優しさの資格

芹沢 右近

第1話

俺は決して、優しくない。

それどころか、たぶん冷徹な奴だ。


それなのに、今まで職場や家庭で自分を「自分は優しい」と周囲に思わせて来た。

それは優しさじゃなくて、それは自分を周りに無理矢理合わせて、流されてるだけなんだよ。それが一番楽だから。



マスミとはクラブの同級生だった。

最初は正直ちょっとブサイクだと思った。

1年過ごすうちに情が移ってきて、俺から告白した。

付き合うようになった。


SEXはすぐにした。

僕は初めてだった。相手も初めてらしかった。

終わったあと、「ごめん」と言ったら、「なんで謝るの?」と言われた。

自分の性欲を満たしてごめんと言ったつもりだったが、相手には伝わってなかった。


マスミの一人暮らしの部屋に行くと必ずやった。

事が終わると「終わったし帰るわ。」と言って帰った。


卒業間近、マスミの実家にお呼ばれされた。

マスミの家族からはとても歓迎された。

彼女の父親は、緊張し過ぎて僕が訪問する直前何回も風呂に入ったそうだ。

彼女は一人娘だった。

その夜、彼女の父は近所のスナックに俺を連れ出し、涙声混じりに「マスミを頼むで」と言った。


その夜はマスミの実家で泊まることになった。マスミの部屋に一緒に寝ることになった。もちろん布団は別々。酔った夜は、したくなる。

彼女を誘ったが、親がいる一つ屋根の下ではできないと正論を言う。何回もアタックしたが、怒って叩かれた。何故拒絶されるのかわからず憤慨したまま寝た。

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