SAKURA DOLL(完全版・Ⅱ)

鋼桜

十月桜編〈プロローグ〉

「うっ……く…………ひっく………………うっ…………ううーー……」

 男物のTシャツ一枚で戦隊キャラが描かれた、古びた男児ものの小さな毛布にくるまって涼香は泣いていた。


「……涼香、決めたのね?」


 一葉が、毛布越しに丸まった涼香に触れながら問いかける。


 ゆらり。

 丸まったまま体全体をゆすって、涼香が肯定の意を伝える。


「涼香のその想いが、“実っても破れても”、そのどちらでも涼香は傷つくのよ? それでもいいのね?」


 ゆらりゆらり。

 一葉の確認の問いに、涼香がさらに体をゆする。


「――そう。分かったわ。それならアタシが全力でサポートするから、涼香は精いっぱい思うように行動なさい」

「……ひっく………ありがとう、……一葉」


「ふふふ、……涼香の幸せはアタシの幸せでもあるんだからお礼なんていいのよ」

「うっ……ひっ…………」


 ………………………ぽんぽん。


 涼香を抱きしめてやる事が出来ないのを悔やむように、一葉が自分の小さな手をじっと見つめてから、毛布の上から涼香を軽く叩いた。

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