第2話

大海の穏やかな波は、水平線の向こうに沈む夕陽をキラキラと反射していた。夕陽が徐々に沈むにつれて、オレンジの濃淡で揺れ動いていた色が、濃紺に変わっていく。


「あー、なんや幻想的やなあ。」


っと、景色に見とれている場合ではない。


「俺は何してんねん。ここはどこやねん。いや、海やけど、分かってるけど。」


きりんは1人でぎりぎり乗れるぐらいしかない木製のボートの上で、あぐらをかいている。黒い特攻服を着て、その下にTシャツを着ている。文字がたくさん書いてあるが、何が書いてあるか分からない。360°見渡す限り、海である。ここが海とは分かるけど、どうして来たのかが分からない。何の記憶も残っていなかった。

夕陽はもう頭の上のわずかしか残っていない。辺りはもう暗くなっていっている。


「どういうことやねん。」


そう呟いた時、わずかに残った夕陽の欠片が緑色に光った。きりんに一つの言葉が浮かんだ。


「みきりん!みきりんや!みっきりーーーん!みっきりーーーん!超絶カワイイみっきりーーーん!」


きりんが全力で叫んだ時、緑の光を残して沈んだ夕陽と入れ替わる様に、強烈な光を背にした3体の人影が現れた。3人は横に並んで浮かんでおり、きりんに向かって、まっすぐ滑る様に向かって来て、きりんの目の前で止まった。海面の上に薄く雲が浮いていて、3人はその上に立っていた。あんなに遠くから近づいて来たのに、大きさが変わらない。3人の背中から射す光は、不思議と眩しくはなかった。


真ん中の1人は少しふくよかな顔立ちの男性で、目は半分閉じている。両端は女性の様で真ん中の1人より一歩下がった所に立っていて、同じく目を半分閉じている。真ん中の男性は螺髪をしており、両端の女性は冠をかぶっている。

きりんは一言しか思い浮かばない言葉で声を掛けた。


「みきりん?」


真ん中の1人は半目のまま、きりんを見下ろして優しく微笑みかけながら答えた。


「んなわけないやろ。」


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