第26話 ある朝の公園にて

 朝が来るよりも少し早く、その少年は目を覚ました。

 ふわふわと白い息を吐きながら、ぴんと張りつめた空気をかきまぜ、少年は誰もいない小さな公園へと走る。手には二本の牛乳ビン。

 公園に着くと少年はまず、ノラ犬のタロウを呼び、そろって牛乳を飲む。タロウが大げさにしっぽを振るのを静かに眺めてから、少年は鉄棒の前に立った。

 呼吸をととのえ、逆手に棒を握り、いきおいよく足を蹴り上げる。ばらつく足が一瞬、宙を舞い、そのまま重量に従って地に落ちた。ため息。

 しかし少年はあきらめずに、何度も何度も足を蹴り上げる。タロウはしっぽを振りながら、そんな少年をじっと見つめていた。



 日の光が空を明るくしていく。

 弾む息の少年はひたいの汗を乱暴に拭うと、今にも泣きだしそうなくらいに真剣な表情で鉄棒を凝視した。ぐっと身体に力を込め、思い切り、蹴り上げる。すると、まるでずっと前からそうなることが決まっていたかのように、少年のお腹が棒にくっつき、棒を軸にくるんと回転した。

 タロウが興奮したように吠えまくる。



 朝日に照らされた少年はタロウに、鉄棒の上から晴れ晴れとした笑顔を見せていた。

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