第2話小石

 拾ってきた小石に名前を付ける。

 黒い石にはクロ。白い石にはシロ。

 丸い石にはマル。三角の石にはサン。


 拾ってきた全てに名前を付けてしまったら、ボクはまた小石を拾いに行く。

 キラキラ光る石を見つけて、ヒカルと名付けポケットへ。

 すべすべしている石に、スベと名付けて、ポケットへ。 

 そうしてポケットがいっぱいになったら一度家に戻り、小石を置いて、また拾いに行く。


 部屋はどんどん小石で溢れていった。


 アカ、シマ、デコ、シカク、マダラ、ザラ、トンガリ、ヒラ、ミドリ、ネコメ……。


 どこにでもあるのに、見向きもされず、邪険にすらされない、ただひたすら存在しているだけの小石たち。

 

 部屋中に溢れる小石たちを眺めていたら、ふと、眺めているのはボクではなく、小石たちの方がボクを眺めているのではないかと気が付く。


 気が付いてからよくよく見渡すと、まずはじめにマダラと目が合った。驚いて目を逸らすと、今度はこちらに顔を向けていたクロと視線がからむ。思わず俯けば、はにかむヒカルがつぶらな瞳でボクを見上げていた。


 小石たちは、あちらこちらからボクを見ている。


 どうしようもなく追い詰められてさまようボクの視線が、ガラス窓に映る部屋の風景で止まった。


 窓に映る部屋の中では、ボクのいるべき場所に一個の無個性な小石が落ちていて、それを老若男女、様々な人々がつまらなそうに見つめている。

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