春はあけぼの

♪コーン キンコンカンコーン


「セーフっ!!」

御厨春海が教室のドアをこじ開けて飛び込んでくる。


「アウトだ、ばかもん!」

頭上から出席簿が振り下ろされると、同時に♪スパーーンッ!と気持ちのいい打撃音が教室中に響き渡る。


「おおっ!教師生活25年これまでの人生で最高の音がしたゾ!?」


「痛っーッ!先生、まだチャイムの余韻が残ってましたョ!」


「五月蝿い!だが今日のところは入学初日だし、今の最高に気持ちいい音に免じて許してやろう。おまえ、いい頭してるな!?」


「そんな褒められ方しても嬉しくありませーん!」


「いいから席につけ!おまえ名前は?」


「御厨春海です。」


「御厨か。よし、女子はいい頭のおまえがクラス委員長だ!」


「おおっ!」

クラス一同にどよめきが走る。


「そんなぁ~!あたしめっちゃおバカなのに!」


「もうみんな薄々判ってるからわざわざ言わんでいい。はよ、座らんと1年間スイカ頭と呼ぶゾ!」


「は~い。」

もーう、お母さんたらやっぱり目をつけられちゃったじゃーん!!


まだ、教室内にクスクス笑いが漏れている。


「ぷっスイカ頭だってwwあの子ついてないね~」

笑いを押し殺して篠原千秋がそっと振り返る。


「ホント。今朝わたしも遅刻しそうになっちゃったからヤバかったなァ。」

他人事とは思えず、白河真冬も安堵の溜め息を吐いた。入学式早々クラス委員長に名乗りを上げるだなんて、絶対なりたくはない。ましてやスイカ頭だなんて、絶っ対遠慮したい。




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