第21話 happy halloween

『いやー』

『やめて、お願いだから』

『アツイアツイアツイ』

 ローストしてる間、ずっとこんな調子。あんまりにもうるさくて、イライラする。

『どうしてこんなひどいことを……』

『ひっく……痛いよぅ』

 ちょっと刻んだだけじゃないの。舌打ちをしてから材料をボウルに入れて混ぜ合わせていく。バター、粉糖を切るように混ぜ、薄力粉、一つまみの塩を加え、さらに混ぜる。混ぜる。そして先ほど刻んだ知恵の胡桃を……。

『ひぃっ』

『やーめーてーそんなにこねないでー』

「黙りなさい」

 知恵を持ち、言葉を操る胡桃は調理がとても大変だ。でも、他の胡桃よりも断然おいしい。

 バニラエッセンスの甘い香りに癒されながら、焼き上がるまでは少し休憩。胡桃が何かわめいているけれど、それは無視。

 知恵の胡桃クッキーが焼き上がり、ほどよく冷めた頃……。

「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」

 子供たちがやってくる。


『うわっ、ちょっ』

『食べないで食べないで』

『せめて味わって……』

 最後の最後までわめいているけれど、胡桃の声が聞こえない人間の子供はもとより、魔物の子供も、お菓子に夢中で気にもとめないのだった……。

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