤史さん。この家が造られた時のことを思

い出しているのね。私は篤史さんがいなければここには存在しませ

んでした。それに、この“白い家”と関わることもなかったでしょ

う。本人は知らないようですが・・・。そして、ニシさんによって

進化させて頂いております。これも、本人はご存じないようですが

・・・。いろいろありましたね。本当に。』


 「ただいま~。」

 「あ~。滝くん、お帰り~。そっか。もうお昼だね。」

 「マキさん、久しぶりです。また、この家に、みなさんにお世話

になります。宜しくお願いします。ただし、前のようにカフェをお

手伝いできませんが、時々来ますので。マキさん、ショウさんそし

て、ユミさんにアキちゃん、よろしくね。」

 「うんうん。」

 「お帰りなさい、滝さん。うふ。」

 「また、宜しくね。モノに関しては俺にどうぞ。」

 「お久ね、滝くん。頑張って仕事をして下さい。」

 「アハ。やっぱり、みなさんはそれぞれ個性がありますね。エヘ

へへ。」


 『滝くん。お帰りなさい。お久しぶりです。これからは末永く宜

しくお願いします。うふふ。』


 「ん?みなさん何のお話をされていたのですか?」

 「えっ。あ~、この“白い家”が造られたころの話を少しね。そ

れと、みんな天敵がいるなぁ~って話をしていた。滝くんには天敵

がいるのかな?」

 「はい。天敵というほどじゃありませんが1人いますね。親友で

もあるけれど、ライバルでもあるから天敵かもね。マキさんもいる

の?」

 「うん。去年、突然来た外国人を知っているでしょ。あのシェリ

ーが私にとっての天敵であり、ライバルよ。また、ここに来そうだ

けどね。エへへ。」

 「あっ、そうですよね。綺麗な人だったですね。もう一度会いた

いなぁ~。」

 「フン・・・。」

 「ところで、この家にも沢山の天敵が居ますよね。使っている古

い材や新しい材そして、庭の材同士も結構競い合っているように感

じますよ。各部屋や庭を見るとその都度少し変化しているように感

じます。俺にもオーナーのように強い思い入れが出てきたというこ

とかな。。」

 「そうだな。」

 「アハ。ニシさん、その一言ですか。でもそうですよね。」

 「あのね。男2人で納得していないでよ。何か滝くんの雰囲気が

変わったね。少し大人になったような気がする。

 確かに、この家の中にも天敵同士は沢山いるだろうね。庭の苔1

つとってみても5種類以上あるから、互いに競い合っているような

気がするね。アレ?私も滝くんと同じようにこの家への思い入れが

一層強くなって来ちゃったみたい。エヘへへ。」


 『そうね。この家にも様々な材が使われているから、そんな仲の

材もいるでしょうね。私はあまり関わらないようにしています。先

ほど少し言いましたが、この家が完成するまでの2年間に沢山の出

来事がありました。でも、マキちゃんが言っていたように、庭の苔

たちも、木も、石も、今はここが気に入っています。お互いに意識

し合っていますが、上手く折り合いをつけて、この庭や建物に寄り

添っていますよ。オーナーである藤倉さんや建築に関わった人たち

の思いもあって、素晴らしい家や庭が完成したと思います。いや、

完成しつつあると思います。益々美しく、そして、癒さされる空間

と時を提供できるようになりたいと思います。』


 「お~い。お昼も一段落したし、約束通り、この“白い家”に関

していろいろ話してあげよう。集まってね。」

 「ニシさん。どうしたんですか?この“白い家”に関してとは・

・・」

 「あっ、滝くんは知らなかったか。この“白い家”が完成するま

でにいろんなコトあったんだよ。ちょっと怖いけれど、聞いてくれ

るかな?」

 「いいですよ。俺もオーナーから少し聞いていますから。」

 「そっか。それにこの家を造るのに深くかかわったヤツが偶然に

今日、ここに居るから一緒に聞けると思うよ。なっ!篤史。」

 「えっ、俺に振るなよ。俺は単にこの家の様々な材を手配しただ

けだからね。」

 「あっ。東山さんですね?オーナーから聞いています。私の先輩

である黒川竜司という者と一緒に材に関わられたんですよね。大変

だったらしいですね。」

 「あ~ぁ。君が滝くんか。藤倉さんからしっかり聞いているよ。

あの人の後を継ぐんだろ?頑張ってね。」

 「アハ・・・。」

 「じゃ、お話をいたしましょう。」

 「また、ニシさんの言い方が前の幽霊の時と同じだね。アハハハ

。」

 「マキちゃん。ちゃんと耳を塞がず聞いてね。ムフフ。」


 『あっ。ちょっと待って!この話は、次のステージでお話しいた

します。ニシさんだとワザと怖く話そうなので別の人物に登場して

いただきましょう。

 それは、今から6年と半年程前のことで、まだ、この家が存在す

らしなかった時にさかのぼります。滝くんもまだ大学に入学してい

ないころで、良く知っている先輩との出会いもまだのころです。

 それではみなさん。次の話をお楽しみに。少し長くなるかとは存

じますが、しっかりとお読み下さいね。じゃ、また。うふふ。』

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